『エルドアン氏の利下げ要求でリラは急落。対ドルで史上最安値更新』
〇トルコ円週初12.97まで上げるも、エルドアン大統領の中銀への利下げ要求に11/9以来の12.45まで急落
〇その後中銀総裁の火消し発言でやや戻すも、5月CPIが予想下回ると再反落週末は12.64付近
〇トルコ円テクニカルの地合い「極めて弱い」
〇ファンダメンタルズも中銀利下げ観測、対米関係悪化懸念等トルコ売り材料多い
〇トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想、来週の予想レンジ(TRYJPY):12.30ー12.90
今週のレビュー(5/31−6/4)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初12.83円で寄り付いた後、早々に週間高値12.97円まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線や心理的節目13.00円をバックに伸び悩むと、@トルコ5月製造業PMI(結果49.3、前回50.4)の冴えない結果(景気判断の分かれ目となる50を約1年ぶり割り込む結果)や、Aエルドアン大統領による「利下げの必要性についてトルコ中銀総裁と協議した」との発言(中銀への利下げ要求)、B上記Aを背景とした中銀の独立性への不信感(外国人投資家によるリラ離れが加速するとの思惑)が重石となり、週央にかけて、昨年11/9以来、約7ヵ月ぶり安値となる12.45円まで急落しました(対ドルでは史上最安値を更新)。
その後は、Cトルコ中銀カブジュオール総裁による上記Aに対する火消し発言(早すぎる政策緩和は正当化されない)を受けて、やや持ち直す場面も見られましたが、Dトルコ5月消費者物価指数(結果16.59%、予想17.25%、前回17.14%)が市場予想を下回ると(インフレ鈍化→トルコ中銀による利下げ観測再燃→トルコリラ売り)、週末にかけて再び下落し、本稿執筆時点(日本時間6/5午前4時45分)では、12.64近辺で推移しております。
来週の見通し(6/7−6/11)
トルコリラの対円相場は、2/16に記録した直近高値15.28円をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、約7ヵ月ぶり安値となる12.45円まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、90日移動平均線や200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転(一目均衡表転換線の基準線下抜け+ローソク足の雲下限下抜け+遅行線の26日前のローソク足下抜けが全て揃う状態)も成立するなど、テクニカル的に見て、「地合いは極めて弱い」と判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@トルコ経済の先行き不透明感や、Aトルコ中銀による利下げ観測(エルドアン大統領による利下げ圧力に加えて、今週発表された消費者物価指数も鈍化→6/17や7/14、8/12に開催されるトルコ中銀会合で利下げが実施される公算大)、B国内から国外への資本流出圧力(中銀の独立性への不信感)、C対米関係の悪化懸念(バイデン米政権とエルドアン大統領の衝突継続)など、トルコリラ円相場の下落を意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はトルコ国内の重要経済指標の発表に乏しいことから、エルドアン大統領やカブジュオール総裁による突発的な発言(ヘッドライン)を睨みながらの神経質な展開が見込まれます。両者よりハト派的な発言が見られれば、トルコリラがもう一段売り込まれる可能性も出てくるため、暫くは、ダウンサイドリスクに特に注意が必要でしょう(目先は11/6に記録した史上最安値12.04円を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):12.30ー12.90
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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