ドル円見通し 米雇用統計までの上昇を解消する下落、仕切り直しでFOMC待ち(6/10)

9日のNYダウは7日ぶりに反落した。欧州株も英FT100指数が前日比2.1%安、ドイツDAX指数が1.6%安など欧州株はほぼ全面安となった。

ドル円見通し 米雇用統計までの上昇を解消する下落、仕切り直しでFOMC待ち(6/10)

米雇用統計までの上昇を解消する下落、仕切り直しでFOMC待ち

〇ドル円は週明けから様相が一変、FOMC前に米10年債利回りが低下に転じドル売り円買いに
〇109円割れからは売りの連鎖となり9日深夜には107.61円まで安値を切り下げた
〇昨晩はナスダック指数のみ高値を更新したが、他の欧米主要株価指数は軒並み下落
〇世界銀行によるマイナス成長見通等が要因、株式市場のV字反騰一服の可能性も
〇明日未明結果公表のFOMCでは長短金利操作、マイナス金利の判断等に注目集まる
〇最近のドル円の動きは米10年債利回りと同調、動向要注視
〇ドル円108円を下回る内は一段安警戒、107.61円割れからは107円台序盤への下落を想定
〇FOMC後に急落商状の場合さらなる下落も
〇108円超えからは強気転換注意、108.24越えで強気サイクル入りか

【概況】

ドル円は5月19日夜に108.07円まで戻した後は6月2日までの10日間を107円台での持ち合いで推移してきたが、6月2日夜に5月19日夜高値を上抜いて持ち合い上放れに入り、株高によるリスクオン選好と米10年債利回り上昇を背景に高値追及の流れに入り、6月5日の米雇用統計が予想外に前月から改善したことで5日深夜には109.84円の高値をつけた。
持ち合い上放れからの大幅上昇となったことで、さらに高値追及の流れへ進むかに見えたが、週明けからは様相が一変した。株高基調は継続したものの6月11日未明に声明発表及び議長会見が予定される米連銀FOMCが迫る中で米10年債利回りが低下に転じ、日米長期金利差からのドル売り円買い圧力がかかった。110円到達には時期尚早として利食い先行となったことも重なり、109円を割り込むところからは売りの連鎖反応となって9日未明には108.23円まで急落し、9日の日中もジリ安推移で108円を割り込み、9日深夜には107.61円まで安値を切り下げた。

5月29日午後安値107.05円から6月5日高値109.84円までは2.79円の上昇幅であり、5月6日安値からの上昇幅は3.82円だったが、6月9日深夜までの下げ幅は2.23円となり、6月2日夜からの急騰分を解消した。

【米ナスダックは史上最高値を更新したがNYダウは7日ぶり反落】

6月9日は米ナスダック総合指数が1万0002.5ポイントをつけて2日連続で史上最高値を更新し、初めて1万ポイントの大台に到達した。コロナショックによる暴落前の2月19日高値9838.37を超えてショックを解消して余りあるところまで上昇してきた。市場が戦後最大級のコロナ不況を見据えつつも感染爆発が峠を越えて経済活動再開の動きが出始める中、主要国の大規模金融緩和と財政出動による復興期待が株式市場を猛烈に強気にさせてきた。
しかし、9日のNYダウは7日ぶりに反落した。欧州株も英FT100指数が前日比2.1%安、ドイツDAX指数が1.6%安など欧州株はほぼ全面安となった。前日に発表された世界銀行によるマイナス成長見通しとドイツの輸出急減がきっかけとなったようだ。

世界銀行は6月8日に今年の世界成長がマイナス5.2%に落ち込むとの見通しを発表した。9日に発表されたドイツの4月輸出額は前年同月比31.1%減となり統計開始の1950年以降で最悪となった。これらが楽観過ぎる株高へのブレーキとなったようで、前日まで6連騰してきたNYダウも前日比300.14ドル安で7日ぶりの反落となった。ハイテク株中心のナスダック総合指数は29.00ポイント高となり2日連続で史上最高値を更新したものの、1万ポイント到達による高値警戒感も出やすいところであり、欧米の主要株価指数が早々に上昇再開へ進めずにナスダックも失速する場合は3月からの欧米株V字反騰一巡となる可能性もあるところと注意する。

【明朝FOMC、米10年債利回りどうなるか?】

米連銀の連邦公開市場委員会(FOMC)が6月9日から始まった。日本時間11日未明には声明発表と議長会見があるが、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)やマイナス金利などについての判断に注目が集まっている。米債券市場はFOMCを控えて買い戻しに入り、10年債利回りは6月5日夜に0.95%台まで上昇していたが9日深夜には0.80%まで低下し、0.83%で終了している。
米10年債利回りが6月2日から5日夜にかけて上昇する局面でドル円が上昇、5日深夜から反転して低下へ向かったことが今週のドル円急落とほぼ同調しているので、ドル円の今後についてもFOMC後の市場反応、特に米10年債利回りの動向に左右されると注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月4日夜安値をサイクルボトムとして強気サイクル入りしたが、8日夜の下落で4日夜安値を割り込む急落となったため、9日朝時点では底割れによる弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は9日夜から11日夜にかけての間と想定した。
9日深夜へ続落した後は下げ渋っているが、108円以下の水準に止まっているのでまだ一段安余地ありとみる。FOMCまで強気転換できずにFOMC後に一段安となる場合は11日の日中への下落継続とみる。ただし、前回ボトムから3日を経過してFOMCも控えているので108円超えを強気転換注意とし、9日夜の戻り高値108.24円を上抜く場合は強気サイクル入りとして10日夜から12日深夜にかけての間への上昇を想定する。またいったん強気サイクル入りしてもFOMC後から一段安となる場合は新たな弱気サイクル入りにより12日夜から16日深夜にかけての間への下落へ進む可能性があると注意する。

60分足の一目均衡表では6月8日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したがその後も両スパンの悪化が続いている。9日深夜安値以降の下げ渋りにより遅行スパンは好転しやすい位置にあるので、遅行スパン好転からは高値試し優先と先行スパン帯試しとするが、好転しても再び悪化するところからは下げ再開と一段安警戒とする。

60分足の相対力指数は8日深夜から更に一段安する過程では指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるので、50ポイントへ上昇するところからはいったん戻しに入る可能性があると考えるが、再び30ポイントを割り込むところからは一段安警戒とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月9日深夜安値107.61円を下値支持線、9日夜の戻り高値108.24円を上値抵抗線とする。
(2)108円を下回る内は一段安警戒とし、107.61円割れからは107円台序盤(107.25円から107.00円)への下落を想定する。FOMC後に急落商状の場合は106円台後半へ下値目処を引き下げる。またFOMC後も軟調推移なら11日の日中から夜へ続落しやすいとみる。
(3)108円超えからは強気転換注意とし、9日夜の戻り高値108.24円超えからはいったん強気サイクル入りとみて108.50円前後を目指す上昇を想定する。108.50円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、FOMC後に急伸する場合は109円を目指す上昇を想定する。また108円以上での推移かFOMC後に安値更新を回避しているなら11日の日中から夜にかけては高値試しへ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/10(水)
未 定 OECD経済見通し
09:30 (豪) 6月 ウエストパック消費者信頼感指数 (5月 88.1)
10:30 (中) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 3.3%、予想 2.7%)
10:30 (中) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 -3.1%、予想 -3.3%)
16:00 (ト) 3月 失業率 (2月 13.6%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 -0.8%、予想 0.0%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 -0.4%、予想 0.0%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 1.4%、予想 1.3%)

27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 -7379億ドル、予想 -6000億ドル)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

6/11(木)
08:50 (日) 4-6月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (前期 -10.1)
08:50 (日) 4-6月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (前期 -17.2)

21:30 (米) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 -1.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 -1.2%、予想 -1.3%)
21:30 (米) 5月 生産者物価コア指数 前月比 (4月 -0.3%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 5月 生産者物価コア指数 前年同月比 (4月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 187.7万件、予想 160.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2148.7万人、予想 2080.0万人)

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