三角持ち合いの角へ煮詰まりながら7月14日の中銀金融政策会合へ向かう
〇トルコリラ円、7/8安値12.55まで下落したが、7/9深夜に12.70台前半まで戻す
〇対ドルでは7/9夜8.609まで上昇、6/25以降の高値をわずかに切り上げたが8.50台へは進めず越週
〇7/14中銀金融政策発表、現状維持にとどまる内容と思われる
〇三角持ち合いの角に差し掛かった状況、一段安への懸念も
〇7/1高値12.90を超えないうちは、6/2安値12.44、昨年11/6安値12.03を目指す流れとみる
〇7/1高値12.90を超える場合、13.00から6/11高値13.21手前を試すと見る。13円以上は反落警戒
【概況】
トルコリラ円の7月9日は12.74円から12.59円の取引レンジ。
ドル円が7月8日深夜安値で109.52円へ急落、夕刻にかけてはドルストレートでのドル高も重なったことでトルコリラ円は7月8日安値で12.55円まで下落したが、その後はドルストレートでのドル高が一服となったために対ドルでトルコリラが反発、8日深夜からはドル円も大幅下落の一服で戻しに入ったことによりトルコリラ円も9日深夜には12.70円台前半まで戻した。
ドル円は米長期債利回りの急低下を見て7月2日から下落に転じてきたが、米10年債及び2年債利回りが8日への急低下が落ち着いて9日は戻したこと、8日に一時は前日比500ドルを超える下落となり市場不安要因となったNYダウも大幅反騰して9日には終値ベースの史上最高値を更新したことでリスク回避感が後退したことがドル円の反騰につながった。
ドル/トルコリラの7月9日は8.70リラから8.60リラの取引レンジ。
6月25日(26日早朝)に8.799リラを付けて史上最安値を更新したところで下落一服となったが、その後は8.70リラ台前半から中盤では売られつつも8.60リラ台序盤前半では戻り売りにつかまる展開で、9日夜には8.609リラまで上昇して6月25日以降の高値をわずかに切り上げたものの8.50リラ台へは進めずに週を終えた。
3月30日に8.45リラへ下落したところから4月2日高値7.96リラへ0.48リラの反発、6月2日に8.77リラへ一段安したところから6月11日高値8.25リラまで0.52リラの反発というように急落した後には0.50リラ前後規模の反発を入れてきたのだが、6月25日に最安値へ一段安した後の戻りは鈍い。下落一服感で週足は2週連続の陽線だが、最安値を付けた6月25日の週の週足レンジ内に2週とも留まっている。
【中銀金融政策発表を待つ】
トルコ中銀の金融政策決定会合が7月14日に開催されて日本時間20時に結果が公表されるがこれまでの経緯をまとめておく。
(1) エルドアン大統領は3月19日に就任以来三度の利上げを行って昨年11月に史上最安値へ暴落していたリラの反騰を演出したアーバル総裁を突然解任し、リラは発表翌営業日の3月22日に暴落し、3月30日に副総裁4人のうちの1人を解任したことで3月30日には13.01円まで大幅続落した。
(2) アーバル総裁の後にエルドアン大統領から指名されたカブジュオール総裁はエルドアン大統領の「利下げが物価を下げる」との主張に近い存在とされるが、前総裁解任によるリラ暴落を見て「インフレ率を下回るような政策金利の引き下げはしない」と繰り返し市場にアピールしてきたが、4月には物価上昇率もピークを付けて年後半には落ち着くとの見通しを示して先行きの利下げへ含みを持たせてきた。
(3) 6月1日にはエルドアン大統領が7月か8月にも中銀が利下げを決断する可能性に言及したと報じられたことで12.44円まで一段安となったが、足元の物価上昇率が落ち着かないことで早計な利上げはないだろうとして暴落商状は一服したが、6月11日高値で13.21円まで戻した後は徐々に戻り高値を切り下げる展開となってきた。
(4) 7月1日にはトルコ政府が消費者向け電気料金を15%、住宅用天然ガス価格を12%それぞれ引き上げ、トルコ国有のガス販売会社BOTASも7月1日に産業用天然ガス価格を20%、電力生産用ガス価格を20.2%値上げすると発表した。リラ安による通貨インフレに加えてパンデミックからの景気回復がサプライチェーンのボトルネックを生じさせて国際エネルギー市況の高騰が続いていることもトルコのインフレ進行を助長している。
(5) 7月5日に発表された6月のトルコ物価上昇率はCPIの前年比が17.53%で5月の16.59%から加速、生産者物価に至っては5月の36.33%から42.89%へと上昇した。このため、7月14日のトルコ中銀金融政策決定会合では利下げは無理と市場は受け止めているが、利上げ催促的なリラ売り圧力と共に当面は利下げはないとみてのリラ買いもあり売り買いの力関係が様子見もあって均衡していることが相場を三角持ち合い型に押し込めているともいえる。
(6) トルコ中銀は7月1日に、国内金融機関に対して外貨預金に対する必要準備率の引き上げを決定、7月19日から適用されるとした。リラ安により国内投資家がドルやユーロ等のハードカレンシーへリスク回避的にシフトしていることがリラ売り要因となっていることに対して金融機関にブレーキを掛ける事が狙いだが、リラ安基調が続くうちは個人投資家はリラよりハードカレンシーを望むためリラ防衛への効果は疑問だが、当局のリラ防衛姿勢は市場心理を多少圧迫するといえる。外貨預金に対する金融機関の預金準備率は1年以内の19%から21%へ、1年を超えるものについては13%から15%へ引き上げられる。また金融機関としての預金準備率に示す外貨保有率は現行の20%から9月17日までの限定で10%へ引き下げられる。
(7) トルコ中銀は今後12か月のインフレ見通しによる調査結果において、6月時点の調査での12.12%から12.62%へ引き上げた。1月時点では11.15%だったところから5か月連続での引き上げとなった。また2021年末のインフレ率予想調査の中央値は15.4%となり前月の14.46%から引き上げられた。
トルコ中銀はアーバル総裁時代以前には各種裏口的な引き締め手法や外貨取引規制等でリラ安に歯止めをかけようとしてきた経緯があるが、現総裁はそうした手法は取らないと明言してきた。しかしエルドアン大統領による利下げ要求も厳しい中で難しい舵取りとなっている。今回の中銀金融政策発表においては現状維持にとどまる内容と思われるが、将来の利下げへの含みを持たせる姿勢がにじむようだと市場としては金融政策の妥当性への懐疑感からリラ売り攻勢を仕掛けるきっかけとなることも警戒される。
【三角持ち合いからの一段安への懸念】
トルコリラ円は6月2日安値12.44円と6月21日安値12.48円を結ぶラインを下値支持線、6月11日高値13.21円と7月1日高値12.90円を結ぶラインを上値抵抗線とすればレンジ縮小型の三角持ち合いの様相となってる。7月8日安値ではこの下値支持線を試したが持ち直して持ち合いの継続となっているが、7月1日から徐々に日々の戻り高値が切り下がっているために三角持ち合いとしてはその角に差し掛かった状況にある。
下落途中の三角持ち合いは、特に戻り高値切り下がりでのペナント型やトライアングル型は下放れへ進みやすい。
2月16日と3月19日のダブル天井から下落期に入ってきたが、3月30日安値から4月15日までを抵抗線切り下がり・支持線切り上げの三角持ち合いとしたが下放れした。その後も4月26日安値から4月29日高値へ戻した後に4月26日安値と5月14日安値を結ぶ支持線により三角持ち合いを形成して下放れしている。
4月2日への反発幅は0.83円、4月29日への反発幅は0.71円で4月2日は長い上ヒゲの塔婆型、4月29日は4月28日から2日連続の上ヒゲによる毛抜き型だったが、今回は戻り幅が0.77円で前2例に近く、6月11日と6月14日が2日連続の上ヒゲで前回同様の毛抜き型となっている。持ち合い下放れなら昨年11月底12.03円試しからドル/トルコリラにおける史上最安値更新に続き最安値更新を試す流れへ進みやすくなると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月8日安値12.55円を下値支持線、7月1日高値12.90円を上値抵抗線とする。
(2)7月1日高値を超えないうちは7月8日安値割れから三角持ち合い下放れ開始とし、6月2日安値12.44円、さらに昨年11月6日安値12.03円を目指す流れとみる。
(3)7月1日高値手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。1日高値を超える場合は13.00円から6月11日高値13.21円手前を試すと見るが、13円以上は反落警戒とし、三角持ち合いの上値抵抗線を新たに描き直した上で三角持ち合い下放れを試す流れへ向かうのではないかと考える。
【当面の主な予定】
7月12日
16:00 5月 失業率 (4月 13.9%)
7月13日
16:00 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.9%)
16:00 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 66.0%)
16:00 5月 小売売上高 前月比 (4月 -6.3%)
16:00 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 41.7%)
7月14日
20:00 トルコ中銀 週間レポレート (現行 19.0%、予想 19.0%)
7月15日
休 場 国家統一の日
19:30 6月 自動車生産台数 前年同月比 (5月 31.2%)
7月16日
17:00 6月 財政収支 (5月 -134億リラ)
20:30 外貨準備高(グロス) 7/9時点 (7/2時点 596.2億ドル)
7月19日
16:00 7月 消費者信頼感指数 (6月 81.7)
※ポイント要約は編集部
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