ドル円の上昇継続に支えられるも全般ドル高に圧され気味で一段安へ余裕乏しい
〇トルコリラ円、14.50前後で売られる狭いレンジの持合いで週を終える
〇対ドルでは5日に7.57まで下落し1日以降の安値を更新
〇11月以降の対ドルでのトルコリラ高は全般的なドル安基調を背景に上昇
〇1/6にドル円が底打ちし上昇基調に乗ったことでトルコリラ円を押し上げてきたがドルは全面高の様相へ
〇米長期債利回りの上昇がトルコの10年債利回り水準にとってドル高要因に
〇14.60以下で推移か超えても維持できない場合は一段安警戒、14.20割れから14.16試しへ向かうとみる
〇13.60超えからは13.77試し、13.65から13.77手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすい
【概況】
トルコリラ円は11月6日の史上最安値12.03円から反騰に転じて2月16日には15.26円の高値を付けたが、その後は伸びずに2月18日のトルコ中銀金融政策決定会合での政策金利現状維持発表後の上昇も2月16日とのダブルトップ形成にとどまり、2月18日当日から2月26日まで日足は7日連続の陰線で下落となり2月26日には14.16円まで下げた。
トルコリラ買いの独自材料が一巡して上値が重くなる中で2月25日夜から27日早朝にかけて米長期債利回りの上昇を嫌気してドル全面高となったことでドル高リラ安が進んだためだ。その後はドル高一服とドル円の上昇継続によりトルコリラ円は新たな安値更新を回避しつつ3月1日には14.77円までいったん戻したが勢いは続かず、3月5日には対ドルでのトルコリラが3月1日以降の安値を更新する場面で14.20円まで下落するなど上値の重い状況となっている。3月4日から6日早朝にかけては14.20円を支持線、14.50円前後では売られる狭いレンジの持ち合いで週を終えた。
【米連銀による米長期債利回り上昇容認でのドル高継続感】
トルコリラ円は2月26日安値14.16円割れを回避して下げ渋りだが、対ドルでのトルコリラは3月5日に7.57リラまで下落して3月1日以降の安値を更新している。
昨年3月のコロナショック暴落から早々に立ち直ってNYダウが史上最高値更新へと進む中でユーロやポンド、豪ドル及び新興国通貨は株高からのリスク選好感を優先して大上昇してきた。トルコリラは外貨不足や金融政策への不満を背景に史上最安値を更新する独歩安の状況が続いていたが、11月7日の中銀総裁更迭から落ち着き、それまでの悲観し過ぎの反動と主要通貨の上昇基調に同調して反騰入りしてきた。このため11月以降の対ドルでのトルコリラ高は全般的なドル安基調を背景とした上昇といえる。またドル円が1月6日に底打ちしてから上昇基調に乗ったことがトルコリラ円を押し上げてきたといえる。
しかし、ここにきてドルは全面高の様相となりつつある。3月5日未明のパウエル米連銀議長の講演で長期債利回り上昇を抑制しようとする姿勢が見られなかったこと、議長講演を前後する米連銀当局者の発言もコロナショック前の水準と比較すれば低く抑制へ動き必要もない範囲との姿勢が相次いだ。
米10年債利回りは3月のコロナショック時における米連銀のゼロ金利と大規模な量的緩和発動により0.31%まで低下した。コロナショック前は2019年11月の1.97%をピークに1.80%を挟んだ水準で推移していたため、現状はまだ昨年2月から急落からし始めたところの水準まで戻したに過ぎない。このため米連銀が目標とする物価上昇率の継続的な2%超えと共に米10年債利回りは2%を超えてさらに上昇する定な局面に入らなければ米連銀としては動かないということになるのだろう。
米長期債利回りの上昇は、本来なら高金利通貨であるトルコリラには大きな影響を与えないものだが、トルコの10年債利回りは3月5日時点13.44%と高水準だが、トルコの2月消費者物価指数の前年同月比は15.61%でありトルコの10年債利回りを上回っているため、実質的にはマイナス金利状態といえる。このため米長期債利回り上昇は名目的なトルコの10年債利回り水準にとってはドル高要因であり、米10年債利回りがさらに上昇するようだとトルコリラも中銀が何等かの金融政策上の防衛策をとらないと下げ足を速めかねないと思われる。
【当面のポイント】
2月16日と2月18日のダブルトップ以降の下落は既に11月19日高値13.85円から11月24日安値12.91円までの反落時を超える規模となっている。11月19日高値と2月16日高値を結ぶ上値抵抗線との平行線を11月6日安値から描けば平行となる下値支持線は現在14円前後に来ている。
日足における一目均衡表では遅行スパンが悪化しつつあり、悪化を回避するには現状から急騰する必要があるため、当面は悪化による下落圧力を受けやすいと思われる。また先行スパンの下限が上記の下値支持線とほぼ一致している。
日足のMACDは2月22日からDクロスに入っている。相対力指数は2月5日から2月16日への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せている。
これらを踏まえれば2月26日安値14.16円を割り込むところからはそのまま14円試しへ向かい、14円割れからは先安感がさらに強まりかねず、強気転換には3月1日の戻り高値14.77円を超える反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、2月26日安値14.16円を下値支持線、3月1日高値14.77円を上値抵抗線とみる。
(2)14.60円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、14.20円割れからは14.16円試しへ向かうとみる。14.16円割れからは14円試し、さらに下げ足が早まる場合は1月18日安値13.73円を目指す流れとみる。
(3)13.60円超えからは13.77円試しとするが、13.65円から13.77円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な予定】
3月10日
16:00 12月 失業率 (11月 12.9%、予想 14.0%)
3月11日
16:00 1月 経常収支 (12月 -32.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3/5時点 (2/26 545億ドル)
3月12日
16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 9.0%、予想 8.5%)
16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.3%)
16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 0.6%、予想 2.3%)
16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 -4.2%、予想 3.4%)
3月15日
17:00 2月 財政収支 (1月 -241.5億リラ)
3月18日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 17.0%、予想 17.0%)
注:ポイント要約は編集部
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