トルコリラ円見通し 15円台を維持しての高値圏持ち合い、買い材料もある程度消化
〇トルコリラ円、2/16に15.26まで上昇したが新たな高値更新ならず、15円台序盤での揉み合いで越週
〇対ドル、2/16に6.88まで上昇したが、6.94から7.00の範囲で様子見の揉み合いとなる
〇トルコ中銀、2会合連続で政策金利維持を決定
〇外貨準備高は改善しているが、最重要産業である観光収入の落ち込みがトルコ経済の足かせか
〇今週以降主要経済指標発表続く、結果次第ではもう一段高へ進む可能性も
〇15.26超えからは上放れとして、15.30から15.40を目指す流れとみる
〇15円割れから続落の場合は、調整安に入ったとみて14.90前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は2月16日に15.26円まで上昇して11月6日以降の最高値を更新したが、2月18日のトルコ中銀金融政策発表時に同値を付けたものの新たな高値更新へは進めず。19日夕刻に15.07円まで下げたところでは買い戻されたが、19日深夜高値は15.18円にとどまり15円台序盤での揉み合いのまま先週を終えた。
15円台到達は昨年8月以来6か月振りの水準である。
対ドルでのトルコリラは2月16日に6.88リラまで上昇して11月6日以降の高値を更新したが、その後は上昇一服、2月17日に7.02ドルまでいったん下げた後2月18日に6.91リラまで戻してからは6.94リラから7.00リラまでの範囲で様子見の揉み合いとなった。
週間では1.04%の上昇で12月13日の週から4週連続上昇、1週調整後に1月17日の週から先週まで5週連続の上昇となっている。
【中銀は2会合連続で政策金利を維持、引き締めによるリラ高も一服】
11月6日までは外貨準備高不足、インフレ進行により物価上昇率が政策金利を上回るマイナス金利状態への転落、中銀及び政府による経済金融政策への不信、地政学的リスク等を背景に史上最安値を連日にわたって更新する通貨危機的な状況にあったが、11月7日の中銀総裁更迭をきっかけに金融政策の正常化への期待から持ち直し、新総裁による2会合連続の大幅利上げでマイナス金利状態から脱出したことで上昇基調を継続した。為替市場全般がリスク選好的な展開で新興国通貨の上昇が続く中、トルコリラも独歩安から逃れてその流れに乗る事ができた。
トルコ中銀行2月18日の金融政策決定会合で、主要政策金利の1週間物レポレートを市場予想通り17%に据え置いた。据え置きは2会合連続だが、15%近くに上昇しているインフレ率の抑制のために必要なら追加利上げもありうるとし、「物価上昇率が今後3年間で目標の5%まで低下するまでは金融政策を引き締めて強力なディスインフレ効果を生み出す」と強調した。当面は物価上昇率を見ながら、政策金利を超える物価上昇率となる場合には利上げも予想されるが、政策金利を下回る水準で落ち着けば現状の高水準に維持されてゆくと市場は見ており、物価が落ち着いて利下げ可能となるのは第3四半期以降と予想されている。
【外貨準備高は改善】
トルコの外貨準備高(公式グロス)は週次の直近統計で2月12日時点で537.2億ドルと発表されている。月次統計は12月までで484.61億ドルだったところから増えており、最も低下していた2020年9月時点の363.26億ドルからかなり改善してきた。
一方で金準備を含めて外貨準備高総計は2020年9月時点で796.8億ドルだったところからは12月には9325.77億ドルへ改善している。リラ反騰時に外貨準備を適切に増やしていることとリラ高により評価が上がっていることによるものと思われるが、一時の外貨準備高不足を突いた外資系のリラ売りも仕掛け難い状況に持ち直しつつあると思われる。ただし、あくまでも脆弱な状況にあり、最重要産業である観光収入がコロナ渦で伸びないことが足かせだ。
【40週サイクルによる上昇期として16週を経過】
中銀新総裁による大胆な利上げ効果がトルコリラの上昇を後押ししてきたのだが、15円台に乗せたことで上昇一服感も出やすいところにある。コロナ感染増ペースが世界的な傾向と共にトルコでも大幅に鈍化して落ち着いていることやワクチン普及により今後の景気回復への期待も大きいが、製造業系の回復感が強いものの小売は鈍く、観光収入も大幅な落ち込みのままとなっている。
今週は2月22日夕刻に観光客数統計、製造業景況感の発表、25日に経済信頼感、26日に貿易収支と発表が相次ぐ。来週の3月1日には10-12月期GDP、3月3日には物価上昇率の発表もある。それらを強気してゆけばリラも対円及び対ドルでもう一段高へ進む可能性がある。また米長期債利回り上昇基調が続く中でも為替市場は株高継続を根拠にリスク選好的なユーロやポンド等のメジャー通貨、豪ドルや南アランドなどの資源・コモディティ通貨、新興国通貨買い意欲を継続しているので、全般的なドル安基調にリラも乗りやすい環境にはある。
ただし、11月6日底からの上昇も16週を経過した。2018年8月の通貨危機からいったん反騰した時が2018年11月29日まで16週の戻り安値から1.36倍の上昇となったところで行き詰まり新たな下落期に入った経緯があるが、今回も11月16日から2月16日高値まで16週で1.27倍の上昇を実現しており、現状で行き詰まると2018円11月からの下落再開と同様の展開に陥る可能性も出始めるかもしれない。2014年1月17日からの反騰時も同年5月14日高値まで16週でいったん行き詰まって同年10月16日まで調整期が続いたこともある。逆にこの16週前後の時間的な壁を超えてくれば2017年4月14日底から同年9月15日高値までの23週や、あるいは2014年1月27日底からの上昇で5月から10月まで調整を入れつつも最終的には同年12月5日高値まで1年近い上昇へと発展した時の時間規模で上昇する目も出てくるかもしれない。
【当面のポイント】
2月22日早朝は国内FX取引再開時の下げやすい時間帯で15円前後までいったん下げてからやや戻しているので現状は2月16日夕高値15.26円と2月18日にほぼ同値を付けたところを上値抵抗線とし、15円前後を下値支持線としたボックス型で一段高状態を維持した持ち合いの最中と思われる。
(1)15円台を維持するか一時的に割り込んでも切り返すうちはボックス型持ち合いの維持とし、持ち合い上放れへ進む可能性ありとみる。15.26円超えからは上放れとして15.30円から15.40円を目指す流れとみる。15.30円以上は反落注意圏とするが15.20円以上を維持し始める場合はさらにもう一段高を目指しやすくなるとみる。
(2)15円割れから続落の場合は2月16日高値で当面のピークを付けてGDPや物価上昇率等をもう一度見定めるために調整安に入ったとみて14.90円前後への下落を想定する。14.90円以下は押し目買いされやすい水準とみるが、為替市場全般がドル高へ傾斜する動きが出る場合は14.80円台前半へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
2月22日
16:00 2月製造業景況感 (1月 107.0、予想 108.0)
16:00 2月設備稼働率 (1月 75.4%、予想 76.0%)
17:00 1月観光客数 前年同月比 (12月 -67.44%、予想 -60.0%)
2月25日
16:00 2月経済信頼感指数 (1月 96.2、予想 97.0)
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨
2月26日
16:00 1月貿易収支 (12月 -45.3億ドル、予想 -47.0億ドル)
3月1日
16:00 10-12月期GDP前期比 (7-9月期 15.6%、予想 2.2%)
16:00 10-12月期GDP前年同期比 (7-9月期 6.7%)
16:00 2月イスタンブール製造業PMI (1月 54.4)
3月3日
16:00 2月消費者物価 前年同月比 (1月 14.97%)
16:00 2月消費者物価 前月比 (1月 1.68%)
16:00 2月生産者物価 前年同月比 (1月 26.16%)
16:00 2月消費者物価 前月比 (1月 2.66%)
注:ポイント要約は編集部
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