ドル高リスク継続も、「総強気」には要注意(週報3月第2週)

先週のドル/円相場はドルが一段高。ザックリ言って「寄り付き安・大引け高」の展開であり、週間の上昇幅は一時2円を超えていた。

ドル高リスク継続も、「総強気」には要注意(週報3月第2週)

ドル高リスク継続も、「総強気」には要注意

〇先週のドル円、ドルが一段高で週間の上昇幅が一時2円を超える
〇中国国防省「尖閣の領海侵入は今後も進めていく」とし、対日圧力の強化を示す
〇5日開始の中国全人代において李首相が米国との融和を望む旨のコメントを発する
〇パウエルFRB議長が早期の利上げ観測に否定的な見解、慎重姿勢崩さず
〇日経新聞「ドルの先高観強まる、年内に110円台も」と報じる
〇今週は、2月消費者物価指数や3月ミシガン大消費者信頼感指数速報値などの米経済指標が発表予定
〇本日欧米時間のドル/円予想レンジ107.00-109.50

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが一段高。ザックリ言って「寄り付き安・大引け高」の展開であり、週間の上昇幅は一時2円を超えていた。

前週末、NZのアーダーン首相が、新型コロナの感染拡大を理由に、同国最大都市である「オークランドに再びロックダウン」を発令。また、ミャンマーやイランなどをはじめとする様々な国際情勢が波乱要因として取り沙汰されていた。
そうした状況下、ドル/円は106円半ばで寄り付いたのち106.36円まで小緩む。しかし、同レベルが週間安値となり、以降ドルは週末にかけて緩やかな右肩上がりをたどっている。107円前後など上方向のレジスタンスを次々に上抜けると、ついには昨年6月以来の高値である108.64円へ。ただ、最終盤にかけては、やや調整の動きも観測されると、週末NYでは若干軟化した108.35-40円で越週となった。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「中国情勢」と「米国情勢」について。
前者について、中国国防省が「尖閣の領海侵入は通常活動、今後も進めていく」などとし、対日圧力の強化が改めて示されるなか、中国外務省も「肛門PCR検査は科学的」とし日本の中止要請を一蹴したことが明らかに。それに対して、米商務長官から人権問題などを例に挙げ「中国に責任を問う」との発言が聞かれた反面、5日から始まった中国全人代において、李首相は「平等と相互尊重に基づき、相互に有益な米中経済関係の発展を促す」とし、米国との融和を望む旨のコメントが発せられていたという。

対して後者は、1.9兆ドルにも達するコロナ追加対策法案が一部修正されたうえ、3月中旬の成立となる公算大と報じられたことなどが株価の支援要因に。また、一部指標の悪化で懸念された米雇用情勢だったが、週末に発表された2月の雇用統計は逆に好数字。改めて安心感を醸す一因となっていたようだ。しかし、パウエルFRB議長は講演で改めて「政策スタンスは適切」としたうえで、早期の利上げ観測に否定的な見解を示すなど慎重姿勢は崩さず。今後は、実勢相場における金利高や経済指標改善との整合性、あるいは連関性が問われる可能性もありそうだ。

<< 今週の見通し >>

前述したように、先週のドル/円相場はザックリ言って「寄り付き安・大引け高」。上方向の抵抗を次々と上抜け、週間の上昇幅は一時2円を超えている。リスクという点では上方向のバイアスがかかりそうだが、気になるのは市場に蔓延し始めたドルの「総強気」とも言える雰囲気だ。たとえば、6日の日経新聞は「ドルの先高観強まる、年内に110円台も」−−などと報じていた。相場格言にある「もうはまだなり、まだはもうなり」ではないが、多くの参加者が同じ方向へと傾くと相場は逆に最終局面に達していることも少なくなく、注意が必要かもしれない。

一方、ドル/円の上昇については、「米金利の上昇」といった米国ファクターも取り沙汰されるが、それとは別に一部クロスで積極的な円売りが進行したという点も見逃せない。たとえば、カナダ/円は連日のような右肩上がりだった。こうした動きがいわゆる「日本売り」。コロナのワクチン接種やクリーンエネルギー政策で遅れをとるほか、東京五輪・パラリンピックをめぐるゴタゴタなど世界の潮流から取り残される懸念が嫌気されているとの指摘も聞かれており、その真偽が気掛かりだ。日本政府の前向きな対応が期待されている。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は先週末108円台まで上伸。基本的なリスクはドル高方向で間違いないだろう。フィボナッチの観点では、昨年6月高値109.85円を起点とした下げ幅の76.4%戻し(108.15円)もしっかり超えており、次なるターゲットは100%戻し。つまり109.85円で、ヒョッとすると110円に迫る値動きをたどっても不思議はないようだ。ただ、起点を年初と考えても、大きな調整らしい調整がないまま、ここまで2ヵ月もドル高が進行していることで、さすがに高値警戒感を口にする向きもチラホラ観測されはじめている。

材料的に見た場合、中長期的には領有権をめぐる周辺国との対立や人権問題など話題に事欠かない「中国情勢」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「トルコ情勢」、「新型コロナウイルス再拡大と変異種の発生、ワクチン開発・接種」、「バイデン米大統領による政権運営」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、2月の消費者物価指数や3月のミシガン大消費者信頼感指数速報値といった米経済指標が発表される予定となっているほか、米財務省による3年債や10年債の入札が実施される見込み。また、ECBによる政策金利発表など、米国以外の要因にも一応要注意か。

そんな今週のドル/円予想レンジは、107.00-109.50円。ドル高・円安については、先週高値108.64円が取り敢えずの抵抗で、抜ければ109円台回復が意識されそうだ。上方向のストップロスを連続で巻き込めば109.85円をうかがう展開も。
対するドル安・円高方向は、連日のようにドルは下値を切り上げる値動きをたどったことで、まずは先週末安値の107.82円がサポートか。下回っても底堅そうだが、本格的な調整が入れば、週末にかけ106円半ば近くまで上昇すると予想される移動平均の21日線をメドに下げる可能性もなくはない。

ドル高リスク継続も、「総強気」には要注意

ドル円日足


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