トルコリラ円見通し 欧米10か国大使追放指示騒動から一段安するもいったん戻す(21/10/26)

トルコリラ円の10月25日は11.91円から11.50円の取引レンジ、26日早朝の終値は11.84円で先週末終値11.79円からは0.05円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 欧米10か国大使追放指示騒動から一段安するもいったん戻す(21/10/26)

トルコリラ円見通し 欧米10か国大使追放指示騒動から一段安するもいったん戻す

〇トルコリラ円、10か国大使追放指示騒動から10/25朝には11.50まで一段安
〇現実的な大使追放は無かろうとの思惑から、売り一巡後は買い戻され急落分解消
〇ドル/トルコリラ、10/25早朝9.85まで続落後、騒動一巡で買い戻され日足は長い下ヒゲを付けた陽線
〇エルドアン大統領、「米欧等10か国の駐トルコ大使を国外追放処分とはしない」と述べ騒動収まる
〇10か国の共同声明自体は撤回されず、今後緊張関再燃の可能性残る、トルコ市場への不安要素となる
〇11.70以上での推移中は上昇余地ありとし、11.95超えからは12.00試しとする
〇11.70割れからは下げ再開を疑い、10/25朝安値11.50試しへ向かうとみる

【概況】

トルコリラ円の10月25日は11.91円から11.50円の取引レンジ、26日早朝の終値は11.84円で先週末終値11.79円からは0.05円の円安リラ高となった。
10月21日のトルコ中銀による大幅利下げの衝撃から10月21日は直前の12.41円から11.92円まで急落となり昨年11月6日に付けた史上最安値12.03円を割り込み、22日も利下げの衝撃を引きずって11.76円まで安値をさらに切り下げていた。
10月23日にエルドアン大統領が欧米10か国によるトルコ人実業家で人権派の不当拘留を批判する声明を出したことに対抗して10か国の大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定するように外相に指示、国外追放の可能性も取りざたされたために週明け25日朝には11.50円まで一段安となった。
しかし、トルコはNATO加盟国として欧米とは同盟関係にあり、現実的な大使追放は無かろうということで早朝の狼狽売りが一巡した後は買い戻されて急落分を解消した。

【対ドルも史上最安値更新】

ドル/トルコリラの10月25日は9.85リラから9.51リラの取引レンジ、26日早朝の終値は9.58リラで先週末終値の9.57リラからは0.01リラのドル高リラ安だった。
10月21日のトルコ中銀による大幅利下げから9.54リラへと史上最安値を更新、22日も9.65リラまで安値を切り下げていたが、週明けは欧米10か国大使追放指示騒動から早朝に9.85リラまで大幅続落した。騒動一巡で買い戻されたために10月25日の日足は長い下ヒゲを付けた陽線となり、中銀利下げからの最安値更新の流れも一服しやすい姿となっている。しかし、利下げショックは今後の追加利下げ懸念、10か国大使追放指示騒動は地政学的リスクの増大となり、先行きのリラ安不安は増すばかりという印象だ。

【欧米10か国大使追放指示騒動は収まる】

エルドアン大統領は10月23日に、トルコで拘束中の人権活動派オスマン・カバラ氏の釈放を求めた欧米10各国の大使追放を外務省に指示した。しかし、10月25日の閣議後に演説を行い、「米欧等10か国の駐トルコ大使を国外追放処分とはしない」と述べて、ひとまず騒動は収まった。
欧米の10か国大使は10月18日の共同声明で2016年のクーデター未遂事件などに関与した疑いで拘束されているトルコ人実業家の即時釈放を求めた。これに対してエルドアン大統領が10か国大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物=国外退去対象)」に指定するよう外相に指示したことが明らかとなった。
トルコはNATO加盟国であり同盟国のため、過度の外交的な緊張化を懸念して声明を出した10か国大使は「接受国の問題への不介入を謳う国際条約の順守を続ける」と相次いでツイッターに投稿して内政干渉へ深入りしない姿勢を示し、それを受けてエルドアン大統領も国外追放への強硬姿勢をひっこめたようだ。だが、10月18日に出された10か国の共同声明自体は撤回されていないため、今後も緊張関係が再燃する火だねを残したといえる。

エルドアン大統領によるトルコ中銀副総裁ら3名の解任とトルコ中銀による大幅利下げの強行によりリラの暴落的な下落が発生して金融市場にも動揺が走ったが、そうした内政問題を外交的緊張で目をそらせようということだったかもしれないが、かえってリラ売りを加速させたことで大統領側も過剰反応をひっこめたという状況だろう。海外投資家にとってはトルコ市場への不安要素がまた増えたことになる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月19日昼へ一段安してからの反騰により20日午前時点では19日昼安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、12.20円割れからは弱気サイクル入りとしていたが、21日夜の中銀利下げからの急落で12.20円を割り込み19日昼安値も大幅に割り込んだために22日午前時点では21日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は22日午前から26日昼にかけての間と想定した。
10月25日朝へ一段安したところから反騰しているため、25日朝安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は26日午前から28日午前にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、11.70円以上での推移中は上昇余地ありとし、11.70円割れからは弱気サイクル入りと仮定して28日朝から11月1日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月25日朝安値からの反騰で遅行スパンが好転し、先行スパンへ潜り込んでいている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は25日朝の一段安で10ポイント台へ低下したところから50ポイント超えへ戻している。45ポイント以上を維持するうちは上昇余地ありとするが、反落注意期にあるため45ポイント割れからは下げ再開として20ポイント台を目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11.70円を下値支持線、11.95円を上値抵抗線とする。
(2)11.70円以上での推移中は上昇余地ありとし、11.95円超えからは12.00円試しとするが、11.95円以上は反落警戒圏と注意する。
(3)11.70円割れからは下げ再開を疑い10月25日朝安値11.50円試しへ向かうとみる。11.50円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、11.70円以下での推移なら27日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

10月27日
 16:00  9月 貿易収支 (8月 -42.6億ドル)
 16:00 10月 経済信頼感指数 (9月 102.4)
10月28日
 16:00  9月 観光客数 前年同月比 (8月 119.4%)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 30億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 10/22時点 (10/15時点 859.6億ドル)
11月01日
 16:00 10月 イスタンブール製造業PMI (9月 52.5)
11月03日
 16:00 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 1.25%)
 16:00 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 19.58%)
 16:00 10月 消費者物価コア指数 前月比 (9月 1.5%)
 16:00 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 17.0%)
 16:00 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 1.55%)
 16:00 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 43.96%)

11月18日 トルコ中銀金融政策決定会合


注:ポイント要約は編集部

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