トルコリラ円見通し　9月3日の下落分を概ね解消する反発、対ドルでのリラ高基調も維持(21/9/7）

〇昨日のトルコリラ円、夕刻に13.20を超えたところからテクニカルな買い連鎖に入り13.28まで上昇
〇ドルトルコリラは夕刻からリラ買い巻き返しで夜に8.25へ上昇、3日に付けた最高値に迫る
〇トルコ政府向こう3年間の経済見通しは楽観的、ワクチン普及と観光収入回復等が貢献
〇8月物価上昇率の上昇は大統領の利下げ希望は叶わないとして逆にリラ買い要因に転じる側面も
〇米連銀がテーパリングを急がない見方も、ドル安リラ高のこれまでの流れを継続しやすい状況
〇13.28超えからは13.30台中盤を目指すとみる、13.35以上は反落注意
〇13.20割れからはいったん下落期に入るとみて13.10台前半への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の9月6日は13.28円から13.15円の取引レンジ、7日早朝の終値は13.25円で9月3日終値13.15円からは0.10円の円安リラ高となった。
9月3日は夕刻のトルコ8月物価指数発表から乱高下となり、3日夜の米雇用統計発表後にドル円が急落したところから売られて4日早朝に13.14円まで下落してほぼ安値圏に留まったまま先週を終えていた。週明けの9月6日は日中をほぼ安値圏での横ばい推移を続けていたが、夕刻に13.20円を超えたところからテクニカルな買い連鎖に入り夜には13.28円まで上昇して9月3日の下落幅を概ね解消した。深夜以降は上昇の勢いもやや鈍り上値が重くなっているものの13.20円台中盤を維持している。

【対ドルでの上昇継続】

ドル/トルコリラの9月6日は8.33リラから8.25リラの取引レンジ、7日早朝終値は8.27リラで3日終値8.30リラからは0.03リラのドル安リラ高となった。9月3日のトルコ物価統計発表からの乱高下でいったん8.34リラまで下落したところから米雇用統計発表直後に8.24リラへ上昇、その後は再びドル高リラ安に向かって6日夕にはこの日の安値となる8.33リラへ下落したが、夕刻からはリラ買いが巻き返しに入って夜には8.25リラへ上昇、9月3日に付けたこの間の最高値に迫った。

【トルコ政府の楽観的な中期見通し】

トルコ政府は向こう3年間の経済見通しを発表、インフレ率については2022年末までに10％を下回り、その後には8％台まで低下してゆくとし、成長率については2021年に9％を超える急回復となり2022年も5％前後の水準を維持する見通しとした。ワクチン普及と観光収入の回復等が貢献するとした。
楽観的な見通しだが、成長率については9月1日発表の4-6月期が前年同期比で21.7％増、前期比では1-3月期に2.2％増、4-6月期に0.9％増と堅調な推移を見せているので、年後半に急激な悪化が無ければ楽観的な見通しも達成できるのだろうと思われる。しかしインフレ率については9月3日発表の8月消費者物価上昇率が前年同月比で19.25％となり政策金利の週間レポレート19.00％を超える事態となっており、年後半に落ち着けるのかどうかは微妙だ。

【当面の利下げは無いとみてのリラ買い基調は継続】

トルコリラにとっては物価上昇率が政策金利を超える実質マイナス金利状態に陥ったことが昨年11月に史上最安値を更新するところまでリラ安が進んだ背景であり、8月の物価上昇率が7月からさらに上昇したことは潜在的なリラ売り材料になるところだが、今のところは物価上昇が収まらない限りはエルドアン大統領による利下げ希望はかなわないとして逆にリラ買い要因に転じる側面もあるところだ。

トルコ中銀のカブジュオール現総裁は就任後の政策金利据え置きを繰り返しており、インフレ率を下回るような政策金利にはしないと繰り返し発言し、6月や8月にエルドアン大統領が利下げ要求的な発言を繰り返したことに対しても据え置き維持で踏み止まっている。今回の消費者物価上昇率が政策金利を超えたことについては、コア指数（8月は前年同月比16.8％）がまだ政策金利を超えていないので単純に利上げすることはないだろうが、少なくとも利下げはしばらくできないという事情がリラを支えているといえる。
9月3日夜の米雇用統計が冴えない就業者の増加数だったことを踏まえて米連銀がテーパリングを急がないだろうという見方も踏まえて、ドル/トルコリラとしてはドル安リラ高のこれまでの流れを継続しやすい状況にあり、トルコリラ円としても9月6日の上昇で9月3日の反落分を概ね解消しているためにまだ鍋底型からのジリ高基調を継続しうるところと思われる。

60分足の一目均衡表では9月6日夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いてきたため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は9月6日夜の上昇では70ポイントに届かなかったが、50ポイント以上を維持するうちは上昇余地ありとし、50ポイント割れからは下げ再開注意、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後を目指す流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
（１）当初、13.20円を下値支持線、13.28円を上値抵抗線とする。
（２）13.20円以上での推移中は一段高余地ありとし、13.28円超えからは13.30円台中盤（13.33円から13.37円）を目指すとみる。13.35円以上は反落注意とするが、13.25円以上での推移なら8日の日中も高値試しを続けやすいとみる。
（３）13.20円割れからはいったん下落期に入るとみて13.10円台前半への下落を想定する。13.13円以下は反騰注意とするが、13.20円を割り込んでの推移なら8日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9月09日
　20:30　外貨準備高（グロス）　9/3時点　（8/27時点　779.6億ドル）
9月10日
　16:00　7月　失業率　（6月　10.6％）
9月13日
　16:00　7月　鉱工業生産　前月比　（6月　2.3％）
　16:00　7月　鉱工業生産　前年同月比　（6月　23.9％）
　16:00　7月　小売売上高　前月比　（6月　14.4％）
　16:00　7月　小売売上高　前年同月比　（6月　17.4％）
　16:00　7月　経常収支　（6月　-11.27億ドル）
9月15日
　17:00　8月　財政収支　（7月　-458億リラ）

9月23日
　20:00　トルコ中銀金融政策決定会合　政策金利　（現行　19.00％）

※ポイント要約は編集部