一段安から1円近い急騰、週末米雇用統計へ向けて乱調な展開続くか
〇昨日のドル円、21時15分発表の米ADP民間雇用報告で108.71まで一段安
〇その後23時発表の米ISMサービス業景況指数で流れは一転、深夜に109.67まで急伸
〇23時からのクラリダ米連銀副議長の講演内容は年内のテーパリング開始支持
〇4日の米長期債利回りは下げ止まりから米連銀副議長発言等で反発
〇NYダウは前日比323.73ドル安、ナスダック総合指数は19.24ポイント高と小幅な上昇
〇4日深夜高値109.67更新からは110円を目指す、110円前後は戻り売りにつかまりやすい
〇109円割れからは下げ再開とみて4日夜安値108.71試しへ向けた揺れ返しの下落を想定
【概況】
ドル円は8月4日夜に108.71円まで一段安となったが、深夜に109.67円まで急伸、短時間で1円近い急反発となった。深夜高値の後は109.50円を挟んだ水準での横ばいとなっていたが5日午前は高値切り上げを伺う動きとなっている。
デルタ株による世界的な感染拡大に対するリスク回避感と米長期債利回り低下傾向を見てドル円は8月3日夜安値で108.86円へ下落して7月19日安値109.05円を割り込み7月23日深夜高値110.58円以降及び7月2日高値111.65円以降の安値を更新していた。
8月4日の日中は下げ渋りで109円を挟んだ揉み合いでの推移だったが109.20円台へ戻したところでは上値が重くなり、21時15分発表の米ADP民間雇用報告での就業者増加数が予想を大幅に下回ったことからドル安反応となって8月3日夜安値を割り込む一段安となった。ところが23時発表の米ISMサービス業景況指数が予想を大幅に超える上昇となったことで流れは一転、23時からのクラリダ米連銀副議長の講演内容も年内のテーパリング開始支持の内容だったこともありドル高へと急激な揺れ返しが発生、深夜には109.67円まで一挙に上昇した。
【米長期債利回り下げ止まり、株安ドル高】
8月4日の米10年債利回りは前日比0.02%上昇の1.19%。一時は1.134%へ低下して7月20日に付けた3月31日以降の最低水準である1.128%に迫ったものの米連銀副議長発言等から反発した。30年債利回りは横ばいの1.84%。利上げ時期に敏感となる2年債利回りは前日比0.01%上昇の0.18%で終了したが、一時は0.16%へ低下したところから0.19%台へ上昇している。総じて長期債利回りは下げ止まりから反発となった。
一方でNYダウは前日比323.73ドル安と下落、ハイテク株中心のナスダック総合指数は19.24ポイント高と小幅な上昇にとどまった。変異株による感染拡大が景気回復の足かせになるとの懸念、米連銀によるテーパリング開始へ向けた動きに対する警戒感が株高にブレーキをかけつつある印象だ。7月序盤まで大上昇してきた原油相場が失速していることも影響している。
米民間雇用サービス会社ADPが発表した7月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比33万人増となり市場予想の69万5000人増の半分にとどまり、6月の68万人増から伸びが大きく鈍化した。ADPによれば4-6月期の大きな伸びから全ての企業で減速したという。景気回復速度と雇用のギャップを反映している印象だ。
米サプライ管理協会ISMが発表した7月の米サービス業景況指数は64.1となり6月の60.1から上昇、市場予想の60.5を大幅に上回り過去最高となった。経済活動の回復により製造業に続いてサービス業も正常化への動きで回復している状況だ。
米経済指標の強弱により米連銀が量的緩和政策の縮小開始を早めるか先送りしてゆくのか、市場も敏感に反応している。ADPが弱かったところではドル安、ISMが強かったところではドル高と大きく揺れる動きとなったが、週末の米労働省雇用統計本番からはさらに市場反応も大きくなるのだろうと思われる。
米連銀のクラリダ副議長は8月4日の講演で、予想通りに景気回復が続けば事実上のゼロ金利を解除できる条件が2022年末までに整い、2023年には利上げが可能となるとの見方を示した。米国債やMBSなどを購入する量的緩和の縮小開始については「今後の数会合で評価する」とし「開始できる経済状態に進展している」との認識を示した。
今後の米経済指標、特に今週末と来月の米雇用統計の内容が強ければ今年の年末までには量的緩和の縮小も始まる可能性が高まる。逆に冴えない内容が続いて変異株の感染拡大が再び深刻さを示してくれば開始時期も先送りされる公算が高まる。週末の雇用統計を見定めながら為替市場は米長期債利回り動向をにらんで大きく動くと思われるが、ドル円としてはドル高反応へ進めば7月2日からの下落基調から脱却して上昇再開に入り、ドル安へ向かえば4月23日安値を試しにかかる下落期の継続となり、明暗も分かれるのだろうと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月29日未明高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、7月31日早朝へいったん戻してから8月2日夜に一段安したため、8月3日朝時点では7月30日午前安値で短めのサイクルボトムを付けた上で底割れにより既に新たな弱気サイクル入りしているとし、ボトム形成期を8月4日午前から6日午前にかけての間と想定した。
8月4日夜へ一段安してから急伸したため、8月4日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は5日午前から9日午前にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとみるが、急騰後の反動安も警戒がいると注意し、109.20円割れからは弱気転換注意、109円割れからは新たな弱気サイクル入りと仮定して9日夜から11日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月4日夜安値からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いた。その後も両スパン揃っての好転が続いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。弱気転換は先行スパン転落からとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月3日夜安値から4日夜安値への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて反騰入りした。50ポイント以上での推移から一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとするが、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開を疑い30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.20円から109.00円を下値支持帯、110.00円を上値抵抗線とする。
(2)109.20円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、4日深夜高値更新からは110円を目指すとみる。110円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、109.20円以上での推移なら6日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109円を試してから109.30円以上へ戻す場合は上昇再開とするが、109円割れからは下げ再開とみて4日夜安値108.71円試しへ向けた揺れ返しの下落を想定する。108.80円以下は反騰注意とするが、109円を割り込んでの推移なら6日の日中も安値試しへ向かいやすくなるとみる。
【当面の主な予定】
8/5(木)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 96.81億豪ドル、予想 104.50億豪ドル)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -3.7%、予想 1.9%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 54.3%、予想 22.9%)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 8950億ポンド、予想 8950億ポンド)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -712億ドル、予想 -741億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 40.0万件、予想 38.4万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 326.9万人、予想 326.0万人)
8/6(金)
08:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、下院委員会証言
08:30 (日) 6月 全世帯消費支出 前年同月比 (5月 11.6%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 豪中銀、四半期金融政策報告
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI・速報値 (5月 102.6、予想 104.2)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI・速報値 (5月 92.1、予想 94.0)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -0.3%、予想 0.6%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 17.3%、予想 8.0%)
21:30 (米) 7月 非農業部門就業者増加数 前月比 (6月 85.0万人、予想 88.8万人)
21:30 (米) 7月 失業率 (6月 5.9%、予想 5.7%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前年同月比 (6月 3.6%、予想 3.9%)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 1.3%、予想 0.8%)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 0.8%)
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 352.8億ドル、予想 220.0億ドル)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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