ドル円 水準をやや切り上げたもみあいを継続(週報11月第1週)

先週のドル円は、ドル円の材料よりもユーロドルのドルの動きに引っ張られた動きがほとんどでした。

ドル円 水準をやや切り上げたもみあいを継続(週報11月第1週)

水準をやや切り上げたもみあいを継続

〇先週のドル円、113円台前半の買いと114円台半ばの売り厚く、週間高値は114.31まで
〇週明け選挙結果好感で株価上伸、為替市場は株高のリスクオンによる円安が先行してスタート
〇今週は3日FOMC、4日英中銀MPC、5日米国雇用統計と週半ば以降に大きなイベントが集中
〇FOMCで早い段階での利上げの可能性やタカ派な発言が出ればいったんドル買いの動きに
〇10/20高値114.70レベルが依然として上値を抑えられやすい水準
〇今週は113.60レベルをサポートに、114.60レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、週を通して振り返ると週初は前週安値からの買い戻しにユーロドルの下げが加わって114.31レベルの高値をつけましたが、ECB理事会後のラガルド総裁会見がタカ派的と取られユーロ買い・ドル売りに、さらに週末金曜は月末のロンドン・フィキシングで大口のユーロドル売りが出た動きに引っ張られて改めてドル買いと、ドル円の材料よりもユーロドルのドルの動きに引っ張られた動きがほとんどでした。

また与党が大幅に議席を失うと予想されていた総選挙は思ったほどでは無く自民党は微減に留まり単独で安定多数を確保しました。逆に議席増が予想されていた立憲民主党は大きく議席を減らし、両党からの受け皿として維新が躍進という結果でしたが、今回の選挙は最近にしては珍しく予想が大きくハズれたという印象です。立憲は第2党とは言っても寄せ集め感が強く、有権者の期待も思いのほか小さかったということだったのでしょう。

早朝の株価先物は現在の政策から変化しないという選挙結果を好感して上伸、為替市場も株高のリスクオンによる円安が先行してのスタートを切りました。しかし先週を振り返ると113円台前半の買いと114円台半ばの売りがそれぞれ厚い様子で、週初のドル高もこのまま2017年11月高値の114.73レベルまで買い進められるかというと、そこまでの勢いも無さそうです。

今週は東京が祝日となる3日にFOMCがあり、テーパリングの決定はコンセンサスであるもののパウエル議長が会見でこれまで同様にハト派のスタンスを続けるのか、あるいは高止まりするインフレ率を受けて微修正して来るのかを見極めることとなります。さらに4日には英中銀MPC、5日に米国雇用統計と週半ば以降に大きなイベントが集中していますので、動きが出るとすればそれらを見てからという流れになると考えられます。

ちなみに本日のコラムで見たように米国の政策金利であるFF先物は既に2022年9月時点での利上げを織り込んで取引されていますので、テーパリング決定、来年6月時点で終了は既定路線で2022年中もしくは2023年の早い段階での利上げの可能性を示唆する可能性があるかどうかに注目が集まります。仮にタカ派な発言が出てくるようであれば、そこでいったんドル買いの動きが出てきそうです。

また雇用統計は最近NFP(非農業部門雇用者数)の予想からの下振れが目立ついっぽうで失業率は大幅な改善が続いています。直近のNFPはコロナ変異株の影響が出ていると見られますが、マイナスにならない限りは売りが出たとしても一時的に終わる可能性が高そうですが、コンセンサスの+41.3万人に対して、もしマイナスといった数字を見たら、さすがにドル売りが強まるとは思います。ただ、その可能性は低いでしょう。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

現状の下値は10月安値と10月高値に対するフィボナッチ・リトレースメントの38.2%押し113.21がターゲットとなり、上値は上述した2017年11月高値114.73レベルをターゲットとしています。現在の水準からは下値は既に距離が離れてきましたので、113円台半ばでは買いが出てきそうです。

ただ、2017年高値も今週はFOMC後や統計後につけにいく可能性はありそうですが、一気に115円を超えていくとも見ていません。おそらくは10月20日高値114.70レベルが依然として上値を抑えられやすい水準であると見ています。

今週は113.60レベルをサポートに、114.60レベルをレジスタンスと、これまで同様に下がったら買い、上がったら売りの水準をやや上に切り上げた流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

11月1日(月)
**:** 欧州市場冬時間移行 ☆
10:45 中国10月MarkIt製造業PMI ☆
16:00 トルコ10月製造業PMI
16:00 ドイツ9月小売売上高
18:30 英国10月製造業PMI
22:45 米国10月製造業PMI
23:00 米国10月ISM製造業景況指数

11月2日(火)
06:45 NZ9月住宅建設許可
08:50 日銀会合議事要旨公表
12:30 豪中銀政策金利発表 ☆
17:50 フランス10月製造業PMI
17:55 ドイツ10月製造業PMI
18:00 ユーロ圏10月製造業PMI
**:** FOMC(〜3日)

11月3日(水)
**:** 東京市場休場
06:45 NZ7〜9月期失業率
09:30 豪州9月住宅建設許可
10:45 中国10月MarkItサービス業PMI ☆
16:00 英国10月住宅価格
16:00 トルコ10月CPI
18:30 英国10月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏9月失業率

21:15 米国10月ADP全国雇用者数 ☆
22:45 米国10月サービス業PMI
23:00 米国10月ISM非製造業景況指数
23:00 米国9月製造業新規受注
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果公表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆
**:** 英中銀MPC(〜4日)

11月4日(木)
**:** シンガポール市場休場
09:30 豪州9月貿易収支
16:00 ドイツ9月製造業新規受注
17:50 フランス10月サービス業PMI
17:55 ドイツ10月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏10月サービス業PMI
18:30 英国10月建設業PMI
19:00 ユーロ圏9月PPI

20:30 米国10月チャレンジャー人員削減予定数
21:00 英中銀MPC結果発表、議事要旨公表 ☆
21:30 米国9月貿易収支
21:30 米国7〜9月期単位労働コスト速報値
21:30 米国新規失業保険申請件数
**:** OPECプラス閣僚級

11月5日(金)
09:30 豪中銀四半期金融政策報告公表 ☆
16:00 ドイツ9月鉱工業生産
16:45 フランス9月鉱工業生産
17:30 オーストリア中銀総裁講演
19:00 ユーロ圏9月小売売上高
21:30 米国10月雇用統計 ☆

11月7日(日)
**:** 米国冬時間移行 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

10月25日(月)
週明けのドル円は、週末の静岡参議院補欠選挙で自民党候補が敗れたことから安く始まった日経平均先物が結局はダウ先に引っ張られて上昇する動きとなったこともあってじり高の展開が続きました。しかし値幅は伴わず動意薄の一日となりました。

10月26日(火)
ドル円は金曜に目先の安値をつけたとの見方が広がる中で月曜は動きが鈍かったものの、火曜は世界的に株価が上昇する流れの中で円売りが目立つ展開となりました。NY市場では強い経済指標も手伝って114.31レベルの高値をつけた後、やや押しての引けとなりました。

10月27日(水)
東京市場のドル円は株価の上値の重さと歩調を揃えて上値が重たかったものの114円台前半の狭い値幅で鈍い動きが続きました。しかし欧州市場序盤にドル円、クロス円で急速に水準を切り下げ円買いの動きが目立ちましたが、時間的に日経先物の下げよりも円高の方が早かったので大口の円買いが出た様子でした。商品価格が引っ張ったという見方も多かったようですが、オーダーが薄い中でストップを引っ掛けたと見られ、NY市場前場に113.39レベルまで水準を切り下げましたが、引けにかけては113円台後半へと戻しました。

10月28日(木)
ドル円は前日の114円台での上値の重さもあって東京市場では引き続き上値が抑えられ、売りが先行してのスタートとなりました。ラガルド総裁会見までは113.60レベルで動意薄の流れが続きましたが、ユーロが大きく上昇する動きとともにドル円は113.26レベルの安値を示現。引けにかけてはユーロ円の買いがドル円でも買い戻しにつながっていました。

10月29日(金)
ドル円は木曜に週間安値をつけ金曜は総選挙の週末を控えてポジション調整が先行していました。全体的なドル買い戻しの動きも出ている中で、ロンドン・フィキシングで大口のユーロ売り・ドル買いが出たことでドル円も一段高となり114.10レベルまで上昇後にやや押して引けました。

ディスクレーマー

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