ドル円見通し 111円台到達後の調整安続く、米長期債利回り低下と全般的なリスク回避感が重石(21/6/30)

6月29日午前安値で110.43円を付けて6月25日夜安値110.47円を割り込み、夕刻にいったん110.75円まで戻したものの深夜に110.42円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 111円台到達後の調整安続く、米長期債利回り低下と全般的なリスク回避感が重石(21/6/30)

111円台到達後の調整安続く、米長期債利回り低下と全般的なリスク回避感が重石

〇ドル円、29日午前安値110.43を付け夕刻に110.75まで戻したが深夜に110.42まで安値切り下げる
〇NYダウ前日比9.02ドル高、ナスダック総合指数は前日比27.82と続伸し終値ベースの史上最高値更新
〇FHFAとケースシラーの米4月住宅価格指数は前月比から上昇、さらに市場予想も上回る
〇110.75以下で推移中は下向きとし110.42割れから110円台序盤試し
〇110.75超えから110.97試しへ、110.97を超えずに110.50を割り込むところから下げ再開

【概況】

ドル円は6月29日午前安値で110.43円を付けて6月25日夜安値110.47円を割り込み、夕刻にいったん110.75円まで戻したものの深夜に110.42円まで安値を切り下げた。その後は110.50円を挟んだ横ばい推移となっている。
6月24日高値で111.11円まで上昇して4月23日以降の最高値を更新したが、111円到達による高値警戒感から利益確定売り優勢となったこと、米長期債利回りがやや落ち着いて低下気味の推移になっていること、デルタ株等の変異種による感染拡大への懸念等を背景としたリスク回避的な動き等がドル円の上値を重くしているようだ。週末の米雇用統計も迫ってくる中で、ややポジション調整的な売りにも圧迫されていると思われる。

【米経済指標好調、株高基調続くも米長期債利回りはやや低下で落ち着く】

6月29日の米長期債利回りは総じて低下。10年債利回りは前日比0.01%低下の1.47%、30年債利回りは0.01%低下の2.09%、FOMC後に利上げ時期を意識して急伸した2年債利回りも0.01%低下の0.25%と落ち着いている。
米国株式市場は堅調。NYダウは前日比9.02ドル高と小幅高だったが、ナスダック総合指数は長期債利回り低下も支えとなり前日比27.82ポイント高と続伸して2日連続で終値ベースの史上最高値を更新、S&P500指数は前日比1.19ポイント高と小幅上昇だったが4連騰で史上最高値を更新している。
米コンファレンス・ボードが発表した6月の米消費者信頼感指数は127.3で市場予想の119.0を上回り、5月の120.0から上昇して昨年2月以来の高水準へ回復した。

米連邦住宅金融局(FHFA)による4月 住宅価格指数は前月比1.8%上昇となり市場予想の1.6%及び3月の1.6%を上回った。ケースシラーの4月住宅価格指数も前年同月比14.9%上昇となり市場予想の14.5%及び3月の13.4%を上回った。米モデルナのワクチンが変異株にも有効性を示したとの報道も米国株高に寄与している。
米連銀による量的緩和縮小開始や利上げ想定時期の前倒しは株式市場にはマイナスだが、リーマンショック後に大規模金融緩和政策がとられた際も、QE1からQE3へと拡大が続き、QE3で終了となりその後に規模縮小が始まったところでもNYダウは歴史的な大上昇を継続している。景気回復が金融緩和縮小を招くのであって、すでに金融緩和に依存しない程度に株高の推進力が回復していると株式市場が自認すれば株高は継続し、米国が景気回復で先行することで為替市場ではドル高を招く、という構造的な展開になってゆくのではないかと思われる。

【全般ドル高だが米長期債利回り低下とクロス円における円高がドル円を圧迫】

6月29日はドルストレートでのドル高、クロス円全般の下落=円高が目立った。
ユーロドルはFOMCから急落する前の水準が1.21ドル台だったところから6月18日安値1.1847ドルまで下げ、6月21日以降の揺れ返しの上昇で25日夜高値1.1974ドルまでジリ高で戻したもののFOMCショック安を解消できずに下落に転じており、29日夜と続落して1.190ドルを一時割り込んだ。ポンドドルもFOMC前は1.41ドル台だったところから6月21日昼安値1.3766ドルまで下げた後は揺れ返しで23日深夜に1.400ドル台にいったん到達したがその後はジリ安が続いて29日夜には1.380ドル台序盤まで下げており6月21日安値割れへの余裕が乏しくなっている。豪ドル米ドルやNZドル米ドルも同様の展開で先週までの揺れ返し上昇分の過半を解消する下落となっている。
ユーロやポンド、豪ドル等の対ドルでの下落に加えてドル円が111円到達後の調整安で安値を徐々に切り下げているため、クロス円全般の下げも目立っており、ドル円にとってはクロス円全般の下落=円高がドル円の下落にも跳ね返ってきている印象だ。

メジャー通貨の加重平均であるドル指数は5月25日安値で89.53まで下落したが1月6日安値89.21とダブル底を形成する形で反騰入りし、FOMC直後の6月18日に92.41まで上昇したところから小反落していたが、6月23日からは小幅ずつながら前日比変わらずを含めて5連騰となり6月18日高値超えへ向かい始めている。
米連銀が量的緩和縮小へとスタンスを変更する中、今週末の米6月雇用統計が強ければ縮小開始時期も早まるとみられることでドルが買われている。またECBや英中銀等の金融緩和終了への姿勢が米連銀程に前傾していないことも中銀スタンスの差としてドル高に寄与している。また変異株による感染再拡大懸念の中でワクチン生産と普及への強みを持つ米経済の回復力がリスク回避的なドル買いも含めてドルの騰勢を維持している印象だ。これらの動きはドル円にとっては押し上げ要因だが、目先は111円到達による高値警戒感もあってやや上げ渋りの様相となっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月21日昼安値から4日目となる6月25日夜安値でいったん底を付けたものの28日夜の戻り高値からの反落で底割れしたために既に新たな弱気サイクルに入っている。ボトム形成期は30日夜から7月2日深夜にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとし、110.75円を超える場合は強気転換注意として28日夜高値110.97円試しとするが、新たな強気サイクル入りは28日夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では28日夜の反落後はジリ安程度の推移のために遅行スパンは実線と交錯しているが先行スパンから転落した状況が続いているので、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試しとし、先行スパン突破からは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数はジリ安程度の推移のために50ポイントを超えるところは売られつつも40ポイント前後では買い戻される展開となっている。このため60ポイントを超えるような反騰へ進めないうちは一段安警戒とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.25円から110.00円までを下値支持帯、6月28日夜高値110.97円を上値抵抗線とする。
(2)110.75円以下での推移中は下向きとし、29日深夜安値110.42円割れからは110円台序盤(110.25円から110.00円)を試すとみる。110円台序盤は買い戻しも入りやすい水準とみるが、110.75円以下での推移が続くうちは7月1日にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)110.75円超えからは28日夜高値110.97円試しへ向かうとみる。28日夜高値を超えずに110.50円を割り込むところからは下げ再開とするが、28日夜高値を超える場合は6月24日高値111.11円試しへ上値目途を引き上げる。また、110.75円以上での推移なら1日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の主な予定】

6/30(水)
10:00 (中) 6月 製造業PMI (5月 51.0、予想 50.8)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 7.1%、予想 8.3%)
14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 34.1、予想 35.0)
15:00 (英) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -1.5%、予想 -1.5%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -6.1%、予想 -6.1%)
15:00 (英) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -263億ポンド、予想 -132.5億ポンド)
16:55 (独) 6月 失業者数 前月比 (5月 -1.50万人、予想 -2.00万人)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 6.0%、予想 5.9%)

18:00 (欧) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 2.0%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (5月 1.0%、予想 0.9%)
20:00 (英) ホールデン英中銀委員、金融政策について講演
21:15 (米) 6月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (5月 97.8万人、予想 60.0万人)
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 75.2、予想 70.0)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -4.4%、予想 -0.8%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 (4月 53.5%、予想 5.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

7/1(木)
休場、香港、カナダ
OPEC総会、OPECプラス閣僚級会合
07:30 (豪) 6月 AiG製造業指数 (5月 61.8)
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 4.8%)
08:00 (豪) 6月 マークイット製造業PMI確報値 (速報 60.4)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (1-3月 5、予想 16)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業先行き (1-3月 4、予想 18)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (1-3月 -1、予想 3)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (1-3月 -1、予想 8)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (1-3月 3.0%、予想 7.2%)

10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 80.28億豪ドル、予想 105.00億豪ドル)
10:45 (中) 6月 財新製造業PMI (5月 52.0、予想 51.9)
16:55 (独) 6月 製造業PMI改定値 (速報 64.9、予想 64.9)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI改定値 (速報 63.1、予想 63.1)
17:30 (英) 6月 製造業PMI改定値 (速報 64.2、予想 64.2)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 8.0%、予想 8.0%)
18:00 (英) ベイリー英中銀総裁、基調講演

21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 41.1万件、予想 38.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 339.0万人、予想 332.8万人)
22:45 (米) 6月 製造業PMI改定値 (速報 62.6、予想 62.6)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 61.2、予想 61.0)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 0.2%、予想 0.4%)


※ポイント要約は編集部

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