米長期債利回り上昇一服による新興国通貨の買い戻し背景に14円割れから切り返す
〇トルコリラ円、9日昼前から14.20台を回復、夜には14.31まで戻した
〇対ドルでは9日早朝に7.77リラへ大幅下落、昼前に7.78リラへ安値を切り下げ深夜に7.58リラへ反騰
〇トルコリラ円、米長期債利回り再上昇とドル高再開の流れとなればもう一段安へ進む可能性
〇本日発表のトルコ11-1月期の失業率に注視、市場予想は14%への上昇
〇14.10以上で推移中は上昇余地あり、14.30超えから14.40前後への上昇を想定
〇14.10割れから弱気転換注意、14.00割れから下落期入りと見て13.80台への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は3月9日未明安値13.97円まで急落した後は新たな安値更新を回避していたが、9日昼前からの米長期債利回り低下と新興国通貨買い戻しの動きに乗じて14.20円台を回復、9日夜には14.31円まで戻した。
米長期債利回りの上昇とドル全面高による新興国通貨売りの中でトルコリラ円は2月26日安値14.16円まで下げた後は14.20円を下値支持線とした持ち合いとなっていたが、3月8日夕刻に14.20円を割り込んで持ち合い下放れに入った。9日午前は突っ込み警戒感からやや戻していたが、ドル安の動きが加速したことで持ち直しの動きを続けたようだが、14.20円前後は一段安する前の持ち合いの下値支持線でもあり、9日夜以降に14.20円を超えたところは上値が重くなっているようだ。
対ドルでのトルコリラは8日夕刻に3月5日安値7.57リラを割り込んで一段安に入り9日早朝には7.77リラへと大幅下落し、9日昼前には7.78リラへ安値を切り下げたが、その後はドル高一服による揺れ返しに入って9日深夜には7.58リラへ反騰し、10日午前序盤は7.61リラ近辺での推移となっている。
【新興国通貨安進む】
米10年債利回りは3月5日に1.62%へ上昇して2月25日の急伸時に付けた1.61%を超えたが、その後は上げ渋り、9日は1.52%台までいったん低下した。2月25日の1.61%からいったん1.40%台へ下げた時と比較すればまだ高止まりの範囲といえるが、NYダウが史上最高値を更新し、ナスダック総合指数が前日比3%高を超える大幅上昇となったことで為替市場もリスク選好感をやや回復して主要通貨の買い戻しへ動いた。
前日まで急落していたブラジルレアル、南アランド、タイバーツやインドネシアルピアなどが総じて買い戻され、トルコリラもそれらと同調して買い戻されたといえる。
しかし米長期債利回りは依然として高止まりにある。1.60%を超えた水準では利回り確保の債券買いも出て上昇を抑えている印象もあるが、米連銀による長期債利回り上昇容認姿勢を踏まえればまだ天井感には遠く、米連銀が目標としているインフレ率の2%達成と維持へ向けて金融緩和が維持されれば、米10年債利回りも2%超えを目指す可能性も考えられる。ひとまず14円割れから戻したトルコリラ円も、米長期債利回り再上昇とドル高再開の流れが顕著になればもう一段安へと進みかねないところと思われる。
【3月10日夕刻、トルコ失業率発表予定】
トルコ政府は3月9日の官報で、レイオフ禁止の大統領令を3月17日から2か月間延長すると発表した。新型コロナウイルス感染拡大による失業対策としてトルコ政府は雇用確保のために企業のレイオフ禁止令を発動したが、この禁止令では2021年半ばまでの間はエルドアン大統領は期限ごとに最大3か月間の延長をすることができる。
トルコの2020年10-12月期の失業率は12.9%へ上昇しており、3月10日発表される11-1月期の失業率についての市場予想は14%への上昇となっている。失業率上昇を想定して先手を打つ形でレイオフ禁止の延長を決めたのだろうと思われる。
【トルコの証取CEO解任と米土関係】
3月8日にトルコ政府系ファンドのトルコ・ウェルス・ファンド(TWF)のCEOとイスタンブール証券取引所のアッティラCEOが辞任した。証取CEOなどはエルドアン大統領の娘婿であるアルバイラク前財務相が任命したものだが、アティッラ氏は米国による対イラン制裁に違反する罪で服役したことがあり、トルコ政府としてバイデン米政権に配慮した更迭とみられている。
トルコはロシア製地対空ミサイルシステムの導入等を巡って米国との関係が悪化しており、トランプ政権時代はエルドアン大統領との良好な関係もあって緩い制裁にとどまっていたが、バイデン大統領は以前にエルドアン大統領を独裁者呼ばわりしており、今後の両国関係の緊張も懸念されている。
ロシア系通信社の報道では、米国がトルコ製攻撃型ヘリコプターATAK30機の供給を阻止しているという。パキスタンへの供給については1回の兵器輸出としてはトルコ史上最大の案件で総額は15億ドルとされるが、米国によるトルコ制裁で米国がエンジン輸出のライセンスをトルコに与えなかったことで契約履行できず、トルコは自国産エンジン開発を行っているが輸出に至っていない。今後のバイデン政権によるトルコへの外交姿勢にも引き続き注意がいるところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、14.20円を下値支持線とした持ち合いから下放れしたために3月9日午前時点では3月5日早朝安値を直近のサイクルボトム、5日夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとした。また安値形成期は10日早朝から12日朝にかけての間と想定されるので14.20円を下回る推移のうちは一段安警戒を優先するとしたが、14.20円超えからは強気転換注意とした。
3月10日午前序盤時点では14.30円超えには至っていないものの3月9日未明安値からの反騰が続いているため、3月9日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は10日夜から12日夜にかけての間と想定し、14.15円以上での推移中は上昇余地ありとするが、14.10円割れからは弱気転換注意とし、14円割れからは新たな弱気サイクル入りとして11日深夜から16日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3月10日午前への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。弱気転換は先行スパン転落からとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は9日夜の反騰時に60ポイントを超え、その後も50ポイント割れを切り返しているので上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを目指す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、14.10円を下値支持線、14.30円を上値抵抗線とする。
(2)14.10円以上での推移中は上昇余地ありとし、14.30円超えからは14.40円前後への上昇を想定する。14.40円以上は反落注意とするが、14.20円以上での推移が続くなら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)14.10円割れからは弱気転換注意とし、14.00円割れからは新たな下落期入りとみて13.80円台への下落を想定する。13.90円以下はいったん買い戻しも入りやすいとみるが14.00円を割り込んだ後も14.10円以下での推移なら11日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3月10日
16:00 12月 失業率 (11月 12.9%、予想 14.0%)
3月11日
16:00 1月 経常収支 (12月 -32.1億ドル、予想 16.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3/5時点 (2/26 545億ドル)
3月12日
16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 9.0%、予想 8.5%)
16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.3%)
16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 0.6%、予想 2.3%)
16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 -4.2%、予想 3.4%)
3月15日
17:00 2月 財政収支 (1月 -241.5億リラ)
3月18日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 17.0%、予想 17.0%)
注:ポイント要約は編集部
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