トルコリラ円見通し トルコ中銀は利下げを回避、トルコリラ円は乱高下後に上昇
〇トルコリラ円、中銀金融政策発表後乱高下、13.30まで下げた後持ち直しその後13.50台前半での推移
〇4/15中銀の金融政策発表、主要政策金利を19%に据え置く、追加利上げの可能性の文言は削除
〇対ドル、中銀政策発表直後に7.98へ上昇、直後に8.15へ反落したが、その後はジリ高の推移
〇乱高下の後は中銀政策発表前水準を上回り、ややリラ高気味の推移
〇ウクライナ問題等のトルコの地政学的リスク、今後重要な問題になってくる可能性も
〇13.45以上での推移中は上昇余地あり、13.56超えからは13.60を目指す上昇を想定する
〇13.45割れからは弱気転換注意とし、13.40割れからは13.30前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の4月15日は13.30円から13.56円のレンジで推移、20時のトルコ中銀の金融政策発表に注目が集まっていたが、中銀は政策金利を現状維持としたものの前回会合まで示していた追加利上げへの積極姿勢に関する文言を削除して先行きの利下げへの含みを残した。このため利下げ回避によるリラ買いと先行きの利下げ懸念によるリラ売りが交錯する形で乱高下となったが、13.30円まで下げた後は持ち直し、15日深夜から16日早朝にかけては13.50円台前半を中心とした水準での推移となり、中銀政策発表前の13.45円近辺での推移水準からやや上昇している。
対ドルでのトルコリラは中銀政策発表直後に7.98リラへ上昇、直後に8.15リラへ反落したが、その後はジリ高の推移に入って16日早朝には8.00リラを超えるところまで戻し、16日午前序盤は8.02リラ近辺での推移となっている。中銀政策発表前が8.05リラから8.09リラまでのレンジ推移だったが、乱高下の後は発表前水準を上回っての推移でややリラ高気味となっている。
3月22日からの暴落で3月30日安値で8.45リラを付けてから4月2日に7.96リラまでいったん戻し、その後は小康状態での推移だったが、13日から15日にかけてはややリラ高基調での推移で4月2日高値に迫ってきている。
トルコの10年債利回りは15日に17.15%へ低下した。リラ暴落時の3月30日に18.31%まで急上昇したが、その後は17.50%を挟んでの小動きで落ち着き、14日は17.23%へ低下し、15日も低下を続けた。その後はリラ暴落による混乱でトルコ債も売られたが、売り一巡でやや買い戻しが入って利回り低下がみられる状況のようだ。
イスタンブール100株価指数の4月15日は前日比0.10%安と小幅下落に終わった。リラ暴落による連鎖暴落が一服して買い戻された後、4月6日から13日まで反落していたが13日安値から持ち直している。リラ安、トルコ債安、トルコ株安のトリプル安商状はひとまず落ち着いた印象だ。
【中銀は政策金利を現状維持だが、追加利上げへの言及を削除】
トルコ中央銀行は4月15日の金融政策会合で主要政策金利を19%に据え置いた。市場予想も据え置きだったが、一部にはエルドアン大統領による圧力で利下げの可能性を指摘する向きもあったが、アーバル前総裁更迭報道からのリラ暴落直後だけに、さすがに利下げはできなかったということだろう。
3月20日に就任したカブジュオール新総裁はエルドアン大統領と同様にインフレ低下には利下げが必要との異説を表明していたこともあり、今回の就任は大統領の意向に沿った金融緩和への布石と市場は受け止めているが、トルコのインフレ加速がまだピークアウトしていない状況のためにひとまず利下げを思いとどまったということと市場は受け止めた。しかし、今回の中銀は声明では「金利の維持により金融引き締め政策を維持する」としたもののアーバル前総裁による前回会合声明にあった追加利上げの可能性への言及がなかったため、やはりいずれは利下げに動くのだろうと市場も受け止めている。
【地政学的リスク】
トルコのチャブシオール外相とギリシャのデンディアス外相が4月15日にトルコの首都アンカラで会談したが、東地中海におけるトルコの海底資源開発を巡る対立を鎮静化する目的の会談だったにもかかわらず、会見では両外相の非難応酬となり対立の根深さが浮き彫りになった。ギリシャのデンディアス外相が「東地中海でトルコがギリシャの主権を侵害し続ければEUは制裁を科す可能性がある」と述べ、トルコのチャブシオール外相は「わが国にとって全く受け入れられない非難だ」と反発した。
ウクライナ国境におけるロシアの軍事演習とウクライナの対抗的な軍事演習が両国間の緊張を高めており、ドイツと米国がロシアに自制を求めている。米海軍は黒海への艦隊派遣を中止した模様だが、トルコはウクライナに無人機(軍事ドローン)の提供を行っていることからロシアからの批判を浴びている。
トルコにとっては金融政策への市場の不信任感に加えて地政学的なリスクも多々抱えている。ウクライナ問題は米ロ関係だけでなく、利害関係と対立が入り混じるトルコにとっても重要な問題になってくる可能性があると注目しておきたい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月12日夕へいったん下げてから戻したために13日午前時点では12日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして13日から15日朝にかけての間への上昇を想定したが、4月14日夕高値からの反落により15日午前時点では14日夕高値で直近のサイクルトップを付けたとし、安値形成期を15日の日中から19日夕にかけての間と想定した。
15日夜の中銀金融政策発表からいったん急落してから持ち直しているため、12日夕安値から3日目となる15日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。高値形成期は19日午後から21日夕にかけての間と想定するが、戻りは短命の可能性もあるので13.45円割れからは下げ再開注意、13.40円割れからは弱気サイクル入りとして20日午後から22日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では15日夜安値からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は15日安値時に40ポイントを割り込んだがその後の反騰で60ポイントまで戻してからも50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、50ポイント割れから続落にはいる場合は下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.45円を下値支持線、13.56円を上値抵抗線とする。
(2)13.45円以上での推移中は上昇余地ありとみる。13.56円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、13.56円超えからは13.60円を目指す上昇を想定する。13.45円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.45円割れからは弱気転換注意とし、13.40円割れからはいったん下げに入るとみて13.30円前後への下落を想定する。13.32円以下は反騰注意とするが、13.40円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4月22日
16:00 4月 消費者信頼感指数 (3月 86.7、予想 80.0)
17:00 3月 観光客数 前年比 (2月 -68.96%)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合・議事要旨
注:ポイント要約は編集部
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