ドル円見通し 米消費者物価上昇率が予想を超える上ブレで5月3日高値を超える急伸(21/5/13)

ドル円は5月12日夜の米消費者物価上昇率発表から急伸、13日早朝には109.70円を付けて5月3日夕高値109.69円をわずかに上回った。

ドル円見通し 米消費者物価上昇率が予想を超える上ブレで5月3日高値を超える急伸(21/5/13)

 米消費者物価上昇率が予想を超える上ブレで5月3日高値を超える急伸

〇ドル円、昨夜の米消費者物価上昇率発表から109円を超え急伸
〇米長期債利回りの急上昇でさらに押し上げられ5/3高値109.69も超える
〇4月米消費者物価指数は前年同月比で4.2%上昇、事前予想を大幅に超える
〇NYダウは前日比681.50ドル安と大幅続落、10日から千ドル以上の下げ幅
〇米10年債利回りは前日比0.08%高の1.70%、上昇再開感強まり3/30のピーク超えの可能性も
〇109.25以上での推移なら14日も高値試しを続けやすいとみる
〇109.25前後は買われやすいが、割れれば109円試しとその後の反騰を想定

【概況】

ドル円は5月12日夜の米消費者物価上昇率発表から急伸、13日早朝には109.70円を付けて5月3日夕高値109.69円をわずかに上回った。
5月7日夜の米雇用統計がさえなかったことで108.32円まで急落し、その後の戻りも10日に109.05円を付けたところで行き詰まり11日夜には108.34円まで下げて7日夜安値に迫っていた。しかし消費者物価発表も控えた状況で底割れを回避して持ち直し、12日夜の消費者物価発表前段階では108.50円割れを買い戻されつつ109円では戻り売りにつかまるボックス型持ち合いの様相だった。
消費者物価の発表から109円を超えて続伸したことでボックス型持ち合いから上放れ、7日夜と11日夜の両安値がダブル底型となって一段高に入ったが、米長期債利回りが急上昇したことでさらに押し上げられて5月3日高値も超えた。

【米消費者物価上昇率、12年7か月振りの伸びへ上ブレ】

米労働省が5月12日夜に発表した4月の消費者物価指数は前年同月比で4.2%上昇となり2008年9月以来12年7か月ぶりの大幅な伸び率となった。3月の2.6%からの急加速であり、市場も事前予想で3.6%へ上ブレすると見ていたが予想を大幅に超えた。エネルギーと食品を除いたコア指数の前年同月比も3.0%上昇となったが、これは1996年1月以来の高水準であり3月の1.6%から加速、市場予想の2.3%を大幅に上回った。

コロナショックからの回復過程における需給ギャップから物価上昇が発生しているが、米連銀は物価上昇率が政策目標の2%を超えても一時的なものにとどまるとして量的緩和の縮小=テーパリングの開始議論は時期尚早としてきた。しかしイエレン財務長官が物価上昇が進む場合には利上げが発生する可能性もあると言及したり、地区連銀総裁の中においてもテーパリング議論を始めるべきとの声も出始めており、米連銀の予想を超えた物価上昇が続く場合には量的緩和縮小開始を前倒しして利上げサイクルに入る時期も早まる可能性が出てくる。米バイデン政権による大規模な経済対策と財政出動による景気刺激も続き、米国債の大量発行も続くため、物価上昇を見て米長期債利回りは上昇継続となりやすい環境となる。

NYダウは12日に前日比681.50ドル安と大幅続落した。5月10日に3万5091.56ドルを付けて史上最高値を更新したところから当日に250ドルを超える上げ幅を削って34.94ドル安、11日に473.66ドル安したところからの続落ですでに千ドル以上の下げ幅となっている。
米10年債利回りは前日比0.08%高の1.70%。3月30日に1.77%でピークを付けてから低下に転じ、5月7日の米雇用統計が予想外に不調だったところでは1.46%まで一時的に急落したが、7日当日には急落前水準まで往って来いで戻し、今週も連日のジリ高で上昇していたところからの急伸で4月29日の1.69%を超える一段高となった。上昇再開感が強まり3月30日のピークを超える可能性も出てきた印象だ。

5月12日22時からの米連銀クラリダ副議長の講演では「目標の到達は長い道のり」、量的金融緩和縮小条件となる経済の一段と大きな前進には「しばらくかかる」と述べてこれまでの姿勢を繰り返した。しかし、米連銀の予想を超える物価上昇率の上ブレがさらに続けば量的緩和縮小開始の前倒し、利上げ再開時期の接近ということを市場も意識せざるをえなくなる。今後の米連銀高官による発言でスタンスの変更を市場がより意識するようになるのか注目される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日夜の急落時安値で直近のサイクルボトムを付けて戻していたが、11日夜の下落で7日夜安値へ迫ったために12日午前時点では10日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は12日夜から14日夜にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとしたが、7日夜と11日夜の両安値をダブル底として反騰入りする可能性も多少あると注意した。

5月12日夜の急騰で10日夕高値を上抜いたため、ダブル底形成からの強気サイクル入りとして13日午後から17日夕にかけての間への上昇を想定する。弱気転換は109円を割り込むような反落発生からとする。
60分足の一目均衡表では5月12日夜の急伸で遅行スパンが好転、先行スパンも突破した。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とする。高値更新が続かないと遅行スパンは悪化しやすくなるが、一時的に遅行スパンが悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とし、弱気転換は先行スパンから転落するような下落発生からとする。
60分足の相対力指数は5月12日夜の急伸で80ポイントに到達してかなりの買われ過ぎとなっているが、60ポイント前後までを下値支持線としてまだ上昇余地ありとみる。小反落した後に一段高する場合、指数のピークが切り下がる弱気逆行が出やすいと注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.25円を下値支持線、110.00円を上値抵抗線とする。
(2)109.25円以上での推移中は一段高余地ありとみる。110円手前ではいったん売られやすいとみるが、勢い付く場合は110円台序盤(110.00円から110.30円)を目指す可能性もあるとみる。また109.25円以上での推移なら14日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)109.25円前後は買われやすいとみるが、急騰後の反動安にも注意がいるため109.25円割れからは109.0円試しとその後の反騰を想定する。

【当面の主な予定】

5/13(木)
休場 トルコ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、スイス、ノルウェー
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー現状判断DI (3月 49.0、予想 47.0)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー先行判断DI (3月 49.8、予想 43.5)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 1.0%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 4.2%、予想 5.8%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (3月 0.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 3.1%、予想 3.8%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 49.8万件、予想 49.0万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 369.0万人、予想 365.0万人)

24:00 (加) マックレム・カナダ中銀総裁、講演
25:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
26:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.00%、予想 4.00%)
29:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

5/14(金)
休場 トルコ、マレーシア、インド、インドネシア、パキスタン
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 9.5%、予想 9.4%)
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 1.2%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 2.1%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 9.8%、予想 1.0%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 8.4%、予想 0.8%)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 1.4%、予想 1.2%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 74.4%、予想 75.3%)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.5%、予想 0.3%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報 (4月 88.3、予想 90.0)
26:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加

注:ポイント要約は編集部

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