トルコリラ円見通し トルコ中銀は政策金利据え置きで発表後に上昇するも勢いに欠ける(21/8/13)

トルコリラ円の8月12日は12.97円から12.76円の取引レンジで推移。

トルコリラ円見通し トルコ中銀は政策金利据え置きで発表後に上昇するも勢いに欠ける(21/8/13)

トルコリラ円見通し トルコ中銀は政策金利据え置きで発表後に上昇するも勢いに欠ける

〇トルコリラ円、トルコ中銀による政策金利「現状19%を維持」との発表後12.97へ上昇
〇買い一巡後の下げを経て8/13早朝に12.98つけ8/3からの下落一服、13円台回復を試す動き
〇対ドル、政策金利現状維持発表後に続伸し8/13朝8.48に上昇、ドル高リラ安基調にブレーキ
〇トルコ中銀インフレ率上回る政策金利維持の姿勢を表明、金融政策巡る動きは落ち着くか
〇鉱工業生産・小売売上高はコロナショックからの持ち直しを継続、堅調な景気回復を示す
〇12.82以上での推移中は上向きとし、12.95超えからは8/11早朝高値13.01試しへ向かうとみる
〇12.82割れからは下向きとして、8/11夜安値12.72試しへ向かうとみる

【概況】

トルコリラ円の8月12日は12.97円から12.76円の取引レンジで推移。終値は12.88円で11日の12.78円からは0.10円の上昇。
8月12日20時にトルコ中銀金融政策決定会合が開かれ、市場の予想通りに政策金利は現状維持とされたが、中銀声明で政策金利はインフレ率を上回る水準で設定されるとしたことで当面の利下げは無いとみてリラ買い優勢となった。

8月11日には早朝の薄商いの時間帯で13.01円まで一時的に急伸したが材料等による上昇ではなかったために早々に押し返され、11日夜には12.72円までいったん下げていた。11日の米コアCPI伸び率が鈍化したことでドル円が11日夕高値からいったん下落したことでトルコリラ円も売られた格好だが、12日は20時の中銀金融政策発表を控えて買い戻しの動きに入り、中銀が政策金利を据え置いたところからこの日の高値となる12.97円へ上昇した。買い一巡後にいったん下げたものの再び買われて13日早朝には12.98円をつけて12日夜高値をわずかに上抜いている。
8月11日朝の一時的な急伸で付けた高値には届いていないものの、8月9日安値12.67円から11日夜安値12.72円へと底上げしての上昇であり、目先は8月3日からの下落一服で13円台回復へ進めるか試す動きとなっている。

【ドル/トルコリラは8月11日夜安値からの上昇を継続】

ドル/トルコリラの8月12日は8.63リラから8.49リラの取引レンジでの推移、終値は8.54リラで11日終値8.62リラからは0.08リラのドル安リラ高だった。
6月25日に8.79リラの史上最安値を付けたところから8月3日高値8.27リラまで上昇してきたが、その後は再びリラ売りの動きに入り8月3日から8月8日まで5日間連続の日足陰線で下落、11日安値では8.67リラの安値を付けたが、中銀金融政策決定会合前のリラ買い戻しにより上昇、中銀による政策金利現状維持発表から続伸となり13日早朝には8.48リラまで戻り高値を切り上げている。

8月11日は米コアCPIの伸びが鈍化したことでドル安となったことが11日夜から12日夕刻にかけてのドル安リラ高要因となったが、12日は米PPIの伸び率が予想を上回る上ブレの継続となったことで全般的にはドル高がぶり返す動きだった。しかしトルコリラとしては全般のドル高に圧されずに上昇を維持した。トルコ中銀の金融政策発表をきっかけとしてリラ買いへ向かったことで、ひとまず8月3日からのドル高リラ安基調にブレーキがかかり、史上最安値更新への挑戦はいったん小休止の様相だ。

【トルコ中銀、インフレ率を上回る政策金利を維持する姿勢】

トルコ中銀は8月12日の金融政策会合で政策金利の週間レポレートを19%に据え置いた。据え置きは5会合連続で市場予想と一致した。翌日物貸出金利も20.50%、翌日物借入金利も17.50%、後期流動性貸出金利も23.50%でいずれも据え置かれた。
8月3日に発表されたトルコの7月消費者物価上昇率が18.95%となり週間レポレートへの余裕が0.05%しかなくなる状況となり、エルドアン大統領による利下げ圧力を踏まえて利上げはできないものの利下げをする環境にはないとみて、事前予想はほぼ衆目一致での据え置き予想だった。

注目された中銀声明では「政策金利は引き続きインフレ率を上回る水準に設定される。恒久的なインフレ低下の兆候と中期的インフレ率目標5%の達成までは、強いインフレ低下圧力を維持する」と表明された。前任のアーバル総裁時代における「必要に応じて利上げする用意がある」という利上げへの積極姿勢はないものの、インフレ率を下回るような利下げはできないとの表明であり、8月の物価上昇率が政策金利を上回る場合には利上げの可能性も無きにしも非ずということとなったため、利上げ催促的なリラ売り感が後退した印象だ。

しかし、エルドアン大統領は利下げすることでインフレは抑制できるとの異説を主張し続けており、6月1日に「7月か8月には利下げも可能」との旨を発現したと報じられたことで6月2日に12.44円までトルコリラ円が急落した経緯もある。8月4日にも大統領はインタビューに答えて「高金利は高いインフレ率をもたらす」との持論を展開しており、中銀への利下げ要求圧力は継続している。カブジュオール現中銀総裁はエルドアン大統領に近い金融政策感を持っていることから採用されたわけだが、利下げに傾斜すればリラ暴落を招くことは承知しており、物価上昇率が収まらないうちは無理筋の利下げは行わないだろう。ひとまずは中銀金融政策を巡る動きは落ち着き、次の方向性を探る局面に入るという印象だ。

【トルコの鉱工業生産、小売売上高は堅調】

8月12日に発表されたトルコの6月鉱工業生産は前月比2.3%増で5月の1.5%増から上昇、前年同月比は23.9%増で5月の40.9%からは鈍化したが前年のコロナショック時からの改善は続いている。6月の小売売上高は前月比14.4%増で5月の5.5%減から回復、前年同月比は17.4%増で5月の27.6%増からは鈍化したもののコロナショックからの持ち直しを継続している。
5月前半にかけては感染拡大の第三波によるロックダウンが導入されていたことで小売は低下したがロックダウン解除から持ち直している状況だ。トルコ経済はかつてない規模の山火事被害も出ていることが気がかりではあるが、製造業、サービス業、小売は堅調な景気回復を示している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月9日夕安値を起点として反騰入りしていたが、11日早朝の一時的な急騰後から反落したために12日午前時点では11日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして12日夕から16日夕にかけての間への下落を想定した。しかし11日夜安値からは持ち直しを続けて中銀金融政策発表後も戻り高値を切り上げているので、11日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りと改める。トップ形成期は14日早朝から18日午後にかけての間とするが、11日早朝高値とのダブルトップ形成に終わる可能性もあるので12.80円割れからは弱気転換注意として11日夜安値試しとし、底割れからは弱気サイクル入りとして16日夜から18日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月12日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンからも上抜けてきているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8月11日の一時的な上昇で付けた高値を除けば11日夕高値から12日夜高値への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる。このため50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月11日夜安値12.72円を下値支持線、11日早朝高値13.01円を上値抵抗線とする。
(2)12.82円以上での推移中は上向きとし、12.95円超えからは11日早朝高値13.01円試しへ向かうとみる。13円以上は反落警戒とするが、12.80円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.82円割れからは下向きとして11日夜安値12.72円試しへ向かうとみる。12.72円以下は反騰注意とするが、12.80円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月13日
 16:00 6月 経常収支 (5月 30.81億ドル)
8月16日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -250.3億リラ)


※ポイント要約は編集部

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