108円台序盤で底固さ見せるも戻り高値は切り下がり
〇ドル円、11日夜に108.34まで下げ米雇用統計後の安値に迫ったが108.50強へ持ち直す
〇NYダウ、10日に史上最高値を更新するも11日は一時600ドル安を超える急落と大幅下落
〇株安を助長する売り材料が出たわけではなく高値警戒感からの利益確定売りが急がれたか
〇今晩発表の米4月消費者物価上昇率の発表に注意
〇108.50割れから108.32試し、底割れから108.00、107.75前後の下落を想定
〇109円手前まで戻り売りにつかまりやすく、109.05超えから109.20台、109.40台への上昇を想定
【概況】
ドル円は5月7日夜の米雇用統計直後に108.32円まで急落したところからいったん10日に109.05円まで戻したが、その後は109円に届かない範囲で上値が重くなり、11日夜には108.34円まで下げて7日夜安値に迫った。底割れは回避されて108.50円強へ持ち直している。
4月23日夜安値107.46円から5月3日高値109.69円まで2.23円の上昇幅であり、その半値押しが108.57円、3分の2押しが108.20円にあり、現状は3分の2押しの手前で底固さを見せているものの戻り高値は5月3日から4日、7日、10日と切り下がっており調整局面を続けている印象だ。
【NYダウ大幅下落だがリスク回避的なドル高はさほど見られず】
5月11日はNYダウが一時600ドル安を超える急落となり、前日比473.66ドル安と大幅下落となった。10日に3万5千ドル台に到達して史上最高値を更新したところから急落に転じ、10日高値から11日安値までは千ドルを超える下げ幅となった。株安を助長するような大きな売り材料が出たわけではなく、高値警戒感からの利益確定売りが急がれたことに弾みがついた状況と思われる。昨年3月底からの上昇期においても何度か小規模、中規模の調整安を入れては一段高を繰り返しているため、今回も同様の調整安と思われるが、すでに1年を超える大上昇のため今回の下落が調整レベルとしても大きな下落規模となる可能性も抱えているので油断できないところだ。
米10年債利回りの5月11日は前日比0.2%上昇の1.62%、30年債利回りは0.03%上昇の2.35%となり、いずれも7日夜の急落時からの持ち直しが続いている。米10年債利回りは7日に1.50%を割り込むところまで急落してから当日中にほぼ往って来いまで戻し、10日、11日と続伸している。米長期債利回りの上昇がドル円の昨晩の急落を支えたともいえるが、米10年債は3月30日のピークで1.77%まで上昇していたため、7日夜の一時的な急落と反発を除けばまだ低水準での小反発というレベルにとどまっており、ドル円の本格的上昇再開への推進力とまでは言えない状況だ。米財務省は11日に580億ドルの3年債入札を行ったが応札倍率は2.42倍で堅調だった。
米長期債利回り上昇傾向の中でもユーロドルは5月11日夜に1.2180ドルまで上昇して3月31日安値1.1702ドル以降の高値を更新している。ポンド/ドルも深夜には1.4165ドルへ上昇して5月2日以降の高値を更新するなどドル安基調を維持する動きも見られた。ドイツのZEW景況指数が21年ぶりの高水準になり、英国の感染抑制の成功と規制緩和の動きなど景気回復感を拡大したことで支えられている印象だ。南アランドも昨年4月以降の最高値を更新している。全般的なドル安感が続くうちはドル円も若干の米長期債利回り上昇では浮上しきれないと思われる。
【今晩の米消費者物価上昇率に注目】
5月11日は米連銀高官の金融政策を巡る発言も多かったが、揃って金融緩和政策継続姿勢を強調するものだった。クリーブランド連銀メスター総裁は「年末時点のインフレ率は2%を超えるものの供給網の問題解消を受け来年は低下する」として市場の懸念する物価上昇による量的緩和縮小の前倒しの可能性を否定、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁も「回復は一様でない」「景気支援を継続する必要がある」と金融緩和政策継続姿勢を示した。ブレイナード理事は「雇用と物価は目標に程遠い」「目標達成へむけて忍耐強さを保つことが重要」と述べた。
5月12日には米4月消費者物価上昇率の発表がある。前年比に対する市場予想は3月の2.6%から3.6%へ、コア指数では1.6%から2.3%へと延びが加速すると予想されている。予想を超えるような数字となれば米連銀も対策の必要性を意識させられることになる可能性もあるが、今のところは一部高官を除いて物価上昇は一時的でテーパリング議論は時期尚早というスタンスが優勢と思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日夜の急落時安値で直近のサイクルボトムを付けて戻していたが、11日夜の下落で7日夜安値へ迫ったため、10日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は12日夜から14日夜にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとみるが、7日夜と11日夜の両安値をダブル底として反騰入りする可能性も多少あると注意し、10日夕高値超えからは強気サイクル入りとして13日午後から17日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では5月11日夜の下落で遅行スパンが再び悪化、先行スパンからも転落した。108円台序盤から後半にかけての持ち合いのため両スパンとも実線と交錯を繰り返しやすい。先行スパンから転落しているうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、両スパン揃って好転するところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は5月10日夜の下落時には30ポイント割れを回避してやや持ち直している。60ポイントを超えれば上昇再開感が強まるが、届かないうちは一時的に50ポイントを超えても割り込むところから下げ再開を警戒する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月7日夜安値108.32円を下値支持線、10日夕高値109.05円を上値抵抗線とする。
(2)10日夕高値を超えないうちは一段安余地ありとし、108.50円割れからは7日夜安値108.32円試しとし、底割れからは108.00円、次いで107.75円前後への下落を想定する。107.75円以下は反騰注意とするが、7日夜安値を割り込んだ後も108.50円以下での推移が続くなら13日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109円手前では戻り売りにつかまりやすいとみるが、10日夕高値超えからは109.20円台、次いで109.40円台への上昇を想定する。109.50円手前は反落警戒とみるが109.05円を超えた後も108.75円以上での推移なら13日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5/12(水)
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI速報値 (2月 98.7、予想 102.9)
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI速報値 (2月 89.9、予想 92.9)
15:00 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 0.4%、予想 1.5%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 1.3%、予想 -1.6%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 -7.3%、予想 -6.1%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産指数 前月比 (2月 1.0%、予想 1.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産指数 前年同月比 (2月 -3.5%、予想 2.9%)
15:00 (英) 3月 製造業生産指数 前月比 (2月 1.3%、予想 1.0%)
15:00 (英) 3月 貿易収支・商品 (2月 -164.42億ポンド、予想 -144.00億ポンド)
15:00 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -71.23億ポンド、予想 -48.66億ポンド)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 2.0%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -1.0%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -1.6%、予想 11.6%)
18:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 2.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 1.6%、予想 2.3%)
22:00 (米) クラリダFRB副議長、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -6596億ドル)
5/13(木)
休場 トルコ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、スイス、ノルウェー
08:01 (英) 4月 RICS住宅価格指数 (3月 59、予想 62)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調前 (2月 2兆9169億円、予想 2兆7548億円)
08:50 (日) 3月 経常収支・季調済 (2月 1兆7947億円、予想 1兆8677億円)
08:50 (日) 3月 貿易収支・国際収支ベース (2月 5242億円、予想 8132億円)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー現状判断DI (3月 49.0、予想 47.5)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー先行判断DI (3月 49.8、予想 43.5)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 1.0%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 4.2%、予想 5.8%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (3月 0.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 3.1%、予想 3.7%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 49.8万件、予想 50.0万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 369.0万人、予想 364.0万人)
24:00 (加) マックレム・カナダ中銀総裁、講演
25:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
26:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.00%、予想 4.00%)
29:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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