ドル円見通し 米連銀議長講演からのドル安一服、110円台回復を伺う(21/8/31)

ドル円は、週明けの30日午前には109.69円まで安値を切り下げたが、その後はジリ高の推移に入り31日午前序盤には110円に迫っている。

ドル円見通し 米連銀議長講演からのドル安一服、110円台回復を伺う(21/8/31)

米連銀議長講演からのドル安一服、110円台回復を伺う

〇ドル円、30日に109.69まで安値切り下げた後ジリ高推移、31日午前序盤に110円に迫る
〇米連銀議長講演からのドル安は軽微、ひとまずイベント通過から落ち着きを取り戻す
〇30日の米10年債利回り前日比0.03%低下の1.28%で終了、27日から下落基調継続
〇週末の米8月雇用統計、内容次第では次回FOMCで量的金融緩和縮小決定の可能性も
〇ナスダック総合指数前日比136.39ポイント高、終値ベースでの史上最高値を2日連続で更新
〇109.70以上での推移中は上向きとして110.20台を目指すとみる
〇109.69割れからは下げ再開として24日夜安値109.40前後を試すとみる

【概況】

ドル円は8月27日夜のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール・シンポジウムでの講演内容がハト派的とされたことをきっかけとしたドル全面安により直前高値110.26円から109.70円台へ急落、週明けの30日午前には109.69円まで安値を切り下げたが、その後はジリ高の推移に入り31日午前序盤には110円に迫っている。
8月27日は7月の米PCE(個人消費支出)デフレーターが予想を上回ったことでいったんドル高へ向かったものの8月19日以降の壁となってきた110.20円台を超えられずに失速したが、米連銀議長講演からのドル安も8月11日夜から8月16日夜にかけて発生したドル全面安等と比較しても軽微なもので、ひとまずイベント通過から落ち着きを取り戻している印象だ。

【米長期債利回りは続落、ナスダックは最高値更新】

8月30日の米10年債利回りは前日比0.03%低下の1.28%で終了、27日の議長講演からの下落基調を継続した。8月26日に1.37%へ上昇して8月12日に並んだところから失速しており、両日の高値をダブルトップ気味とした低下傾向を見せている。利上げ時期に敏感な2年債利回りは前日比0.02%低下の0.20%、8月4日の0.16%から8月25日に0.25%まで上昇したところから再び低下に入っているところだ。
米連銀議長が年内の量的金融緩和縮小開始を妥当としたものの利上げは急がないことを強調したことで安心感が広がっている印象だ。ただ、週末には米8月雇用統計を控えており、ウォラー米FRB理事が示すような85万人を超える非農業部門雇用者増加となれば次回FOMC(9/21-22)で量的金融緩和縮小開始が決定される可能性もあり本格的な低下基調へ進むのかどうかについては疑問符も付く。

8月30日のNYダウは前日比55.96ドル安と小幅下落、ナスダック総合指数は同136.39ポイント高と上昇して終値ベースでの史上最高値を2日連続で更新、取引時間中の最高値も更新した。米連銀の量的緩和拡大政策が年末までに縮小開始となってもしばらくは金融緩和状態は続き利上げもかなり先として楽観的な景気回復期待が優先されている印象だ。
米不動産業者協会(NAR)による7月の中古住宅販売仮契約指数は前月比1.8%低下となり6月の2.0%低下からの悪化が続いた。市場予想は0.4%上昇と改善期待だったものの期待外れだったが市場の反応は限定的だった。

【週末の米雇用統計と来週明けへの3連休を控えて動き難いところ】

今週末の9月3日には米8月雇用統計があるが、来週明けの9月6日はレーバーデーで米国市場は3連休となる。連休前の雇用統計ということと、内容次第では9月のFOMCで量的金融緩和縮小の決定もあり得るところとして雇用統計に対する市場の反応も大きくなると思われるが、その前段階ではやや仕掛け難い展開と思われる。雇用統計に対する市場の事前予想では8月の就業者増加数は75万人増とされて7月の94.3万人増からはやや鈍化するとみられている。予想通りか予想を下回る場合は米連銀も量的緩和縮小開始を急ぐ必要もなくその着手も年末までやや先送りされると思われるが、90万人を超える規模になると9月の量的緩和縮小決定から10月にも着手となりかねない。9月1日には前哨戦となるADPの民間雇用報告があり、景況感の代表でもあるISM製造業景況指数の発表もあるので、雇用統計本番前でやや先走った反応がみられるかもしれない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月16日夜安値から3日目の19日夕安値、さらに3日目の24日夜安値でサイクルボトムを付けて上昇していたが、27日夜高値で直近のサイクルトップを付けて下落に転じた。しかし24日夜安値から3日を経過した30日午前安値ですでに直近のサイクルボトムを付けて上昇再開に入っている印象だ。このため30日午前安値を割り込まないうちは9月1日夜から3日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、30日午前安値割れからは底割れによる新たな弱気サイクル入りとして9月2日午前から6日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では30日午前安値からのジリ高が続いたために遅行スパンが好転、先行スパン突破を伺うところに来ているので遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパンを上抜くところからは上昇も多少勢い付く可能性があると注意する。ただし遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開を警戒し、30日午前安値割れからは新たな下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30日午前に30ポイント台へ低下したところから60ポイント超えまで戻した。50ポイント以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとして70ポイントを試す流れとみるが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント試しへ向かう流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)109.69円を下値支持線、27日夜高値110.26円を上値抵抗線とする。
(2)109.70円以上での推移中は上向きとして110.20円台を目指すとみる。110.20円台は19日以降の上値抵抗帯のため戻り売りにつかまりやすいとみるが、110.26円を超える場合は110.30円から110.40円前後を試すとみる。また110円以上での推移なら1日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.69円割れからは下げ再開として24日夜安値109.40円前後を試すとみる。109.50円以下は買い戻されやすいとみるが、109.40円を割り込むと先行きの下値支持線が16日夜安値109.10円へ切り下がると注意する。また109.69円を割り込んだ後も109.75円以下での推移なら1日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/31(火)
10:00 (中) 8月 国家統計局製造業PMI (7月 50.4、予想 50.2)
10:00 (NZ) 8月 NBNZ企業信頼感 (7月 -3.8)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (1-3月 183億豪ドル、予想 210億豪ドル)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -6.7%、予想 -5.0%)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 7.3%、予想 4.8%)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 37.5、予想 36.0)
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 -9.10万人、予想 -4.00万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 5.7%、予想 5.6%)

18:00 (欧) 8月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (7月 2.2%、予想 2.7%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (7月 0.7%、予想 1.5%)
22:00 (米) 6月 米連邦住宅金融局(FHFA) 住宅価格指数 前月比 (5月 1.7%、予想 1.9%)
22:00 (米) 4-6月期 FHFA 住宅価格指数 前期比 (1-3月 3.5%)
22:00 (米) 6月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (5月 17.0%、予想 18.5%)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 73.4、予想 68.0)
23:00 (米) 8月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (7月 129.1、予想 124.0)

9/1(水)
OPECプラス閣僚級会合
一帯一路サミット(9月2日まで)
07:30 (豪) 8月 AiG製造業指数 (7月 60.8)
08:50 (日) 4-6月期 法人企業統計調査・全産業設備投資額 前年同期比 (1-3月 -7.8%、予想 3.8%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 1.8%、予想 0.5%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 1.1%、予想 9.2%)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 50.3、予想 50.2)
15:00 (独) 7月 小売売上高指数 前月比 (6月 4.2%、予想 -1.0%)
15:00 (独) 7月 小売売上高指数 前年同月比 (6月 6.2%、予想 3.6%)
16:55 (独) 8月 製造業PMI改定値 (速報 62.7、予想 62.7)

17:00 (欧) 8月 製造業PMI改定値 (速報 61.5、予想 61.5)
17:30 (英) 8月 製造業PMI改定値 (速報 60.1、予想 60.1)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 7.7%、予想 7.6%)
21:00 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門雇用者数 前月比 (7月 33.0万人、予想 65.0万人)
22:45 (米) 8月 製造業PMI改定値 (速報 61.2、予想 61.2)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 59.5、予想 58.5)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫

※ポイント要約は編集部

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