米長期債利回り低下で新興国通貨の買い戻し続く
〇トルコリラ円11日早朝に14.47まで上昇、9日から2日連続の陽線
〇10日発表のトルコ1月失業率は市場予想を下回り12.2%、12月から改善
〇対ドルも9日からの上昇継続し11日早朝に7.48まで高値切り上げ
〇米長期債利回り急上昇が一服で新興国通貨は上昇、リラも買い戻しの動き
〇米10年債利回りが1.55%を超え再上昇なら新興国通貨の反騰も挫折しかねない
〇トルコ政府、レイオフ禁止の大統領令を3/17から2か月間延長すると発表
〇14.50超えからは14.60前後への上昇を想定
〇14.20割れからはいったん下げに入るとみて14.10前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は3月11日早朝に14.47円まで上昇、3月9日未明安値13.97円以降の戻り高値を切り上げた。
3月10日16時にトルコの1月失業率の発表があったが、市場予想の13.5%を下回る12.2%となり12月の12.9%から改善したことをきっかけに3月9日深夜高値14.31円を超えて一段高となった。
日足は3月9日から2日連続の陽線となり、2月18日高値15.26円から9日未明安値までの下げ幅1.29円に対して3月11日早朝高値までの戻り幅は0.50円となり38.8%を戻した。
対ドルでのトルコリラも3月9日早朝安値7.77リラからの上昇を継続して11日早朝には7.48リラまで高値を切り上げている。
昨年11月6日の史上最安値8.57リラから2月16日高値6.83リラまで大上昇してきたところからは当面の買い材料一巡と米長期債利回り急上昇によるドル高圧力で下落に転じ、3月9日早朝安値まで大幅下落してきたのだが、米長期債利回りの急上昇も一服し、NYダウが連日の史上最高値更新となる中で為替市場もリスク選好感を優先して主要通貨が買い戻しに入り、特に新興国通貨の上昇を見てトルコリラも買い戻しの動きを続けたようだ。
【米長期債利回り上昇一服での新興国通貨の反発】
米10年債利回りは3月5日に1.62%へ一段と上昇したが、3月10日には一時1.51%まで低下した。その後は1.52%台を回復して11日午前は1.53%台へやや上昇している。2月25日に急伸した時は1.61%へ急上昇してから1.38%台へ急低下し、その後に1.40%を挟んだ状況で高止まりとなり3月5日への一段高へとつながった。今回も急上昇一服ではあるが1.50%台序盤で高止まりするようだと上昇再開へ向かいやすくなると注意される。
米国の2月消費者物価上昇率の前年同月比は全体が1.7%上昇で1月の1.4%から加速した。コア指数では1.3%上昇にとどまって1月の1.4%から低下したため、10日の米国市場ではインフレ進行への過度な懸念は後退したと受け止められたようだが、徐々に米連銀が目標とする2%を目指す流れとなってきている印象であり、消費者物価上昇率を米10年債利回りが追いかけてゆく展開になりかねない状況は続いている印象だ。
ひとまず米長期債利回り急上昇が一服したことで新興国通貨は上昇している。10日もブラジルレアル、南アランド、タイバーツやインドネシアルピアなどが総じて続伸しており、トルコリラの対ドルでの上昇もそれらと同調した動きと思われる。米長期債利回りが落ち着いてNYダウが史上最高値を更新する展開が続けば、為替市場もリスク選好感を優先してドル安へ向かい、新興国通貨の反騰も勢いつく可能性があるが、米10年債利回りが1.55%を超えて再上昇してくるようだとトルコリラを含めた新興国通貨の反騰も挫折しかねないと注意する。
【トルコ失業率発表】
トルコの失業率統計は、これまでの3か月移動平均としての公表値から単月の数値の公表へ変更となった。1月失業率は12.2%となり市場予想の13.5%を下回り12月の12.6%から改善した。コロナショックの第一波の影響で2020年7月には14.5%まで悪化していたが、その後は改善傾向を続けている。非農業部門の1月失業率も14.2%で12月の14.7%から改善した。昨年7月の17.0%からは改善傾向が続いている。
しかし若年層(15-24歳)の失業率は24.7%と依然として高い水準にある。2019年3月に25%を超えて2019年8月には26.6%まで悪化し、その後も25%を前後した高水準での推移が続いている。
トルコ政府は3月9日に新型コロナウイルス感染拡大による不況対策としてのレイオフ禁止の大統領令を3月17日から2か月間延長すると発表した。トルコ政府は雇用確保のために企業のレイオフ禁止令を発動してきたが、禁止令は2021年半ばまでの間はエルドアン大統領は期限ごとに最大3か月間の延長をすることができるとされている。このため2021年7月以降は新たな大統領令がなければレイオフが解禁となる。今回は2か月間の延長のため5月半ばまでの禁止継続となり、今後の経済指標改善が見られれば5月半ば以降は解禁となる可能性もある。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月5日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、3月9日未明安値からの反騰が続いたために10日午前時点では3月9日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は10日夜から12日夜にかけての間と想定し、14.15円以上での推移中は上昇余地ありとした。
3月11日未明へ高値を切り上げてからも高値圏を維持しているので引き続きトップ形成中とみるが、反落警戒期にも来ているので14.30円割れを弱気転換注意とし、14.20円割れからは弱気サイクル入りとして11日深夜から16日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3月10日午前への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けたが、その後も両スパン揃っての好転を維持しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし、遅行スパン悪化からは下げ再開を警戒して先行スパン試しとし、先行スパン転落からは下げ足が早まるとみる。
60分足の相対力指数は10日夜の上昇で70ポイント台に到達し、その後も60ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、60ポイント割れからは弱気転換注意とし、50ポイントを割り込む反落が発生するところからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、14.30円を下値支持線、14.50円を上値抵抗線とする。
(2)14.30円以上での推移中は上昇余地ありとし、14.50円超えからは14.60円前後への上昇を想定する。14.60円以上は反落注意とするが、14.35円以上での推移が続くなら12日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)14.30円割れからは弱気転換注意とし、14.20円割れからはいったん下げに入るとみて14.10円前後への下落を想定する。14.10円台は買い戻しも入りやすいとみるが14.20円を割り込んだ後も14.25円以下での推移なら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3月11日
16:00 1月 経常収支 (12月 -32.1億ドル、予想 16.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3/5時点 (2/26 545億ドル)
3月12日
16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 9.0%、予想 8.5%)
16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.3%)
16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 0.6%、予想 2.3%)
16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 -4.2%、予想 3.4%)
3月15日
17:00 2月 財政収支 (1月 -241.5億リラ)
3月18日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 17.0%、予想 17.0%)
注:ポイント要約は編集部
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