ドル円見通し 米CPI予想を超える上昇率で米長期債利回り急上昇・ドル全面高(21/11/11)

ドル円は11月11日未明に114.01円へ急伸した。

ドル円見通し 米CPI予想を超える上昇率で米長期債利回り急上昇・ドル全面高(21/11/11)

米CPI予想を超える上昇率で米長期債利回り急上昇・ドル全面高

〇10月米CPI予想上回る大幅上昇でインフレ懸念再燃、長期債利回り急上昇しドル全面高に
〇ドル円は10日夕に戻していたところに勢いつき買いの連鎖反応で11日未明に114.01へ急伸
〇米CPI前年同月比は6.2%で9月から一段と加速、1990年11月以来凡そ31年ぶりの伸び率に
〇米長期債、10年債は前日比0.11%の大幅上昇、30年債は同0.09%上昇
〇インフレ進行による需要減退懸念でNYダウは2日連続の下落、前日比240.04ドル安
〇114.25超えからは114.50台、さらに勢い付く場合は114.70台への上昇を想定
〇113.50を割り込む場合は113.25前後への下落を想定する

【概況】

ドル円は11月11日未明に114.01円へ急伸した。10月の米消費者物価上率が市場予想を大幅に上回って加速したため、インフレ進行懸念から利上げ催促的に米長期債利回りが急伸したことでドル全面高となりユーロやポンド、豪ドル等が一段安となる中でドル円は急伸した。
10月28日の日銀、ECB理事会から11月2日の豪中銀理事会、4日未明の米連銀FOMC、4日夜の英中銀MPCと主要国中銀の金融政策決定会合が続いたもののいずれも物価上昇を警戒しつつも利上げを急がない姿勢を示したことで欧米豪等の主要国長期債利回りが総じて低下し、11月5日夜の米雇用統計が予想を上回ったものの米連銀等の利上げを急がせるものではないとしてドル円の下落が一段と進み、9日には113円を割り込んでいた。11月9日午後安値112.70円の後、10日昼には112.76円まで再び下げたものの底割れを回避して突っ込み警戒感から夕刻へ戻していたが、米消費者物価発表から上昇が勢い付いて買いの連鎖反応を引き起こした。

【米CPI上昇率、31年ぶりの高水準に】

米労働省が発表した10月の消費者物価指数上昇率は前月比0.9%となり9月の0.4%から伸びが加速、市場予想の0.6%を大幅に上回った。前年同月比は6.2%となり9月の5.4%から一段と加速、市場予想の5.8%を大幅に上回り1990年11月以来凡そ31年ぶりの伸び率となった。変動の激しいエネルギーと食料品を除いたコア指数の上昇率は前月比で0.6%となり9月の0.2%から大幅に上昇、市場予想の0.4%も超えた。前年同月比は4.6%となり9月の4.0%及び市場予想の4.3%を上回ったが、伸び率は1991年8月以来凡そ30年ぶりの高水準となった。
米労働省による週間の新規失業保険申請は前週比4000件減少の26万7000件となり市場予想の26.5万件を若干上回ったものの6週連続で前週から改善となり、2020年3月14日の週以来で最低水準となった。1週遅れとなる失業保険受給者総数は216万人で前週から5万9000人増、市場予想の209.5万人を上回った。

【米連銀への利上げ催促的な長期債利回り急上昇】

米消費者物価指数の大幅上昇により利上げを急がないとしている米連銀等への利上げ前倒し圧力が高まるとして米長期債利回りが急伸した。指標の米10年債利回りは前日比0.11%の大幅上昇で1.55%、30年債利回りは0.09%上昇の1.91%、利上げ時期に敏感な2年債利回りも0.10%の大幅上昇で0.52%となった。
2年債利回りは10月28日に0.56%へ上昇して年初来の最高水準としたところから11月5日には0.39%まで低下して11月9日までは0.40%台前半での下げ渋りだったが10日の急伸により10月28日のピーク時に迫った。10年債利回りも10月21日に1.70%を付けたところから11月9日に1.41%まで下げていたが、10日の急伸でこの間の低下幅の半値以上を一挙に解消した。利上げ催促と物価上昇率を追いかける流れと思われるが、9月後半からの急伸時に近い勢いだった。
一方でインフレ進行による需要減退懸念でNYダウは2日連続の下落となり前日比240.04ドル安、長期債利回り上昇を嫌ってナスダック総合指数は同263.83ポイント安と大幅下落した。独英豪等の長期債利回りも上昇したが米長期債利回り上昇の勢いと株安によるリスク回避感からドル全面高の様相となった。

【3か月から4か月周期のサイクルで反騰入り】

ドル円の11月10日の日足は1円を超える値幅での大陽線となった。10月20日高値114.69円から11月9日安値112.70円まで1.99円の下落となり、9月15日からの上昇幅に対する3分の1押しラインの112.82円を若干割り込んだが、そこからの急反騰でこの間の下げ幅の半値以上を一挙に解消した。26日移動平均を割り込んだところから日足大陽線での切り返しであり、調整安を消化して上昇再開に入った印象を強めた。
ドル円の日足は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで回っているが、年初からは1月6日底、4か月弱の4月23日底、3か月強の8月4日底と底打ちしており、8月4日安値から3か月後の11月9日安値でこのサイクルの底を付けて上昇期に入った可能性がある。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月2日夕安値から5日目となる11月9日午後安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰入りしたと思われる。11月4日夕高値を基準とすれば高値形成期は9日夕から11日夕にかけての間と想定されるが、11月9日午後と10日午後の113円割れでの両安値をダブル底としての反騰のため高値形成期が12日から15日にかけての間へと延びる可能性がある。このため113.50円以上での推移中は一段高余地ありとし、113.50円割れからはいったん下げに入るとみて12日午後から16日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月10日夜の急伸で遅行スパンが好転、先行スパンも突破しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。上昇一服で高値更新へ進めない場合は遅行スパンが悪化してくる可能性もあるが、113.50円以上を維持しているうちは一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とし、113.50円割れからはいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上回る状況を維持できるかどうか試すとみる。
60分足の相対力指数は11月9日午後と10日午後の両安値によるダブル底形成時に指数のボトムから切り上がる強気逆行を見せてから急伸した。80ポイント台への急伸のため反動安も警戒されるが、60ポイント以上での推移中は上昇余地ありとし、相場が一段高したところで指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合はいったん下げに入るとみて40ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.50円を下値支持線、114.25円を上値抵抗線とする。
(2)113.50円を上回るうちは上昇余地ありとし、114.25円超えからは114.50円台、さらに勢い付く場合は114.70円台への上昇を想定する。113.50円以上での推移なら12日も高値試しへ向かう可能性ありとみる。
(3)113.50円を割り込む場合は113.25円前後への下落を想定する。112.30円以下は押し目買いされやすい水準とみるが、113.50円を割り込んでの推移なら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/11(木)
休場、米国(ベテランズデー、政府・為替・債券は休場、株式・商品は通常取引)
休場、カナダ(戦没者追悼日、株式通常取引、商品、債券休場))
中国、「独身の日」ネット通販バーゲンセール
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 -13.80万人、予想 5.00万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 4.6%、予想 4.8%)
16:00 (英) 9月 月次GDP 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 5.5%、予想 1.5%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前年同期比 (4-6月 23.6%、予想 6.8%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.8%、予想 0.2%)

16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 3.7%、予想 3.1%)
16:00 (英) 9月 製造業生産指数 前月比 (8月 0.5%、予想 0.2%)
16:00 (英) 9月 貿易収支・物品 (8月 -149.27億ポンド、予想 -143.00億ポンド)
16:00 (英) 9月 貿易収支・全体 (8月 -37.16億ポンド、予想 -32.560億ポンド)
25:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.75%、予想 5.00%)

11/12(金)
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)閉幕
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -1.6%、予想 -0.2%)
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 5.1%、予想 4.5%)
22:50 (欧) レーンECB理事、講演
23:00 (英) ハスケル英中銀委員、講演
24:00 (米) 9月 雇用動態調査(JOLT)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (10月 71.7、予想 72.5)
26:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁裁、講演

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る