安値更新に失敗し短期ユーロ高トレンドへ
〇先週のユーロドル、週初は上値が重く1.1732レベルをつけ、年初来安値更新を視野に入れる展開
〇週央は動きなく安値更新に至らず、金曜に急速にユーロが買い戻され1.1805レベルの高値をつける
〇米CPIを境に米金利利回りが下降、ドル売りに転じ、ミシガン大消費者信頼感を機に一気に買い戻される
〇今週はユーロ圏の材料少なく、米金利に影響を与えそうな材料がユーロドルに影響するか
〇上値は7月末高値と8月安値の78.6%戻しの1.1864レベル、下値は7月安値1.1751レベルがターゲット
〇今週は1.1750レベルをサポートに、1.1860レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、週前半は上値が重く週半ば以降は動きが止まっていたものの金曜に急速にユーロ買い戻しが入り、先週の米国雇用統計前の水準に戻しての引けとなりました。ドル円の週報にも書いた通り、米金利利回りが水曜のCPIを境に上昇から下降に転じたことでドル買いからドル売りに転じたことが最大の要因です。
またユーロドルに関しては年初来安値1.1703レベル更新を視野に入れて短期筋が売りを強めたこと、水曜以降も戻りが鈍くもう一度試しに行くのではないかといった思惑が、逆にユーロ売りポジションを増やし金曜に一気に切らされたという流れがあったかと思います。どうも1.1700にはユーロ買いオーダーやオプションがらみのオーダーもあった様子で、週末のミシガン大消費者信頼感をきっかけに一気に買い戻した動きでした。
今週はいくつかの経済指標はありますが、第2週の材料が少ない週にあたりますので、火曜のユーロ圏4〜6月期GDP改定値を除くと、大きく動きそうなイベントはありません。今週もユーロ圏の材料以上に、パウエルFRB議長講演やFOMC議事録の公表といった米金利に影響を与えそうな材料からドルとしての動きがユーロドルに影響するという週になりそうです。これもドル円の週報に書いた通りですが、以前に比べて早期テーパリング思惑は後退していることから、来週のジャクソンホールもあまり市場への影響は無い可能性が高そうです。現状では11月以降のテーパリング開始という可能性が高いでしょう。
またコロナウイルスの感染拡大も、一時期はデルタ株、ラムダ株と懸念されていましたが、欧州の主要国ではフランスを除いて感染者拡大はコントロールされていることもあり、直近ではあまり市場の材料とはなっていません。今後はわからないものの、いったん材料から離れたという印象です。
今週は年初来高値をトライできず、一時的に短期筋のユーロ売りが増えたと書きましたが、シカゴのポジションはどうなのかを見ておきましょう。以下のチャートはユーロドルの週足とシカゴ通貨先物のユーロの投機筋(非商業部門)のポジションです。
これを見るとユーロ買いのポジションはかなり減ってきていることがわかります。先週火曜時点の33,857枚のユーロ買いは2020年3月以来の低水準です。このまま減ってユーロ売りに転じるという可能性も否定できないものの、先週の年初来安値トライを失敗したことから、再び買いポジションが増えていく可能性の方が高いように思えます。そうなると、米金利低下とユーロ買いポジション増という動きが重なって、ユーロは短期的には上昇に転じる動きにあると見ることが出来るでしょう。
また年初来安値更新を失敗したことで、より大きなサポートである2020年後半の安値圏となった1.16水準がしばらくは大きなサポートとして意識される展開となってきたと見ておいた方がよいかもしれません。短期的にはどうなのか日足チャートをご覧ください。
依然として6月下旬を起点としたレジスタンスラインとそれに平行に引いたラインとで構成される下降チャンネル(ピンク)が有効です。先週安値をわずかに下ヒゲで抜けた程度で、ほぼ同ラインで反発した動きです。金曜の上昇が大きく、既に7月末高値と8月安値の半値戻しは達成していますので、戻しのターゲットとしては61.8%戻しの1.1830から78.6%(61.8%の平方根)戻しの1.1864レベルを考えておくとよさそうです。
前者のターゲットは近すぎますので、後者のターゲットが妥当でしょうか。また下値については7月安値を下抜いてから年初来安値更新の機運が高まったため、7月安値の1.1751レベルが参考となります。今週はこれらの水準を参考にして、1.1750レベルをサポートに、1.1860レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円の日足チャートを見てみます。
6月中旬高値と7月末高値を結んだレジスタンスラインが結構効いていて、先週も上ヒゲでわずかに上回る動きはあったものの同ラインで上値を抑えられている展開です。基本的にドル円もユーロドルもドルとしては似た動きはしているものの、若干ドル円での円高の動きが強くユーロ円は6月高値からの下降トレンドを続けているチャートとなっています。
今週はユーロ高を見ているものの、ドル円でも円高となれば横方向に動きこととなりますが、引き続き比較で円高とならないとこのレジスタンスラインを上抜けますので、上抜けて横方向の動きとなるか、レジスタンスがこのまま継続かを見極める週になるでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月16日(月)
08:01 英国8月住宅価格
8月17日(火)
15:00 英国7月失業率
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値 ☆
8月18日(水)
15:00 英国7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏6月建設支出
8月19日(木)
(特になし)
8月20日(金)
08:01 英国8月消費者信頼感
15:00 ドイツ7月PPI
15:00 英国7月小売売上高
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月9日(月)
東京が休場となった月曜のユーロドルはNY市場まで若干の上昇後に、米金利上昇から改めてドル買い・ユーロ売りの動きとなり、1.1732レベルと4月1日以来の安値をつけ年初来安値更新を視野に入れる週明けスタートとなりました。
8月10日(火)
ドル高の流れを継続しユーロドルは値幅こそ伴わないものの終日ドル高・ユーロ安の展開となりました。ユーロドルは年初来安値を視野に入れつつも6pips届かず、安値更新は持ち越しとなりました。
8月11日(水)
ユーロドルは年初来安値を視野に入れて上値の重たい展開が続いていましたが、欧州市場序盤につけた1.1706レベルまでで、安値更新には2pips足りずという状況でした。その後NY市場に入り発表されたCPIをきっかけに米金利が下げに転じたことからユーロには買い戻しが出ましたが、どうもユーロドルの1.1700レベルにはオプションも含めユーロ買いが入っていたようでした。
8月12日(木)
夏枯れ相場でユーロドルのレンジはわずか24pipsに留まり、NY市場まではほとんど動意なし。NY市場ではPPI発表後に米金利の動きとともに若干の上下が見られた程度の一日で終わりました。
8月13日(金)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場で前日安値を上回ったあたりからドル安の流れが強まりました。NY市場ではミシガン大消費者信頼感の弱い結果から米金利低下によるドル売りからユーロドルは1.1805レベルの高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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