ドル円見通し 米長期債利回りは小動きだったがドル全面安に圧される(21/4/15)

ドル円は、14日夜の戻り高値は109.09円にとどまり109円に乗せても維持できない状況で安値圏にとどまっている。

ドル円見通し 米長期債利回りは小動きだったがドル全面安に圧される(21/4/15)

米長期債利回りは小動きだったがドル全面安に圧される

〇ドル円、14日午前に108.74まで安値を切り下げ、夜の戻り高値は109.09に
〇長期債利回り上昇の頭打ち感と株高継続感でリスク選好的なドル売り・投機通貨買いの動きに
〇米10年債利回りは前日比0.01%上昇の1.63%、NYダウは前日比53.62ドル高
〇米労働省発表の3月輸入物価指数は前月比1.2%上昇、市場予想上回り5か月連続の上昇
〇14日深夜にパウエル米連銀議長の講演、利上げについては「可能性は極めて小さい」
〇ベージュブックでは「経済活動が緩やかなペースに加速した」とし楽観的な見通しを示す
〇109.25超えからは反騰入りとみて109.50前後への上昇を想定
〇14日午前安値108.74割れからは108.50前後への下落を想定

【概況】

ドル円は4月8日夜に109円割れを試したところから9日夜に109.95円までいったん戻したが、13日午後の戻り高値は109.75円にとどまって戻り高値切り下がりとなり、13日夜からの下落で8日深夜安値を割り込む一段安に入り、14日午前には108.74円まで安値を切り下げた。その後は下げ渋りに入って新たな安値更新を回避しているが、14日夜の戻り高値は109.09円にとどまり109円に乗せても維持できない状況で安値圏にとどまっている。

米10年債利回りは1.63%から1.64%までのレンジ推移で、前日比0.01%上昇の1.63%で終了。NYダウは前日比53.62ドル高、ナスダック総合指数は同138.26ポイント安とまちまちだった。
米労働省が発表した3月の輸入物価指数は前月比1.2%上昇となり、市場予想の1.0%を上回り5か月連続の上昇となった。前年同月比は6.9%上昇で2012年1月の6.9%以来約9年2か月振りの伸びだった。石油を除いても前月比0.9%上昇、前年同月比では4.1%上昇だった。景気回復と共に物価上昇圧力が続いている。

為替市場ではユーロドルが4月8日深夜高値を上抜いて一段高に入っていたが14日も高値を更新、ポンドドルも12日午後以降の戻り高値を切り上げた。NZドル米ドルも中銀の政策金利の現状維持発表後に急伸に入り3月25日以降の高値を更新、豪ドル米ドルも連れ高で急上昇、南アランドは対ドルで昨年4月来の最高値を更新した。為替市場全般は米長期債利回り上昇の頭打ち感と株高継続感でリスク選好的なドル売り・投機通貨買いの動きを強めている印象であり、クロス円においては上昇圧力、ドル円には売り圧力がかかった状況にある。

【米10年債利回りの騰落に左右される展開続く】

米長期債利回り動向を見ながらの展開が続いており、3月31日高値110.96円への上昇は米10年債利回りが3月30日に1.77%台へ上昇したことが背景となっていた。米10年債利回りの上昇が頭打ちとなり4月8日に1.61%まで低下したことでドル円も下落に転じて8日深夜には109円割れを試す状況となり、13日午後にかけては米10年債利回りが1.70%までいったん戻したことでドル円も買い戻されたが、米10年債利回りは14日午前に1.61%台へ再び低下してドル円もこの間の安値を更新、14日夜にかけては米10年債利回りが1.64%台へ若干戻したことでドル円も下げ渋るという展開だったが、米10年債利回りの上昇も勢いに欠け、ドル円の戻りも鈍い程度にとどまった状況だ。

【米10年債利回りはまだ高止まりの範囲だが再上昇気配に欠ける】

米政権によるコロナ対策としての1.9兆ドル規模の経済政策や現金給付、3月31日にバイデン大統領が演説で示した2兆ドル規模のインフラ投資計画、さらに社会福祉関連等での1兆ドル規模等、巨額の財政出動を伴う状況の中で国債大量発行による債券需給緩和、感染拡大の落ち着きによる経済活動の急回復が供給サイドのボトルネックを発生させてインフレ感が進行していることが米長期債利回りの上昇を招いてきた。また米連銀は長期債利回りの上昇とインフレ進行については一時的なものとして容認し、ゼロ金利政策と量的緩和政策の長期継続姿勢を示して来たことが長期債利回り上昇を助長してきた。こうした流れはまだ継続するが、10年債利回りが1.80%手前まで上昇したことで利回り益確保の債券買いも見られて利回り上昇も頭打ちの状況にある。10年債利回りは3月30日をピークに、3月18日と4月14日に戻したところを両肩とすれば三尊天井形成の動きにも見え、もう一段下へと低下しても不思議ないところだ。

4月14日深夜にパウエル米連銀議長の講演があったが、議長は「米景気が成長と雇用拡大の転換点にある」「成長と雇用の拡大が加速する段階に入るだろう」と景気への楽観姿勢を示しつつ、「雇用の完全回復とインフレ率がしばらく2.0%を持続的に上回ることが利上げの再開条件」とし、2022年末までに利上げがあるかとの質問には「可能性は極めて小さい」と答えた。また「利上げのかなり前の段階で量的緩和を縮小に入る」としたがそのタイミングを示唆する発言はなかった。
米連銀による全米12地区の連銀景況報告(ベージュブック)も「経済活動が2月下旬から4月初めにかけて緩やかなペースに加速した」として楽観的な見通しを示したが、特段のサプライズ内容はなかった。米連銀は4月27日−28日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催するが、政策金利等を現状維持とする見込み。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月8日夜安値から9日夜への反騰とその後の反落を踏まえ、13日朝時点では4月8日夜安値を直近のボトムとし、9日夜高値で既にピークを付けて下落期に入っているとし、8日夜安値割れからは13日夜から15日深夜にかけての間への下落を想定した。
4月14日午前に安値を更新してから下げ渋りだが、横這い程度の動きのためまだ一段安余地ありとみる。また14日午前安値を目先の底として安値更新から新たな下落期に入る可能性も警戒される。強気転換には109.50円を超える反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では13日夜の下落で遅行スパンが再び悪化、先行スパンからも転落したが、14日午前安値からの下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯しやすい位置にある。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後の悪化からは下げ再開とし、強気転換は先行スパン突破からとする。

60分足の相対力指数は14日午前に30ポイント割れまで低下してからやや戻しているが50ポイントに届いていない。50ポイントを下回るか一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、50ポイント超えから続伸に入る場合は上昇再開の可能性ありとみて60ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月14日午前安値108.74円を下値支持線、109.25円を上値抵抗線とする。
(2)109.25円以下での推移中は一段安警戒とし、108.74円割れからは108.50円前後への下落を想定する。下げ足が早まる場合は108円台序盤(108.30円から108.00円)へ下値目途を引き下げる。また109.25円以下での推移なら16日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.25円手前では戻り売りにつかまりやすいと見るが、109.25円超えからは反騰入りとみて109.50円前後への上昇を想定する。109.50円以上は反落注意とするが、109.25円を上回っての推移なら16日も高値試しへ向かいやすいとみる。
中勢としては、1月6日からの上昇幅に対する3分の1押し108.16円前後が当面の下値目途と思われるが、3分の1押しラインを割り込む場合は107.50円前後、次いで半値押しの106.76円前後へ下値目途が切り下がる可能性もあるとみる。4月9日夜高値超えからは調整終了による上昇再開の可能性を優先する。

【当面の主な予定】

4/15(木)
10:30 (豪) 3月 新規雇用者数 (2月 8.87万人、予想 3.50万人)
10:30 (豪) 3月 失業率 (2月 5.8%、予想 5.7%)
14:00 (日) 4月 地域経済報告(さくらリポート)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
15:00 (独) 3月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.00%、予想 19.00%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 74.4万件、予想 70.0万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 「前週 373.4万人、予想 370.0万人)
21:30 (米) 4月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (3月 51.8、予想 42.0)

21:30 (米) 4月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (3月 17.4、予想 19.5)
21:30 (米) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -3.0%、予想 5.9%)
21:30 (米) 3月 小売売上高・除自動車 前月比 (2月 -2.7%、予想 5.0%)
22:15 (米) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -2.2%、予想 2.8%)
22:15 (米) 3月 設備稼働率 (2月 73.8%、予想 75.7%)
23:00 (米) 2月 企業在庫 前月比 (1月 0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 4月 NAHB住宅市場指数 (3月 82、予想 83)
24:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加

27:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
28:45 (米) クラリダFRB副議長、シャドウオープンマーケット委員会出席
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
29:00 (米) 2月 対米証券投資・全体 (1月 1063億ドル)
29:00 (米) 2月 対米証券投資・短期債除く (1月 908億ドル)

4/16(金)
日米首脳会談(ワシントン)
ユーロ圏財務相会合、非公式EU財務相理事会
11:00 (中) 1-3月期 GDP 前期比 (10−12月 2.6%、予想 0.5%)
11:00 (中) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10−12月 6.5%、予想 18.2%)
11:00 (中) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 33.8%、予想 28.0%)
11:00 (中) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 35.1%、予想 18.0%)
18:00 (欧) 2月 貿易収支・季調済 (1月 242億ユーロ、予想 220億ユーロ)
18:00 (欧) 2月 貿易収支・季調前 (1月 63億ユーロ)

18:00 (欧) 3月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 3月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
18:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、ウッズ同副総裁、講演

21:30 (米) 3月 住宅着工件数・年率換算件数 (2月 142.1万件、予想 160.2万件)
21:30 (米) 3月 住宅着工件数 前月比 (2月 -10.3%、予想 12.7%)
21:30 (米) 3月 建設許可件数・年率換算件数 (2月 168.2万件、予想 175.0万件)
21:30 (米) 3月 建設許可件数 前月比 (2月 -10.8%、予想 1.7%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (3月 84.9、予想 89.0)

注:ポイント要約は編集部

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