ドル高基調継続か、対円では111円台乗せも
〇先週のドル円、110円の壁を超え一時110.97まで上値を伸ばす
〇週末NYでもドルは高値圏をキープ。110.65-70で取引を終えて越週
〇ユーロドルは一時1.17割れをうかがうなど、再び年初安値更新をたどる局面も
〇バイデン米大統領が初めて対面式で対談を行う「日米首脳会談」は1週間延期
〇今週はG20財務相・中銀総裁によるテレビ会議、6日に核合意会合が開催
〇今週のドル/円予想レンジ109.50-111.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルがさらに続伸。前週超えられなかった110円の壁を超えただけでなく、その足で一時110.97円まで上値を伸ばす局面も観測されていた。
前週末には、中国外務省が「ウイグル問題」で米国とカナダへの報復措置を発表するなど、引き続き関係悪化が取り沙汰されるなか、3月25日に発射した北朝鮮のミサイルについて、国連安保理事会の北朝鮮制裁委員会が「安保理の決議に違反する」などと指摘していた。
そうした状況下、ドル/円は109.70円で寄り付いたのち、当初はドル売り優勢。米金利の低下などを嫌気し、週間安値である109.38円へと小幅に値を下げた。しかし、その後はジワリと下値を切り上げる展開となり、前週上げ渋った110円の壁を超えると、そのまま一気に1円近い続伸をたどっている。111円台に乗せることは出来なかったが、週末に発表された3月の米雇用統計が予想を上回る好数字となったこともあり、週末NYでもドルは高値圏をキープ。110.65-70円で取引を終えて越週となった。
なお、ドルは週間を通して対円以外でも堅調推移。たとえばユーロ/ドルは一時1.17ドル割れをうかがうなど、再び年初安値更新(ドルの同高値更新)をたどる局面も。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「新型コロナの感染拡大」と「米ヘッジファンド破綻問題」について。
前者は、日本も第4波入りした可能性が取り沙汰される新型コロナの感染拡大だが、欧州における状況はさらに深刻。実際、フランスが「パリなど一部に適用していたロックダウン(都市封鎖)措置を全国に拡大する」と発表したほか、ドイツも首都ベルリンが「イースターを含めた2日から夜間の集会を禁止する」と宣言していた。そうしたなか、ブラジルの研究所がサンパウロ州で新たな新型コロナウイルス変異株が検出されたとしたうえ、「感染力が強いとされる南アフリカ型に類似している」ことを明らかにした。さらに、新たな変異株は南アへの渡航歴がなく、南アに渡航した人と接触していない患者から検出されたと発表したことも話題に。
対して後者は、当初は野村ホールディングスから「米子会社に多額損害発生事案が起こる」といったやや漠然とした発表のあった話が、「米ヘッジファンドであるアーキゴスのデフォルトと関係」などとそののち報道され市場で様々な思惑が広がった。さらに、野村HDだけでなくクレディスイスや三菱UFJ証券HDも多額の損失に直面する可能性があるとされたことも話題に拍車をかける。市場の「安全資産志向」が強まり、その一端としてドルが対円やユーロなどで買われた可能性も取り沙汰されていたようだ。
<< 今週の見通し >>
ドル/円は先週110.97円まで上値を伸ばしてきた。年明けからと考えても3ヵ月、価格にして8円を大きく超えるドル高・円安の進行になる。そのあいだ調整らしい調整の動きがなかったことで、期待を込めて調整を口にする市場筋も少なくないが、果たして如何に。確かに名実とも4月に入り、3月までとはやや風向きが変わった感は否めないものの、それでも先週末に発表された3月の米雇用統計がかなり良好な内容になるなど、正直ドルを積極的に売り込む要因にも乏しい状況だ。
一方、材料的には、前述したような状況下、まずは発表される米経済指標の内容が注視されている。また、注視されていたバイデン米大統領がはじめて対面式で対談を行う「日米首脳会談」は1週間延期されたものの、それでも今週はG20財務相・中銀総裁によるテレビ会議や、6日には核合意会合が開催され、仲介役を挟んだ格好ながら米国とイランが「間接協議」を行う可能性も取り沙汰されていた。広義の国際情勢には要注意か。
テクニカルに見た場合、対円だけでなくユーロなどを含め、ドルの基本的なリスクは依然として上方向にバイアスがかかりそう。ドル/円で言えば、先週示現した110.97円を超えれば次の強い抵抗である111.70円レベルが視界内に捉えられそうだ。さらに足を伸ばせば、昨年のドル高値112.23円も入ってくる可能性を否定できない。
ただ、大きな調整らしい調整がないままドル高が進行しているだけに、調整が入ったらかなりの深押しが進行する危険性もないではない。
材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「米露が冷戦への逆行懸念」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「バイデン米大統領による政権運営」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、3月のISM非製造業景況指数、2月の貿易収支といった米経済指標が発表される見込みとなっている。米経済指標に対する期待感は根強いなか、好数字は今週も続くことになるのかにまずは注視だ。それとは別に、FOMCやECBによる議事録要旨の公開にも一応要注意かもしれない。
そんな今週のドル/円予想レンジは、109.50-111.50円。ドル高・円安については、先週高値110.97円が最初の抵抗に。超えればいよいよ111円台回復、111.70円が意識されそうだ。
対するドル安・円高方向は、時間足など短期ベースでは110.40円前後などにいくつか弱いサポートがあり、それらを下回っても110円前後がかなり強いサポートとなりそうだ。ただ、本格的な調整局面となれば、さらなる下押しが入る可能性も。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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