米長期債利回り低下でドル安、ドル円は108円台前半へ下げた後は確り
〇ドル円、9日午前高値109.23に到達、昨年6月以来の109円台
〇9日夕刻からユーロドルが反騰、米長期債利回りの上昇一服感から新興国通貨も買い戻される
〇NYダウは史上最高値を更新、前日比30.30ドル高、ナスダック総合指数は464.66ポイント高と大幅反騰
〇108.40割れを回避するうちは上昇再開余地あり、108.80超えから109.23試しへ
〇108.40割れから108円前後試し、108円以下は反騰注意
【概況】
ドル円は3月9日午前高値で109.23円に到達、昨年6月5日高値109.84円以来の109円台到達となり、1月6日安値102.57円からの上昇幅は6.66円に拡大、昨年3月24日高値111.71円から今年1月6日安値までの下げ幅9.14円に対して72.8%の戻りとなった。
しかしドル円の上昇を支えてきた米長期債利回りが低下、NYダウが取引時間中の史上最高値を更新してナスダックも前日比3%を超える上昇となる中、9日午前まで下げていたユーロドルが売られ過ぎ警戒感から買い戻しに入り、米長期債利回り低下と株高を見て主要通貨も買い戻しの動きに入ったことでドル円は上昇一服感で利益確定売りに押される展開となって10日早朝には108.40円まで下げた。しかし10日午前は108.50円を超えて持ち直しの気配となっている。
【ドル高と米長期債利回り上昇の一服】
3月9日夕刻からユーロドルが反騰したことと米長期債利回りの上昇一服感からこれまで下げてきたポンド、豪ドル、新興国通貨が総じて買い戻しに動いた。
9日夜は米国の主要経済指標の発表はなく、夕刻の欧州関連統計では1月の独貿易収支やユーロ圏GDP確定値の発表があったもののいずれも市場予想を下回っており、それよりも米10年債利回りが昼にかけて低下に転じたことが影響したと思われる。米10年債利回りは3月5日に1.62%へ上昇して2月25日の急伸時における1.61%を超えて昨年8月以降の最高水準に達したが、週明けの8日はやや下げて1.60%を挟んだ揉み合いとなり、10日は1.52%までいったん低下して前日比0.06%低下の1.53%となった。米30年債利回りも0.08%低下の2.24%となり3月4日と3月8日付けた2.32%からいったん低下した印象となった。
米10年債利回りも1.60%を超えたところでは利回り益確保で債券買いされやすい状況という印象だが、10年債利回りは2月25日に急伸した時の終値1.53%とさほど変わりない高水準にある。米連銀のパウエル議長や主要地区連銀総裁や理事などの発言を踏まえれば、米連銀はインフレ目標が2%を継続的に超えるまでは現行の実質ゼロ金利と拡大した量的緩和政策を継続し、最近の長期債利回り上昇は景気回復を反映したもの=米連銀の金融政策の正当性を示すものとの解釈であり、短期債売り・長期債買い等による長期債利回り抑制方針をとろうとする姿勢が見られないので、米長期債利回りの昨年8月からの上昇が一巡したとみるのは時期早々と思われ、長期債利回りが高止まりで確りし始めて再び上昇し始める場合はドル高もぶり返しやすい状況と思われる。
3月9日のNYダウは取引時間中の史上最高値を更新し、前日比30.30ドル高で終了。米長期債利回り上昇を嫌ってNYダウと比較して大きく下げていたナスダック総合指数は長期債利回り低下を見て464.66ポイント高(3.69%高)と大幅反騰した。これらは株高によるリスク選好感の回復としてドル安に寄与したが、ユーロドルなどの上昇は深夜以降は勢いが鈍っている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月23日午前安値を起点とした強気サイクルの連続としてきたが、3月5日朝へ一段高して2月26日高値からも5日目に入ったために3月5日午前時点では3月3日朝安値を起点とした強気サイクル入りとして高値形成期を5日夜から9日夜にかけての間へ延長した。 3月8日深夜へ一段高した後も高値圏を維持していたため、9日午前時点では3月5日夜高値から三角持ち合いを形成してから一段高していたため、3月8日午後の三角持ち合い終点を起点として新たな上昇期に入っているとした。
3月9日午前高値から0.80円を超える反落となったため、9日午前高値を直近のサイクルトップとした下落期入りとする。8日午後安値を起点とすれば安値形成期は11日午前から15日午前にかけての間と想定されるが、3月3日午前安値から5日目となる3月10日早朝安値でボトムを付けて反騰入りする可能性もあるとみる。このため、10日早朝安値108.40円を割り込む場合は10日午後から12日、さらに週明けへの下落継続となる可能性があるとしつつ、108.80円超えからは上昇再開の可能性ありとし、9日午前高値109.23円超えからは新たな強気サイクル入りとして12日午前から16日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では3月9日深夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンへ潜りこんでいる。先行スパンを上抜き返す反騰からは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちは先行スパン転落から下落継続として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月5日高値形成期に85ポイントへ上昇、いったん60ポイント割れまで低下してから9日午前高値形成時に85ポイントまで再び上昇したが、相場の高値更新に対して指数のピークがフラットな弱気逆行となった。このため50ポイント台回復へ戻せないうちは一段安余地ありとするが、50ポイント超えから続伸に入る場合は逆行からの調整を消化しての上昇再開とみて再び70ポイント超えを目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.40円を下値支持線、109.23円を上値抵抗線とする。
(2)108.40円割れを回避するうちは上昇再開余地ありとし、108.80円超えからは109.23円試しへ向かうとみる。109円前後は戻り売りも出やすいとみるが、米長期債利回り再上昇とドル高再開の流れとなれば109.23円超えから109円台中後半を目指す流れへ進むとみる。また108.80円以上での推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)108.40円割れからは108円前後試しへ向かうとみる。108円以下は反騰注意とするが、米長期債利回りが一段と低下する場合は107円台後半へ突っ込む可能性もあると注意する。108.40円以下での推移なら11日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/10(水)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 -0.3%、予想 -0.3%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 0.3%、予想 1.5%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.7%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.4%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
27:00 (米) 米財務省10年債入札
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -1628億ドル)
3/11(木)
08:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.5%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 -1.6%、予想 -0.7%)
09:01 (英) 2月 英RICS住宅価格指数 (1月 50)
21:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルドECB総裁、定例記者会見
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 74.5万件、予想 72.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 「前週 429.5万人、予想 419.1万人)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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