ドル円見通し 2月23日からの上昇もいったん調整局面(21/3/11)

ドル円は昨夜108.32円まで下落して10日早朝安値を割り込み、3月9日午前高値からの下落が二段下げとなった。

ドル円見通し 2月23日からの上昇もいったん調整局面(21/3/11)

2月23日からの上昇もいったん調整局面

〇ドル円、9日午前高値から二段下げ、上昇の流れもいったん調整局面入り
〇NYダウは前日比464.28ドル高、ナスダック総合指数は4.99ポイント安と小幅下落
〇1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案は3/12に成立する見込み
〇米10年債利回り、10日に一時1.56%まで上昇後取引終盤に1.52%まで再び低下
〇ECB3/11に定例理事会、長期債利回りへの受け止めと対策姿勢などに注目
〇108円割れから続落に入る場合は107.75前後へ下値目途を引き下げ
〇10日午後高値108.91超えからは上昇再開とみて9日午前高値109.23試し

【概況】

ドル円は3月9日午前高値で109.23円を付けてから10日早朝安値108.40円まで下落、10日午後には108.91円まで戻したものの109円台回復には至らず、10日夜は米長期債利回り上昇一服、米消費者物価コア指数の上昇率が予想を下回ったこと、NYダウの史上最高値更新によるリスク選好感回復で主要通貨が持ち直してドル高感も一服したために深夜に108.32円まで下落して10日早朝安値を割り込み、3月9日午前高値からの下落が二段下げとなった。その後も108.50円以下での推移にとどまっており、2月23日安値104.91円から一本調子で上昇してきた流れもいったん調整局面入りとなった可能性がある。

1月6日安値からの上昇局面では、2月5日高値105.76円から2月10日安値104.40円までの下落幅が1.36円、2月17日高値106.21円から2月23日安値104.91円への下げ幅が1.30円であった。今回もそれらと同様の規模とすれば108円を若干割り込むあたりが押し目形成水準と思われるが、既に上昇も2か月を経過した後のため、それらよりもやや深い調整安に入る可能性もあるところと注意したい。

【NYダウ最高値更新、米消費者物価コア指数の伸び鈍化でインフレ進行懸念も一服】

NYダウは3月10日に前日比464.28ドル高(1.46%高)と上昇、取引時間中及び終値ベースの史上最高値を更新した。SP500指数も23.37ポイント高(0.60%高)となったが、米長期債利回りが高止まりしていることでハイテク株中心のナスダック総合指数は4.99ポイント安と小幅下落した。
米議会下院は1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案を可決、バイデン大統領の署名を経て3月12日に成立する見込みとなった。感染増加ペースが大幅に鈍化していることでの経済活動の回復感と合わせて株高要因となっている
米10年債利回りは3月5日に1.62%へ上昇して2月25日の1.61%を超えて昨年8月以降の最高水準となったが、3月8日には1.52%へ低下、10日は一時1.56%まで上昇したものの取引終盤には1.52%まで再び低下した。3月10日は米10年債の380億ドルの入札があったが、応札倍率は2.38倍で平均の2.41倍を下回ってやや低調な印象だったものの、最高落札利回りは1.523%だった。

米労働省が発表した2月の消費者物価指数は前月比0.4%上昇で1月の0.3%上昇から伸びが加速したものの市場予想と一致した。前年同月比は1.7%上昇で1月の1.4%上昇から伸びが加速したが市場予想と一致した。エネルギーと食料品を除いたコア指数は前月比0.1%上昇で1月の0.0%を上回ったが市場予想の0.2%上昇を下回った。また前年同月比は1.3%上昇で1月の1.4%から低下、市場予想の1.4%を下回った。
コア指数の伸びが予想を下回ったことでインフレ加速感への過度な警戒感が後退したと市場は受け止めたようだが、原油相場の上昇もあって全体の物価上昇率はやや加速している印象であり、米10年債利回りを上回っていることは米10年債利回りが消費者物価上昇率を追いかけて上昇してゆくことへの懸念も続くと思われる。米10年債利回りの急上昇は一服ではあるが、2月25日に1.61%へ上昇後に1.40%割れまでいったん低下してから再上昇したことを踏まえれば、現状の1.50%台序盤までで高止まりすれば、次の上昇で3月5日の水準を超えてゆくことも考えられる。

【ECB理事会、長期金利上昇への評価に注目】

ECBは3月11日に定例理事会を開く。米長期債利回り上昇に影響されてユーロ圏の長期債利回りも上昇しており、ECBとしての受け止めと対策姿勢などが注目される。ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)により資金供給を行っているが、理事会メンバーの長期債利回り上昇に対する受け止め方は必ずしも一致していない印象もある。ECBのパネッタ理事は3月2日に「最近の金利上昇は歓迎できず対抗すべき」と述べたたが、ドイツ中銀のワイトマン総裁は3月3日に「懸念すべき動きというほどではないが注視する必要があり、PEPPの規模を調整する用意はできている」とし、「根拠のない金融環境の引き締まりに対処できる」と述べた。
ラカルド総裁が長期債利回り上昇への懸念や抑制姿勢を示すようなら米連銀の長期債利回り上昇容認姿勢との差からユーロ安ドル高となる可能性もあり、逆にユーロ圏の長期債利回り上昇抑制姿勢が景気回復を支援するものとしてユーロ高反応となるケースもあり得るところで、市場がどう反応するのか注目したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月3日午前安値から5日目となる3月10日早朝安値でいったん底を付けて戻したものの底割れしたため、10日午後の戻り高値をピークとして下落期に入った可能性がある。このため10日午後高値を上抜けないうちは13日朝から17日朝にかけての間への下落余地ありとみる。強気転換は10日午後高値超えからとし、その場合は3月9日午前高値を基準として12日午前から16日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では3月10日夜の下落で先行スパンから転落しているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。10日午後高値を上抜くところからは先行スパン突破も重なるので上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月5日高値形成期に85ポイントへ上昇、いったん60ポイント割れまで低下してから9日午前高値形成時に85ポイントまで再び上昇したが、相場の高値更新に対して指数のピークがフラットな弱気逆行となり10日早朝には40ポイント割れへ低下した。その後も50ポイントを超えたところでは戻り売りにつかまっているため、上昇再開は60ポイント超えからとし、60ポイント以下での推移中は一段安余地ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.00円を下値支持線、10日午後高値108.91円を上値抵抗線とする。
(2)10日午後高値を上抜けないうちは一段安余地ありとみる。108円前後は押し目買いされやすいとみるが、108円割れから続落に入る場合は107.75円前後へ下値目途を引き下げる。また108.40円以下での推移なら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)10日午後高値超えからは上昇再開とみて3月9日午前高値109.23円試しとし、さらに超える場合は109円台中後半を目指す上昇期に入るとみる。また10日午後高値を超えた後も108.40円以上での推移なら12日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/11(木)
21:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルドECB総裁、定例記者会見
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 74.5万件、予想 72.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 「前週 429.5万人、予想 422.0万人)

3/12(金)
08:50 (日) 1-3月期 大企業・全産業業況判断指数 (10-12月 11.6)
08:50 (日) 1-3月期 大企業・製造業業況判断指数 (10-12月 21.6)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 1.2%、予想 -4.9%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 0.2%、予想 -0.6%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -3.3%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.8%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -143.15億ポンド、予想 -125.01億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -62.02億ポンド、予想 -45.63億ポンド)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)

19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -0.8%、予想 -2.1%)
22:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 1.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 2.7%)
22:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 1.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.0%、予想 2.6%)
24:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (2月 76.8、予想 78.0)

注:ポイント要約は編集部

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