ドル円見通し 米雇用統計を前に急伸、28日高値を超えて4月23日以降の高値更新(21/6/4)

ドル全面高の様相となる中で5月28日夜高値110.19円を超えて110.30円台へ上昇した。

ドル円見通し 米雇用統計を前に急伸、28日高値を超えて4月23日以降の高値更新(21/6/4)

ドル円見通し 米雇用統計を前に急伸、28日高値を超えて4月23日以降の高値更新

〇昨日のドル円、5/28夜高値110.19を上抜き110.30台へ上昇、4/23安値以降の高値更新となる
〇昨日夜の米経済指標の良好な結果受け、米長期債利回り上昇、ドル全面高となる
〇本日米労働省の雇用統計発表、結果次第ではドル円の動きに影響も
〇物価上昇率の上ブレ傾向と雇用改善により、米連銀のテーパリング議論開始が早まる可能性あるか
〇110円台を維持するか一時的に割り込んでも切り返すうちは、110.50超えから111円を目指すとみる
〇110円割れから続落の場合は、109.75前後試しとその後の反発を想定する

【概況】

ドル円は6月3日夜の米経済指標が軒並み予想を超える良好な数字だったことで米長期債利回りが上昇、ドル全面高の様相となる中で5月28日夜高値110.19円を超えて110.30円台へ上昇した。
5月13日高値で109.78円を付けたところから5月25日にかけては戻り高値が切り下がりつつ、安値ラインは5月7日夜の108.32円以降はやや底上げとなり三角持ち合いの様相だったが、5月27日夜の急伸で110円台を回復して5月3日と5月13日の110円手前でのダブルトップラインを超える一段高となった。いったん仕切り直しの調整安に入ったが5月31日深夜安値109.34円、6月1日午前安値109.31円、6月1日深夜安値109.33円と109.30円台で底固さを見せて持ち直しに入っていたが、6月4日の米労働省雇用統計の前哨戦となる3日夜のADP民間雇用が予想を大きく超えたことで6月2日夜高値109.88円を超え、さらに5月28日夜高値も上抜いて4月23日安値107.46円以降の高値更新となった。

NYダウは前日比23.34ドル安、長期債利回り上昇により過敏なナスダック総合指数は同141.82ポイント安と下落した。景気回復は順調だが利回り上昇による圧迫感が上値を抑えた。為替市場ではユーロドルが5月28日夜安値を割り込んで一段安となり、ポンドや豪ドル等も下落してドル全面高の様相となった。
米ADPの5月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比97万8000人増で市場予想の65万人増を大幅に上回った。4月分は当初の74万2000人増から65万4000人増へ下方修正された。
米労働省が発表した新規失業保険申請は前週比2万件減少の38万5000件で市場予想の39万件を下回り、昨年春のコロナショック発生以降では初めて40万件を割り込んだ。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した5月サービス業景況指数は64.0で4月の62.7から上昇、市場予想の63.0を上回ったが、3月の63.7を超えて同統計の過去最高記録を更新した。

【米連銀のテーパリング議論開始も早まるか】

6月3日の米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.63%、30年債利回りも同0.03%上昇の2.30%となった。ADP民間雇用と週間失業保険申請件数の改善、ISMサービス業景況指数の過去最高記録更新等がドル全面高と米長期債利回りの押し上げにつながった。バイデン米大統領が法人税率を引き上げる代わりに最低税率を15%とする案を野党共和党に示したとの報道も債券売りを助長したようだ。また米財務省が来週の入札予定で3年債580億ドル、10年債380億ドル、30年債240億ドルを示したことも債券需給緩和感による利回り上昇に寄与したようだ。

6月4日夜には米労働省の雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数についての市場予想は65万人増(4月は26.6万人増)だが、ADP並みかやや下回る程度なら市場も3日夜に反応済みとして大きな反応にならない可能性がある。ADPを上回る雇用増となる場合は3日夜の反応をさらに継続してドル全面高と米長期債利回り上昇が続く可能性がある。ただし、ADP統計と労働省統計が大きく食い違うことも多々あり、サプライズも付き物であることは念頭に置いておきたい。予想外に低調な雇用増にとどまる場合は3日夜のドル全面高とは真逆にドル全面安となる可能性も多少はあると注意しておく。

しかし、最近の物価上昇率の上ブレ傾向に加えて雇用改善も力強いとなれば、米連銀もテーパリング(量的緩和縮小開始の議論)を速める可能性が高まる。市場は8月のジャクソンホール会合でのパウエル米連銀議長講演でテーパリング方針が示されるのではないかとみているようだが、先のFOMC議事録公開で示された開始についての議論は今月の会合から始まる可能性も高まる。逆に労働省統計がさほど強くなければ、議論開始は時期尚早として7月の雇用統計を見てからということになるのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月28日夜高値でピークを付けて下落期入りしたが、6月1日午前安値の後は下げ渋りに入ったために2日朝時点では6月1日午前安値で目先の底を付けて反騰入りを試すところとし、2日夜に109.88円まで戻してから反落したものの新たな安値更新を回避していたために3日朝時点ではまだ3日の日中から4日にかけての上昇余地が残るとした。3日夜に一段高した後も高値圏を維持しているので引き続きトップ形成期の延長入りも含めて上昇余地ありとみる。雇用統計から一段高の場合は目先の材料消化で深夜以降ないしは週明けにいったん調整安に入る可能性もあるとみる。また雇用統計を前後していったん下落したところから切り返して高値更新なら新たな上昇期入りの可能性もあるとみる。雇用統計から弱気反応が続く場合は4日深夜から8日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3日夜の上昇で遅行スパンと先行スパンが実線から大幅に上方乖離している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、新たな高値更新へ進めなくなると遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からはいったん調整安に入るとみて安値試し優先とする。ただし、先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とみる。

60分足の相対力指数は3日夜の急騰で80ポイントに到達して目先は買われ過ぎだが、弱気逆行はまだ見られないので70ポイント前後までで確りするうちはもう一段高へ進む可能性が継続しているとみる。60ポイントを割り込む反落の場合は50ポイント前後試しとするが、その後に65ポイント以上へ切り返す場合は上昇再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.00円を下値支持線、110.50円を上値抵抗線とする。
(2)110円台を維持するか一時的に割り込んでも切り返すうちは110.50円超えから111円を目指すとみる。110.75円以上は反落注意とするが、110円台を維持しての推移か、直近の高値からの下げ幅が0.75円以内なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)110円割れから続落の場合は109.75円前後試しとその後の反発を想定するが、米雇用統計が弱気サプライズの場合は109.50円前後まで突っ込む可能性もあると注意したい。また、110円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいと予想する。

【当面の主な予定】

6/4(金)
G7財務相会合(6/4〜6/5、ロンドン)
サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(6/4〜6/5)
国際決済銀行(BIS)等主催のる金融と気候変動巡る会議「グリーンスワン2021」(6/4〜6/5)
17:30 (英) 5月 建設業PMI (4月 61.6)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 2.7%、予想 -1.0%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 12.0%、予想 25.0%)
20:00 (米) パウエルFRB議長、BISパネル討論会参加
20:00 (欧) ラガルドECB総裁、BISパネル討論会参加
21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数変化 前月比 (4月 26.6万人、予想 65.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 6.1%、予想 5.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 0.3%、予想 1.6%)


注:ポイント要約は編集部

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