トルコリラ円見通し 日足は3日連続陰線、中銀副総裁も更迭されて混乱と不信任感は増大(21/3/31)

トルコリラ円は3月30日に13.01円まで安値を更新した。

トルコリラ円見通し 日足は3日連続陰線、中銀副総裁も更迭されて混乱と不信任感は増大(21/3/31)

日足は3日連続陰線、中銀副総裁も更迭されて混乱と不信任感は増大

〇トルコリラ円、30日に13.01まで安値を更新、深夜に13.38まで戻した後は勢いに欠ける展開
〇3月30日付けでトルコ中銀のチェティンカヤ副総裁を更迭、後任にはムスタファ・ドゥマン氏を任命
〇中銀総裁更迭に続き副総裁更迭も報じられ29日、30日と安値を更新し暴落商状が収まらない印象に
〇対ドルでは30日に8.45リラへ続落、副総裁更迭報道からさらに安値更新を続ける展開に
〇13.40から13.50までは戻り売りにつかまりやすいとみる
〇13.15割れから下げ再開を警戒、13.01割れから12.80前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円は3月30日に13.01円まで安値を更新した。日足は3日連続の陰線で3月22日暴落一服後の3月26日から終値ベースの安値更新に入り、取引時間中の安値も29日に更新し、30日も大幅に切り下げた。30日夜にこの日の安値を付けた後は深夜に13.38円まで戻し、その後はやや下げ渋りとなっているものの勢いに欠ける展開。
3月19日の戻り高値15.13円で2月16日高値15.26円に迫ったところから中銀総裁解任報道で暴落となり、3月8日安値13.97円を割り込んでダブル天井形成となった。中銀総裁更迭に続いて副総裁更迭も報じられたことで29日、30日と安値を更新しており暴落商状が収まらない印象だ。

対ドルでのトルコリラは3月30日に8.45リラへ続落、3月29日に8.21リラへ下落したところで22日暴落時の安値8.17リラを割り込んで一段安に入ったが、副総裁更迭報道からさらに安値更新を続ける展開となっている。3月30日の下落は米長期債利回りが一段と上昇したことによる全般的なドル高も影響したが、夜安値の後は急落一服で8.22リラまで小反発したが、その後は8.35リラを挟んで揉み合いにとどまっており、下落基調から脱却するきっかけを得ずにいる。
トルコリラ円は11月6日の史上最安値12.03円に対しての余裕があるが、対ドルでのトルコリラは11月6日安値8.57リラに対する余裕が乏しくなっており、11月6日安値を割り込めば史上最安値更新となり市場の先安懸念、通貨危機的暴落継続懸念も一段と拡大しかねないと思われる。

イスタンブール100株価指数の3月30日は前日比0.23%高と小幅続伸。やや落ち着いているが、前週の9.6%安に対して今週は1%弱の上昇にとどまっている。

【カブジュオール新総裁は物価上昇率を上回る政策金利維持を約束】

トルコのエルドアン大統領は3月30日付けでトルコ中銀のチェティンカヤ副総裁を更迭した。解任理由は示されていない。後任にはムスタファ・ドゥマン氏が任命された。ドゥマン氏はモルガン・スタンレー・セキュリティーズの執行役員経験者という。チェティンカヤ前副総裁は2019年半ばから中銀におり、利下げ局面にもかかわっていた人物だったが今回の解任が利上げ派一掃の動きなのかどうかは不明だ。

トルコ中銀のカブジュオール新総裁は30日の中銀年次会合において「現在のようにインフレ率が高水準にあるときは引き締め的な金融政策が必要」とし、「インフレ率の持続的な低下が明確になるまでは政策金利をインフレ率を上回る水準に維持する」と表明したと報じられている。また「週間物レポレートが主要政策金利であり続け、中銀は政策ツールを適切な方法で利用していく」とし、インフレ率は2023年に目標の5%に低下するとの見方も示した。
トルコ中銀は週間レポレート以外でも翌日物の貸出・借入レートなどを操作したり為替取引の変動率を規制したこともある。3月22日のリラ暴落の衝撃を踏まえて、市場の信認がこれ以上崩れないように気を遣う発言を繰り返している印象だが、突然の総裁・副総裁解任による市場の不信感は簡単には回復不能と思われる。

【トルコの感染拡大第三波】

トルコ保健省は3月30日に新型コロナウイルス新規感染者数が3万7303人増となり1日当たりとしては感染流行開始以来で最多となったとした。また1日当たりの死者は155人、累計死者は3万1385人となった。累計感染者数は327.8万人。トルコの感染拡大第一波のピークは4月11日の1万3967人、第二波のピークは12月8日の3万3198人だった。
トルコ政府は3月29日に移動と集会を規制するとしたが、エルドアン大統領は、イスラム教の断食(ラマダン)中に週末の全土ロックダウンを再開するとした。コカ保健相は英国株を中心とした変異株が全県で見つかっていると述べており、変異株の出現率は75%前後に達しているとし、95%に達した県もあると報告した。
リラ暴落と感染拡大第三波の両面からトルコの危機感も強まる状況だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月22日朝の暴落時安値を前回のサイクルボトムとし、3月23日夕刻の戻り高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、3月27日早朝安値から小反発してから一段安したために30日午前時点では29日夕高値を直近のサイクルトップとしてすでに新たな弱気サイクルに入っているとした。しかし30日夜へ一段安してからやや持ち直しているため、24日夕安値から4日目となる30日夜安値を直近のサイクルボトムと改める。高値形成期は26日深夜高値を基準として31日から4月2日深夜にかけての間とするが、30日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして4月2日から6日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月27日早朝への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。30日夜安値からの下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯し始めているが、先行スパンを上抜けないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパン突破からはいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は30日夜の30ポイント割れから50ポイントまで戻している。50ポイント台は抵抗感も大きいと思われるが、40ポイント以上での推移中は上昇余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開と一段安入りを想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月30日夜安値13.01円を下値支持線、13.50円を上値抵抗線とする。
(2)13.40円から13.50円までのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)13.15円割れからは下げ再開を警戒し、30日夜安値割れからは12.80円前後への下落を想定する。12.80円前後は反発注意とするが、30日夜安値を割り込んだ後も13.15円以下での推移なら4月1日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3月31日
 16:00 2月 貿易収支 (1月 -30.3億ドル、予想 -34.00億ドル) 
16:00 3月 経済信頼感指数 (2月 95.8、予想 98.0)
4月1日
 16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)
 16:00 週次 外貨準備高・グロス 3/26時点 (3/19時点 538.9億ドル)
 16:00 週次 外貨準備高・ネット 3/26時点 (3/19時点 136.8億ドル)
4月5日
 16:00 3月 消費者物価上昇率 前年比 (2月 15.61%)
 16:00 3月 消費者物価上昇率 前月比 (2月 0.91%)
 16:00 3月 生産者物価上昇率 前年比 (2月 27.09%)
 16:00 3月 生産者物価上昇率 前月比 (2月 1.22%)

4月15日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合


注:ポイント要約は編集部

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