トルコリラ円見通し 大統領利下げ言及からの急落一服も続かず、対ドルで最安値更新へ余裕乏しい(21/6/4)

トルコリラ円も3日夜には12.59円へ下落、3日深夜から4日早朝にかけては12.65円を挟んだ安値圏での横ばい推移となっている。

トルコリラ円見通し 大統領利下げ言及からの急落一服も続かず、対ドルで最安値更新へ余裕乏しい(21/6/4)

大統領利下げ言及からの急落一服も続かず、対ドルで最安値更新へ余裕乏しい

〇昨日のトルコリラ円、夜には12.59へ下落、深夜から6/4早朝にかけて12.65を挟んだ横ばい推移
〇良好な米経済指標を背景としたドル全面高によるトルコリラ下落
〇対ドル、ドル全面高を背景に再度下値を試す動き、最安値更新へ余裕が乏しい展開に
〇昨日発表の経済指標、消費者物価上昇率はやや落ち着き、生産者物価の高騰は続く
〇12.80以下での推移中は一段安警戒とし、12.55割れからは12.44試しへ向かうとみる
〇12.80から12.90にかけてのゾーンは、戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の6月3日は12.77円から12.59円の取引レンジ。エルドアン大統領による利下げへの言及が報じられたことで2日早朝に12.44円(ベンダーによっては12.40円以下の安値提示も見られた)へ急落したが、報道後のやや狼狽的な売りが一巡した後は買い戻され2日夜に12.80円まで戻り高値を切り上げた。しかしその後は再び軟調推移となり、3日夜は米経済指標が良好だったことを背景にドル全面高となりドル円が急伸したもののそれ以上にドルストレートでのドル高が勝ったことで対ドルでのトルコリラが下落したためにトルコリラ円も3日夜には12.59円へ下落、3日深夜から4日早朝にかけては12.65円を挟んだ安値圏での横ばい推移となっている。
日足は終値ベースで3日続落、4月26日と5月14日の終値を割り込んでの終了で2月16日以降の終値ベースの安値を更新、6月2日の長い下ヒゲを付けた陰線に対しては下ヒゲをつぶす続落陰線となった。

ドル/トルコリラの6月3日は8.71リラから8.56リラの取引レンジ。エルドアン大統領の利下げ言及報道から6月2日朝に8.77リラへ下落し、昨年11月6日安値8.57リラから5月28日安値8.61リラへと史上最安値を更新していたところからさらに最安値更新となったが、急落一服でやや戻したものの6月3日はドル全面高を背景に6月2日の長い下ヒゲをほぼつぶす下落となり、最安値更新へ余裕が乏しくなった。終値ベースでは6月2日終値8.58リラを割り込んで最安値となっている。

6月3日夜は米経済指標が軒並み良好でADPの5月民間雇用者増加数が予想を大幅に上回り、ISM5月サービス業景況指数が過去最高記録へ上昇、週間失業保険申請件数も昨年3月のコロナショック以降で初めて40万件を下回ったことで米連銀のテーパリング(量的緩和縮小開始)議論が早まると市場は受け止めて米長期債利回りが上昇、ドルストレートではドル全面高となり、クロス円も概ね急落商状となった。6月4日には米労働省の雇用統計発表があり、為替市場全般としてはドル全面高が継続するのか、ADPと異なる内容でドルにとっての弱気サプライズとなるのか見極めが必要だが、トルコリラとしてはトルコ中銀及び大統領の金融政策姿勢への不信感により史上最安値更新局面が続きやすく、全般状況で多少戻しても戻り売りにつかまりやすい状況と思われる。

【消費者物価上昇率はやや落ち着くも生産者物価の高騰は続く】

6月3日夕刻に5月のトルコ物価上昇率の発表があった。5月の消費者物価上昇率は前月比0.89%となり4月の1.68%から伸びが鈍化、市場予想の1.46%を大幅に下回った。前年同月比は16.59%で4月の17.14%から低下して市場予想の17.25%も下回った。伸びが鈍化しており、トルコ中銀が「インフレ率のピークは4月」との予想を裏付けるものとなったが、生産者物価の上昇率はまだピークアウトしていない。
5月の生産者物価上昇率は前月比3.92%で4月の4.34%からは伸びが鈍化したが、前年同月比は38.33%となり4月の35.17%を上回っている。生産者物価の上昇が止まらなければ消費者物価の上昇も続きやすい。2018年9月に生産者物価の前年比が46.15%へ高騰した際に消費者物価の前年比は2018年10月に25.24%へ上昇してピークアウトしている。

大統領利下げ言及からの急落一服も続かず、対ドルで最安値更新へ余裕乏しい

物価上昇率発表後の市場反応は限定的だったが、全般的なドル高基調に圧される形で対ドルでのリラ安が進んだ。仮に4月ないしは5月で消費者物価上昇率がピークアウトすれば、トルコ中銀は利下げへ動き始め、それを警戒してリラ売りも進むだろう。逆にピークがまだ先となれば利上げ催促的なリラ売りが発生しかねない。どちらに転んでもリラが売られやすい状況は続きやすいと思われるが、問題解決にはトルコ中銀及び中銀の政策を左右する乱暴な人事を行うエルドアン大統領に対する市場の信認が回復する必要があるだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日朝への急落と反騰を踏まえ、3日午前時点では2日朝安値を直近のサイクルボトムとした。またトップ形成期は31日夕高値を基準として3日の日中から7日夜にかけての間と想定したが、戻りは短命の可能性もあるとみて物価統計発表後に急落商状となる場合や12.60円を割り込む場合は弱気サイクル入りとした。6月3日夜に弱気転換目安とした12.60円を割り込んだため、6月2日夜の戻り高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして6月5日朝から9日午前にかけての間への下落を想定する。強気転換は2日夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では6月3日夜への下落で遅行スパンが悪化しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンからの転落は回避しているものの転落からは下げ足が早まると警戒する。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが2日夜高値を超えないうちはその後に遅行スパンが再び悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は6月2日朝の急落で10ポイント台へ低下してから戻したものの50ポイントに届かない程度にとどまっているので。50ポイント以下での推移中は一段安警戒とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.44円を下値支持線、12.80円を上値抵抗線とする。
(2)12.80円以下での推移中は一段安警戒とし、12.55円割れからは12.44円試しへ向かうとみる。安値更新からは12.30円、12.20円等を段階的に試しながら11月6日安値12.03円を目指す流れとみる。
(3)12.80円から12.90円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみてその後に12.60円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

6月8日
 19:30 5月 自動車生産 前年比 (4月 854%)
6月10日
 16:00 4月 失業率 (3月 13.1%)
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) (5/28時点 487.2億ドル)
6月11日
 16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.7%)
 16:00 4月 鉱工業生産 前年比 (3月 16.6%)
 16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 5.1%)
 16:00 4月 小売売上高 前年比 (3月 19.2%)
6月14日
 16:00 4月 経常収支 (3月 33.29億ドル)
6月17日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.0%)


注:ポイント要約は編集部

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