勢いは弱まるもののユーロ安継続か
〇先週のユーロ、ドル全面高の中で1.20、1.19と大台を変え昨年11月以来の安値に
〇米金利だけでなく欧州の金利も大きく上昇し懸念材料に、今週のECB理事会での議論に注目
〇米金利上昇がユーロ安を牽引していく可能性
〇今週は1.1850レベルをサポートに1.1950レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、ドル全面高の動きの中で1.20、1.19と大台を変え昨年11月以来の安値をつけました。週前半はドル円同様に上値が重たい(ドルは底堅い)もののもみあいとなっていましたが、水曜以降はいったん落ち着いていた米金利が再上昇し5日には1.626%と2月の利回りを上抜けることとなりました。
現在の為替市場は各国の材料や株式市場の動きはあまり参考にせず、米国10年債市場の利回りしか見ていない状態ですが、ドル円の週報にも書いた通りで米金利だけでなく、欧州の金利も大きく上昇してきたことで、ECB関係者は対応すると発言しながらも有効な手段が無いとも発言し、ユーロの水準は懸念材料から外れてきた中で、今度は金利上昇が懸念材料となってきました。今週のECB理事会においてこの金利について、どのような議論がなされるのかは今週最大の注目材料となるでしょう。
ドル円週報と同様に金利(10年債利回り)の日足チャートを出しておきます。こちらは上から米金利、ドイツ金利、米独金利差となっています。
中段のドイツ金利を見ると2月の1か月だけで−0.526%から−0.227%へとほぼ0.3%もの上昇を見ています。米金利とは水準がまったく異なるため、短期間でここまでの上昇はECB関係者も注視しているであろうことは間違いありません。
日銀は黒田総裁が変動幅拡大は考えていないとしたことからイールドカーブコントロール強化という可能性はありますが、米国も欧州も長期金利は金融政策のターゲットとはしていないことから、懸念を示す一方で有効打が無いといった先週の発言につながりますが、今週のECB理事会において理事会としてどう考えているのか、今後のユーロドルの方向性を考える上でもラガルド総裁の発言は要注意です。
他には目立った材料がありませんので、テクニカルにも見ていきましょう。ユーロドルの日足チャートをご覧ください。
1月高値からの下げで2月にフラッグ(ピンクの平行ライン)の調整を挟み、先週のユーロ売りでフラッグのサポートを下抜けと、典型的なコンティニュエイション(継続)パターンとなってきました。そうなると高値からの下降N波動におけるフィボナッチ・エクスパンションにおいて100%エクスパンションとなる1.1846を当面のターゲットとする展開となります。
ただ11月安値と1月高値との61.8%押しが1.1887となっていることから、先週金曜の安値はいったん下げ止まりやすい水準でもありました。ECB理事会まではもみあいとなりやすく調整を挟んでのユーロ一段安という動きであればチャート的にはきれいなのですが、そうだとすると、引き続き米金利上昇がユーロ安を牽引していくということなのかもしれません。欧州金利も動いてはいますが、当面は米金利だけ見ていればよいという状況が続きそうです。
今週は中心レンジとして1.1850レベルをサポートに1.1950レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円の日足チャートを見てみます。
ドル高トレンドの動きの中で、ドル円における円安の動きがクロス円全般でも見られることからユーロ円も上昇トレンドが続いています。2月以降は上昇ペースを上げてきていますが、130円の大台目前で反落したことから現状は高値圏でのもみあいとなっています。
ピンクの細いラインで示した最近の部分でペナント状のもみあいとなっていますので、このラインを抜けた方向に動きやすい状況です。上抜けの場合は130円の大台乗せ、下抜けの場合には昨年10月からのサポート(ピンクの太線)を目指す展開となりそうです。ユーロ円も動きが出てくるのはECB理事会の結果を見てからになりそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
3月8日(月)
16:00 ドイツ1月鉱工業生産
19:30 英中銀総裁講演
3月9日(火)
09:01 英国2月小売売上高
16:00 ドイツ1月貿易収支
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
3月10日(水)
16:45 フランス1月鉱工業生産
3月11日(木)
09:01 英国2月住宅価格
21:45 ECB理事会
22:30 ラガルドECB総裁会見
3月12日(金)
16:00 英国1月貿易収支、鉱工業生産
16:00 ドイツ2月CPI
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
3月14日(日)
**:** 米国夏時間開始
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月1日(月)
月初のユーロドルもドル円同様にドル高トレンドを継続し、1.2028レベルまで水準を下げました。NY市場ではフランス中銀総裁が欧州の金利上昇に懸念を示し、ECBが対応する必要があると発言したこともユーロの上値を抑える結果となりました。
3月2日(火)
ユーロドルは前日の欧州金利上昇に対する懸念発言が影響し、ユーロ売りが継続しました。欧州市場序盤には弱い経済指標も手伝って一時1.1992レベルと1.20の大台割れを示現。しかし大台割れではユーロ買いも見られ自律反転する中で米金利低下と実需のユーロ買いも加わって短期筋がふみ上げ1.2094レベルへと上伸、高値引けとなりました。
3月3日(水)
ユーロドルは東京市場では全く動かず、欧州市場に入ってからECB関係者が長期金利上昇に対処する当面の手段が無いと発言したことを受け、一時的にユーロ買いの動きが見られました。しかし米金利上昇の動きに押されてNY朝方には1.2043レベルへと下押しし、その後も上値が重たい動きのままでの引けとなりました。
3月4日(木)
ユーロドルは東京市場では動きが鈍かったものの欧州市場に入りドル円でのドル買いに引っ張られてのユーロ売り。ユーロ円の買いも出ていたことから基本的にもみあいとなっていましたが、NY市場の米金利上昇ではユーロドルがリードしてのドル買いとなり、ユーロドルは週間安値を更新し1.1962レベルの安値をつけて安値引けとなりました。
3月5日(金)
ユーロドルは東京市場ではドル円でのドル買いに引っ張られてユーロ安となっていましたが、ユーロ円の買いも出ていたため緩やかな下げに留まっていました。欧州市場に入り序盤は欧州株の下げがユーロ安材料とされたものの、株安が収まるとユーロ安も一段落。雇用統計を前にいったん買い戻しが入りましたが、予想より強い数字に改めてドル買いとなり1.1893レベルまで下落後に若干戻しての週末クローズとなりました。
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