トルコ 中銀利下げショック続き6/2安値を割り込む、対ドルで史上最安値連日更新(21/9/27)

トルコリラ円の9月24日は12.60円から12.42円の取引レンジ、25日早朝の終値は12.45円で前日終値の12.57円から0.12円の円高リラ安となった。

トルコ 中銀利下げショック続き6/2安値を割り込む、対ドルで史上最安値連日更新(21/9/27)

トルコ中銀利下げショック続き6月2日安値を割り込む、対ドルで史上最安値連日更新

〇トルコリラ円、中銀利下げショックでリラ売り続き6/2安値12.44割り込む
〇ドル/トルコリラは23日から2日連続で史上最安値更新、25日早朝終値は8.87
〇8月海外観光客数は前年同月比119.44%増、リラ売り情勢の中では買い材料とならず
〇10/4発表予定の消費者物価コア指数低下なら21日金融政策決定会合での追加利下げの可能性も
〇昨年11月底の12.03割り込めば目安となる安値無く、心理的な節目10円を目指す懸念も
〇12.60以下での推移中は下向き、12.30、12.20、12.10、12.00と順次試して行く流れとみる

【概況】

トルコリラ円の9月24日は12.60円から12.42円の取引レンジ、25日早朝の終値は12.45円で前日終値の12.57円から0.12円の円高リラ安となった。トルコ中銀による予想外の利下げを悲観したリラ売りの流れが続いており、6月2日の安値12.44円を割り込み、終値ベースでも6月21日終値12.57円を割り込んだ。昨年11月6日に付けた史上最安値12.03円及び終値ベースの史上最安値12.11円まで下値支持線は切り下がったが、すでにドル/トルコリラでは23日に史上最安値を更新して24日も2日連続で更新している。
9月24日発表のトルコの9月製造業景況感指数は113.4となり8月の113.9から若干低下したが市場予想程には悪化しなかった。9月の設備稼働率は78.1%で8月の77.1%から上昇した。

トルコ文化観光省の発表した8月の海外観光客数は398万2168人で前年同月比は119.44%増となったが、パンデミック前の2019年8月の630万7508人には届かず。観光客は徐々に戻ってきており、6月の204.7万人(2020年6月は21.4万人、19年6月は531.8万人)、7月の436万人(2020年7月が93.2万人、19年7月は661.7万人)と回復基調にあることは本来ならリラ買い材料になるところだが、中銀の無謀な利下げによるリラ売り情勢の中では材料とならず。

【対ドルでは連日の史上最安値】

ドル/トルコリラの9月24日は8.89リラから8.73リラの取引レンジ、25日早朝終値は8.87リラで前日終値の8.76リラから0.11リラのドル高リラ安となった。23日に8.7998リラを付けて6月25日に付けた従前の史上最安値8.7992リラを割り込んで最安値を更新していたが、24日もリラ売り止まずに2日連続の史上最安値となった。ベンダーによっては23日時点では最安値更新に至らずにいたが、24日の続落で総じて最安値更新となった。トルコ中銀による9月23日夜の予想外の利下げからリラ売りが加速、24日夜にかけてはドルストレートでのドル高のぶり返しも重なった。

【米FOMC後のドル高基調継続感】

9月23日未明の米FOMCは概ね予想通りの内容で、テーパリング開始決定は11月会合に持ち越されたものの11月会合での決定・着手の可能性が高まり、メンバーによる利上げ想定時期も6月会合時点の2023年から2022年に前倒しされて2023年には三回の利上げ予想となるなど、利上げ時期接近を意識させる内容となった。
ユーロドルは発表後に1.170ドルを割り込んで9月3日以降の安値を更新したが、23日夜には持ち直して23日未明高値に迫り、24日夜には再び売られて戻り幅の3分の2を削る動きとなった。ポンドドルも一度は23日未明高値を超えるところまで反騰したが24日に失速して戻り幅の半値以上を削っている。総じて24日はドル高のぶり返しがみられるが、主要中銀が金融緩和拡大から縮小へ動き、利上げ準備に入ってきていることで為替市場での投機通貨への買い意欲が後退している印象がある。中国恒大グループによるデフォルト懸念問題も23日はやや楽観されていたが24日にはリスク回避感が蒸し返されている。こうした動きが新興国通貨への売り圧力を強める状況となっている。

【トルコ中銀の利下げショック収まらず】

【トルコ中銀の利下げショック収まらず】

トルコ中銀は9月23日の金融政策決定会合で主要政策金利を1.00%引き下げて18.00%とした。利下げは2020年5月以来となる。物価上昇を踏まえて市場予想は政策金利の据え置きだったが、「物価上昇率を下回る政策金利にはしない」と繰り返し強調してきたトルコ中銀のカブジュオール総裁が9月8日に「政策金利の判断目安としては消費者物価上昇率の全体ではなくコア指数を基準とする」と発言、16日にはエルドアン大統領が早期の利上げを要求する主旨の発言を行っていたことから、あるいは利下げが強行される可能性があるとしてトルコリラは9月8日に急落、9月16日から続落に入っていたが、懸念された利下げの強行で悲観売りとなり対ドルでの史上最安値更新に至っている。

9月3日に発表された8月の消費者物価上昇率は全体で前年同月比19.25%、コア指数では16.8%であり、コア指数を基準とすれば17%台への追加利下げも可能であり、10月4日に発表予定のトルコの9月物価上昇率で消費者物価コア指数が若干でも低下するようだと10月21日の次回金融政策決定会合での追加利下げの可能性も考えられる。
不況期でデフレ状態にある場合の景気刺激策としての利下げは効果的だが、主要国と比較してもやや異常な水準でインフレが進行している最中にあって利下げを強行すれば、国際原材料相場の高騰による輸入インフレに加えて自国通貨安による通貨インフレも重なり、かえってインフレを悪化させかねないと懸念される。

【昨年11月6日の史上最安値を試す流れ】

9月24日の続落により6月2日安値を割り込んだ。2月16日と3月19日のダブル天井からの下落一服で9月2日まではジリ高基調を続けてきていたところから転落、底割れとなったため、トルコリラ円は新たな下落ステージに入りつつある。
トルコリラ円の週足チャートは、昨年11月6日安値と今年2月16日高値を起点として三角持ち合いの様相となり、昨年11月6日安値と今年6月2日及び6月21日安値を結んだラインを下値支持線としていた。この下値支持線に対して7月8日安値、8月9日安値、8月20日の一時的急落で付けた安値は支持線到達で下げ止まってその後に高値を切り上げてきたのだが、9月16日から9月17日への下落で支持線を割り込み、9月24日には6月2日安値も割り込んでいる。

三角持ち合い支持線からの転落だが、同様の三角持ち合いからの転落は、2019年5月9日安値と同年7月31日高値を起点とした三角持ち合いからの下放れにも類似しており、その時は2020年5月への大幅続落で当時の史上最安値だった2018年8月13日安値15.25円を割り込みさらに同年11月6日の最安値へと続落していった。トルコ中銀及びエルドアン政権による金融政策への不信任が2018年8月及び2020年11月への通貨危機的暴落を招いており、今回も同様の不信任による下落として歴史的な暴落となる可能性もあると警戒される。昨年11月底の12.03円を割り込めば、目安となる安値はもはや無く、心理的な節目となる10円を目指すことも懸念される。

【当面のポイント、最安値試し】

【当面のポイント、最安値試し】

(1)当面、2020年11月6日安値12.03円を下値支持線、12.75円を上値抵抗線とする。
(2)12.65円から12.75円手前にかけては戻り売りにつかまりやすい水準とみる。
(3)12.60円以下での推移中は下向きとして12.30円、12.20円、12.10円、12.00円と順次試して行く流れとみる。安値を更新した後に、直近の安値から0.20円程度の戻りを入れながらも一段安を繰り返す展開も警戒される。

【当面の主な予定】

9月29日
 16:00 9月 経済信頼感指数 (8月100.8)
9月30日
 16:00 8月 貿易収支 (7月 -42.8億ドル)
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) 9/24時点 (9/17時点 814.2億ドル)
10月01日
 16:00 9月 イスタンブール製造業PMI (8月 54.1)
10月04日
 16:00 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 1.12%)
 16:00 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 19.25%)
 16:00 9月 消費者物価コア指数 前月比 (8月 0.4%)
 16:00 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 16.8%)
 16:00 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 2.77%)
 16:00 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 45.52%)

10月21日
 20:00 トルコ中銀の次回金融政策決定会合

※ポイント要約は編集部

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