トルコリラ円見通し 急落一服からの戻り鈍く、10日の日足は上ヒゲの目立つ陰線
〇トルコリラ円、9/10夕刻13.08まで値を上げたが9/11早朝12.94まで失速、底割れへの余裕乏しく越週
〇9/10の日足は長い上ヒゲを付けた陰線、上値の重い状況
〇ドルトルコリラ、9/10夜8.36をつけたが、再びリラ売り優勢となり9/11早朝8.47リラまで失速
〇9/10夜の米生産者物価上昇率発表からドル高再開により、対ドルでトルコリラ下落
〇トルコの7月失業率、悪化したものの改善傾向の範囲にある
〇中銀の金融政策決定会合を9/23に控え、利下げの可能性も含め思惑が錯綜する時期
〇13.02から13.08手前にかけては、戻り売りにつかまりやすいとみる
〇12.89割れからは、12.80、12.75前後を試す流れとみる
【概況】
トルコリラ円の9月10日は13.08円から12.94円の取引レンジ、11日早朝終値は12.95円で前日終値の12.99円からは0.04円の円高リラ安となった。
9月3日夕刻のトルコ物価上昇率と3日夜の米雇用統計を挟んで13.29円から13.14円までのレンジで揉み合いとなり、9月8日午後まではこの高安レンジ内での推移にとどまっていたが、トルコ中銀総裁発言をきっかけとして利下げの可能性を警戒したリラ売りが発生、米雇用統計通過後のドル高再開感も重なって8日夜に12.96円まで大幅下落、9日午後にはドル円が110円割れから急落したこと等から夕刻には12.89円まで一段安となった。
9月9日夜からはドル高一服となりユーロ等が戻す中で対ドルでトルコリラの買い戻しとなり、10日未明からはドル円も戻したことでトルコリラ円も10日夕刻には13.08円まで反発したが、10日夜の米生産者物価上昇率発表からドル高が再開に入り対ドルでトルコリラが下落、ドル円は110円手前まで戻したものの勢いが鈍かったためにトルコリラ円は11日早朝の取引終了間際に12.94円まで失速、9日夕安値割れは回避したが底割れへの余裕が乏しいまま週を終えた。
9月10日の日足は長い上ヒゲを付けた陰線となり、9月8日の日足大陰線で急落後も安値圏にとどまって上値の重い状況を示唆する姿となっている。
【ドル全面高一服でドル/トルコリラでもリラ売り一服】
ドル/トルコリラの9月10日は8.47リラから8.36リラの取引レンジ。11日早朝の終値は8.45リラで前日終値の8.43リラからは0.02リラのドル高リラ安となった。
9月3日夜の米雇用統計通過後にドル高が再燃する中でトルコ中銀総裁発言によるリラ売りも重なってドル/トルコリラは3日夜高値8.24リラから9月8日夕安値8.51リラへ急落、9月9日にかけて米長期債利回りが低下してドル高が弛む中でいったんは揺れ返しのリラ買い戻しで10日夜には8.36リラまで持ち直したが、米生産者物価上昇率発表をきっかけとしたドル高再燃で再びリラ売り優勢となって11日早朝の取引終了間際に8.47リラまで失速した。
【トルコの7月失業率は悪化するも改善傾向の範囲】
9月10日夕刻に発表されたトルコの7月失業率は全体(15歳以上)で12.0%となり6月の10.6%から悪化した。市場は6月から若干の改善を期待していたものの予想外に悪化となった。しかし4月の13.5%、5月の12.7%と比較すれば改善した状況にあるために市場の反応は限定的だった。昨年7月にコロナショックによる世界的不況の中で14.4%まで悪化したが、その後は徐々に改善傾向にある。
非農業部門の失業率は13.9%で6月の12.3%から悪化したが5月の14.6%は下回った。
トルコでは若年層の高失業率が問題だが、15歳から24歳までの若年層の失業率は23.1%で6月と変わらずだった。昨年はパンデミックの影響で7月に25.6%まで悪化したが2019年8月に通貨危機による不況時に付けた26.6%をピークとして頭打ちからやや改善傾向にある。
【トルコ中銀の金融政策決定会合を翌週に控えて思惑が錯綜する時期】
トルコはコロナショックからの景気回復を続けてきた。GDPも好調であり、国際原材料相場の高騰と歴史的なリラ安状態の中でインフレが進行していることや主力産業である観光収入の減少がネックであるが、昨年春夏のパンデミック初期には解雇制限を行って失業率の大幅悪化を回避している。エルドアン大統領による利下げ要求等により金融政策への不透明感が当面は重石となるが、ワクチン普及と共にパニック型の感染拡大と医療逼迫等の混乱を回避しつつ、金融政策を誤らない限りは高成長も期待される状況にある。
トルコ中銀のカブジュオール総裁が9月8日の講演で「インフレ率は第4四半期に鈍化基調に入ると考えている。食品を除いたインフレ率は年内、総合インフレ率を下回ると予想している」と述べたことでトルコ中銀による利下げの可能性が高まったとしてリラ売りへと風向きが変わった。
9月3日に発表されたトルコの8月消費者物価上昇率は全体の前年同月比が19.25%となり7月の18.95%を超えて政策金利の週間レポレート19.00%も上回った。しかし消費者物価コア指数の前年同月比は16.8%で7月の17.2%から若干低下しており政策金利を下回っている。中銀総裁がコア指数を判断基準とするということを明確にしたことは、政策金利を17%台へと引き下げる余地もあるという計算になる。エルドアン大統領は利下げがインフレを抑えるとの主張を繰り返しており、6月2日の急落も大統領発言がきっかけだった。
9月23日のトルコ中銀金融政策決定会合まではまだ日数があるものの、それまでのトルコ経済指標が良好さを示せば利下げする可能性も無いとは言えない状況になってきている。
【対ドル及び対円で上値抵抗帯に到達しての下落、当面のポイント】
ドルトルコリラは今年6月以降の主要高値が6月11日の8.25リラ、8月3日の8.27リラ、8月20日の8.25リラ、9月3日の8.24リラであり、8.25リラ前後の上値抵抗帯に到達したところから下落再開に入っている印象だ。
トルコリラ円は6月2日安値12.44円と6月21日安値12.48円をダブル底とし、終値ベースでは6月21日を起点として緩やかな上昇期に入り鍋底型の上昇を9月2日まで継続してきた。しかし9月2日高値13.32円で6月11日高値13.21円等を超えたものの6月2日へ一段安する前の戻り高値だった4月29日高値13.38円には届かずに失速した。
トルコリラ円の下落規模はまだ6月11日から6月21日への下落時や8月3日から8月9日への下落時並みであり、6月2日以降の底上げパターンはまだ維持されているが、12.80円を割り込むと6月21日と7月8日及び8月9日の安値をほぼ1直線で結ぶ下値支持線を割り込むため、6月のダブル底からの上昇一巡による下落期入りが疑われる。その際は8月9日安値12.67円から7月8日安値12.55円、6月21日安値12.48円、6月2日安値12.44円を順次試してゆく可能性も警戒される。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月9日夕安値12.89円を下値支持線、10日夕高値13.08円を上値抵抗線とする。
(2)概ね3日から5日周期のサイクルで見れば9月9日夕安値で目先の底を付けて戻したものの10日夕高値ですでに戻り一巡となり新たな下落期に入っている可能性が警戒される。このため13.02円から13.08円手前にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)9日夕安値割れからは12.80円、12.75円前後を試す流れとみる。また13円以下での推移が続くうちは下向きとみる。
【当面の主な予定】
9月13日
16:00 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 2.3%)
16:00 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 23.9%、予想 15.1%)
16:00 7月 小売売上高 前月比 (6月 14.4%)
16:00 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 17.4%)
16:00 7月 経常収支 (6月 -11.27億ドル、予想 -5.70億ドル)
9月14日
19:30 8月 自動車生産 前年同月比 (7月 -44.6%)
9月15日
17:00 8月 財政収支 (7月 -458億リラ)
9月16日 週次外貨準備高・グロス 9/10時点 (9/3時点 780.5億ドル)
9月20日
23:30 8月 中央政府債務 (7月 203.2億リラ)
9月22日
16:00 9月 消費者信頼感指数 (8月 78.2)
9月23日
20:00 トルコ中銀 政策金利・週間レポレート (現行 19.00%)
20:30 週次外貨準備高・グロス 9/17時点
※ポイント要約は編集部
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