ドル円見通し FOMC無難に通過、戻り高値切り上げへ進めるか試す(21/11/4)

ドル円は11月4日未明の米FOMC声明発表と議長会見を前後していったん113.76円まで下げたところから114.21円へ反騰するもその後は伸びず。

ドル円見通し FOMC無難に通過、戻り高値切り上げへ進めるか試す(21/11/4)

FOMC無難に通過、戻り高値切り上げへ進めるか試す

〇ドル円、4日未明FOMC後113.76から114.21へ反騰するもその後は伸びず
〇3日発表の米経済指標は概ね強めの数字、米連銀のテーパリング開始を支持する内容
〇FOMC11月中のテーパリング開始決定、一方で利上げへはすぐには進まない姿勢を強調
〇NYダウ前日比104.95ドル高、ナスダック総合指数161.98ポイント高で史上最高値更新
〇ドル円としては日米金利差、資源輸入国通貨として円安圧力がかかりやすい状況続く
〇114.21超えからは1日高値114.44、さらに10/20高値114.69を目指す流れとみる
〇4日未明安値113.76割れからは2日夕安値113.45、さらに10/28深夜安値113.24試しへ

【概況】

ドル円は11月4日未明の米FOMC声明発表と議長会見を前後していったん113.76円まで下げたところから114.21円へ反騰するもその後は伸びず、4日午前序盤は4日未明の高安レンジ内に収まって様子見の動きとなっている。11月3日夜は米ADP民間雇用報告とISMのサービス業景況指数が予想を上回ったことでいったんドル高となったが、FOMCが利上げを急がない姿勢を強調したことでドル安へ流れているところだ。
ドル円としては10月20日午前高値114.69円の後は新たな高値更新へ進めずにいるが、10月28日深夜安値113.24円まで下げてから持ち直して11月2日夕安値113.45円へと底上げをしてきているので、このまま11月1日夕高値114.44円を超えてゆけば底上げ後の高値切り上げによる強気パターンに入って10月20日高値超えに挑戦する目も出てきそうな印象だが、11月1日夕高値を超えないうちは10月20日からの右肩下がりの範囲内にとどまる。

【米ADP、ISMサービス業景況指数、予想を上回る】

11月3日に発表された米経済指標は概ね強めの数字となり、米連銀のテーパリング開始を支持する内容だった。
米民間雇用サービス会社ADPが11月3日夜に発表した10月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が57万1000人増となり市場予想の40万人増を超えて9月の52万3000人増(速報値の56万8000人増からは下方修正)を上回った。週末の米労働省雇用統計での非農業部門就業者についての事前予想は45万人増(9月は19.4万人増)であり、ADPを踏まえれば予想を上回ってくる可能性がある。
米商務省による9月製造業受注は前月比0.2%増で市場予想の0.0%を上回ったが8月の1.0%(速報の1.2%からは下方修正)を下回った。
IHSマークイットによる10月の米サービス業PMI確報値は58.7となり速報の58.2から上方修正されて予想の58.2を上回った。
米サプライ管理協会ISMによる10月の米サービス業景況指数は66.7で9月の61.9から上昇して7月の64.1を上回る過去最高となった。市場予想の62.0も上回った。

【米FOMC、予想通りのテーパリング開始、利上げ急がずの姿勢】

米連銀FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を4日未明に発表した。米連銀は米国債やMBS等の資産購入による量的金融緩和策の縮小を11月中に開始する事を決定した。パンデミック対策としてリーマンショックへの対策時を上回る大規模な量的金融緩和を実施してきたが、徐々に縮小して来年6月までには終了する見込みとなった。ただ、議長会見等では量的緩和縮小が終了してもすぐには利上げへ進まない姿勢も強調されたため、市場は既に織り込み済のテーパリング開始を再認識しつつ、利上げが前倒しされる可能性はまだ低いとやや安心の反応を示した。

パウエル米連銀議長は記者会見で「緩和を縮小する時だが雇用最大化の目標をまだ達成しておらず利上げする時期ではない」と述べた。資産購入は現在の月額1200億ドルのペースから毎月150億ドルずつを同じペースで減額してゆくとした。
FOMC声明におけるインフレに関する記述では、前回の「インフレ率は主に一時的な要因を反映して高い状態にある」から「インフレ率は主に一時的と見込まれる要因を反映して高い状態にある。新型コロナウイルス流行と経済の再開に関連した供給と需要の不均衡がいくつかの分野でのかなり大きな価格上昇の一因になっている」との文言へ変更して警戒感を滲ませた。

【株高・米長期債利回り上昇でドル円には押し上げの環境】

FOMCを通過してNYダウは前日比104.95ドル高、ナスダック総合指数は161.98ポイント高と上昇、いずれも取引時間中及び終値ベースの史上最高値を更新した。一方で株高債券安により米長期債利回りは上昇、10年債利回りは前日比0.06%上昇の1.61%。30年債利回りも0.06%上昇の2.02%、2年債利回りも0.03%上昇の0.48%となった。利回り上昇によるドル買い円売り圧力と、株高によるリスク選好感はドル円にとっては押し上げ材料だが、FOMCが利上げを急がないことを強調したことでドル円への強力な押し上げ効果は見られていない。

11月2日には豪中銀が量的緩和による資産購入規模の減額を継続しつつYCCによる長期金利の低位誘導をやめた。11月4日夜は英中銀の金融政策委員会MPCが開催され、利上げの可能性も示唆されている。ECBは10月28日に理事会で現状維持としたが、ラガルド総裁は11月3日の講演で「2022年にECBが利上げを行う可能性は非常に低い」と述べている。欧米豪等の長期債利回りは揃って上昇基調にあるために米長期債利回り上昇=ドル高とは限らないが主要国中銀の政策スタンスに差が出始めている中で資源相場上昇も続くためにドル円としては日米金利差、資源輸入国通貨としての円安圧力はかかりやすい状況が続くのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、10月23日未明安値から4日目となる10月28日深夜安値、さらに3日弱となる11月2日夕安値でサイクルボトムを付けている。サイクルトップは10月20日午前高値から4日半の10月26日深夜高値、3日半の11月1日夕高値で付けている。現状は11月2日夕安値を起点として強気サイクル入りしていると思われ、高値形成期は4日夕から8日夕にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとするが、4日未明の乱高下時の安値113.76円を割り込む場合は弱気サイクル入りを疑い5日夕から9日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月3日夜に遅行スパンが好転、4日未明の上昇で先行スパンを上抜いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は11月2日に30ポイント割れしたところからの切り返しが続いているので50ポイント以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを試す流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.76円を下値支持線、11月4日未明高値114.21円を上値抵抗線とする。
(2)113.76円以上での推移中は上向きとし、114.21円超えからは1日夕高値114.44円、さらに10月20日午前高値114.69円を目指す流れとみる。114.50円以上は反落注意とする。
(3)4日未明の乱高下時の安値113.76円割れからは2日夕安値113.45円、さらに10月28日深夜安値113.24円試しへ向かう流れとみる。113.30円以下は反発注意とするが、113.75円以下での推移が続く場合は5日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/4(木)
休場、シンガポール
OPECプラス閣僚級会合
09:30 (豪) 9月 貿易収支 (8月 150.77億豪ドル、予想 122.00億豪ドル)
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 -7.7%、予想 2.0%)
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前年同月比 (8月 11.7%、予想 11.3%)
17:55 (独) 10月 サービス業PMI改定値 (速報 52.4、予想 52.4)
18:00 (欧) 10月 サービス業PMI改定値 (速報 54.7、予想)54.7)
19:00 (欧) 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 1.1%、予想 2.2%)
19:00 (欧) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 13.4%、予想 15.2%)

21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:00 (英) 英中銀 債券購入 (現行 8950億ポンド うち国債8750億ポンド、社債200億ポンド)
21:30 (米) 9月 貿易収支 (8月 -733億ドル、予想 -729億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 28.1万件、予想 27.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 224.3万人、予想 211.8万人)
21:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (4-6月 2.1%、予想 -3.0%)
21:30 (米) 7-9月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (4-6月 1.3%、予想 7.0%)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁とシュナーベルECB専務理事、講演
25:50 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演

11/5(金)
06:30 (豪) 10月 AiGサービス業指数 (9月 45.7)
08:30 (日) 9月 全世帯消費支出 前年同月比 (8月 -3.0%、予想 -3.5%)
09:30 (豪) 豪中銀、四半期金融政策報告
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -4.0%、予想 1.0%)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 1.7%、予想 1.5%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 0.0%、予想 1.5%)

21:15 (英) ラムスデン英中銀副総裁、ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 10月 非農業部門就業者数 前月比 (9月 19.4万人、予想 45.0万人)
21:30 (米) 10月 失業率 (9月 4.8%、予想 4.7%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前月比 (9月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前年同月比 (9月 4.6%、予想 4.9%)
22:00 (米) テンレイロ英中銀委員、講演
28:00 (米) 9月 消費者信用残高 前月比 (8月 143.8億ドル、予想 166.0億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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