ドルは下値正念場、続落なら「本格調整」も
〇本日のドル円、明確な方向性なく109円後半で一進一退
〇G20「通貨の競争的切下げを回避」を声明文に
〇米国から発せられた「北京五輪ボイコットの可能性」コメントに中国が反論
〇小幅な下押し、109円半ば前後で下げ止まればドルが再上昇をたどる可能性も
〇109円半ばをクリアに下回れば、「本格的な価格調整局面入り」か
〇本日は週間ベースの米新規失業保険申請件数が発表される見込み
〇本日欧米時間のドル/円予想レンジは109.10-110.00
<< 東京市場の動き >>
8日の東京市場はレンジ取引。109円後半における一進一退で、明確な方向性はうかがえなかった。
ドル/円は109.80-85円で寄り付いたものの、基本的には30ポイントにも満たないレンジ取引で方向性は定まらず。ただ、夕方にかけてはレンジ内ながら、その下限における推移をたどっており、引け味はあまりよくなかった。16時現在では、日中のドル安値圏である109.65-70円で推移、欧米市場を迎えている。
一方、材料的に注視されていたものは、「G20会合」と「中国情勢」について。
前者は、G20財務相・中銀総裁によるテレビ会議が実施され、新型コロナウイルス禍の長期化に苦しむ途上国の支援継続で合意されたという。ただ、個人的に驚いたのはそこではなく、共同声明に盛り込まれた「為替に関する文言」について。たとえば、「通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない」といった文言が含まれていた。参加した麻生財務相は会合終了後に「共同文書の為替部分は、従来の考え方を明確化したもの」と説明しているが、いま少し長い目で状況を見極めたい気もしている。
対して後者は、米国サイドから発せられた「北京五輪ボイコットの可能性」コメントに中国サイドが猛反論。それを受けてか、米国のサキ報道官からは一転、「ボイコットは協議していない」などと前述発言を撤回するような弱腰姿勢が示されていた。それに対し、「中国戦闘機が台湾の防空識別圏に侵入した」と発表した台湾は、外交部長が「中国が侵攻すれば最後まで戦う」などと述べ、日和ることなく強気の姿勢を鮮明化。なお、それとは別に韓国、日本に続く格好で、中国は習国家主席がドイツのメルケル首相と電話会談を実施し、関係改善を持ち掛けたという。
<< 欧米市場の見通し >>
ドル/円は、ある種の調整局面に入っているものの、さらなる下押しについては微妙なレベルにあるようだ。これは、昨日レポートしたように「年明け以降、目先高値を示現後に訪れる小幅な下押しは1週間で1.3円ほどの下げが最大」だったのだが、先週31日に戻り高値110.97円まで上昇したのちの値動きはギリギリ誤差の範囲内にとどまっているため。筆者は今回こそ「本格的な調整局面入り」とみているが、仮に109円半ば前後で下げ止まると、ドルが再上昇をたどる可能性もゼロではない。
本日の欧米時間も、引き続き発表される雇用を中心とした米経済指標の発表と、パウエルFRBを中心とした要人発言にまずは注視。また、ここのところ気になっているのが英アストラゼネカ製ワクチンの副反応についての報道だ。昨日も欧州医薬品庁(EMA)が「血栓との関連性」を認める認識を示していた。そんな英製ワクチンへの信頼感の揺らぎが、ここ数日のポンド安の一因になっている感も否めず、続報などには要注意だろう。
テクニカルに見た場合、ドル/円は前述したように経験則の観点から下値は正念場を迎えている。109円半ばをクリアに下回れば、今年初の出来事で「本格的な価格調整局面入り」が確認されたことになるのかもしれない。
なお、そんなドルの下値メドは、109.40円台まで切り上がってきた移動平均の21日線や、年明け安値102.60円を起点とした上げ幅のフィボナッチ23.6%戻しに当たる109円前後などか。本格的な調整局面であれば、意外に下げ余地も大きいようだ。
材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「米露が冷戦への逆行懸念」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「バイデン米大統領による政権運営」−−などが注視されている。
一方、本日の新規材料としては、週間ベースの米新規失業保険申請件数が発表される見込みで、まずはそちらに注目。またIMFの会合で講演を実施するパウエルFRB議長を筆頭に、米地区連銀総裁らによる講演なども少なくなく、要人の発言にも一応の注意を払いたい。
そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは109.10-110.00円。上方向は、時間足など短期ベースでは直近だけで数回レジストされている109.90-00円が短期的な抵抗に。超えると110円半ば、そして110.75円レベルなどがターゲットとなる。
対するドル安・円高方向は、昨日のドル安値である109.58円を含めた109円半ばをめぐる攻防に注目。下回れば移動平均の21日線や109円レベルが意識されそうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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