「マイナス金利の解除を議論」に留まり、短観を確認して4月解除か
【今回のポイント】
〇 マイナス金利の解除を議論し決議の結果、見送りか
〇 YCC、リスク資産の買取などは終了予想
〇 4月1日の日銀短観などデータを確認して4月会合にて改めて議論
【市場コンセンサスは何?】
3月14日22時時点の日銀会合のコンセンサスは下記の通りである。
・マイナス金利の解除を議論
・YCC、リスク資産の買取の終了を議論し決定を行う
今会合は、「マイナス金利の解除」をメインに様々な思惑が交錯し、この一週間はドルも上下に振らされる展開となっている。3月もしくは4月に、日銀が「金融政策の正常化」を実施するという公算は以前からあったが、話が「マイナス金利の解除を議論」や「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や、上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ廃止」と具体的な施策が出始めたことや、株式市場で日経平均が史上初の40000円台に乗せたことなどから、市場関係者がやや浮足だったように見える。
【何がサプライズになる?】
サプライズは、「マイナス金利の解除」の有無に絞られると考える。市場は「マイナス金利の解除を議論する」「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール(YCC))の撤廃」「上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)などリスク資産の買い入れ終了」まで織り込んでいる状況だ。YCCやリスク資産買い入れは実質終了しているようなものなので、市場へのネガティブな影響はほぼなく、むしろ日銀の本気度の現れと捉えられ、外国人投資家からは評価(どちらかというと日本株買いか)されるだろう。
一方、「マイナス金利の解除」に関しては、3月会合では決定せず、次回の4月会合での実施を私は想定している。植田日銀総裁は、審議委員時代の2000年にゼロ金利政策の解除に対して反対票を投じた過去がある。あくまでも日銀会合は多数決での決定のため、日銀総裁の一存で決定することはないが、個人消費に対して慎重な発言をしている植田日銀総裁は、今回の会合は「マイナス金利の解除を議論する場」とし、4月会合で決定したいのではないかと推測する。
3月会合と4月会合(25−26日)の間には、4月1日に日銀短観「3月概要及び要旨」、2日に日銀短観「3月調査全容」、4日に4月の地域経済報告が発表される。
「3月会合でマイナス金利廃止を議論」→「4月1日から4日の短観や地域経済報告の内容を確認」→「満を持して4月会合でマイナス金利廃止」という流れを推したい。
【では、円はどう動く?】
コンセンサス通りだった場合とサプライズだった場合の2通りのシナリオを考えておきたい。
コンセンサス通りだった場合
為替市場では、「マイナス金利の解除見送り」を受けて、1円ほどドル買いが走る可能性はあるが、結局、4月実施に伸びただけなので、瞬間的なドル買いに留まると考える。さすがに150円水準を意識したドル買い円売りという展開は、今後の日米金利差の拡大が想定しにくいことから難しいだろう。足元溜まっていた投機筋の円売りポジションも解消に動くと想定する。一方、株式市場では、外国人投資家が「金融政策の正常化」に踏み出せなかったことをネガティブ視して、日本株売りを仕掛ける可能性はあるので、株安に絡んだドル売りには警戒しておきたい。
サプライズだった場合
日銀が「金融政策の正常化」に踏み出したということで、株式市場では日本株買いが強まる可能性がある。日本株買いによってドル買い、という流れは想定されるが、為替市場だけを考えると方向性は読みにくい。
本来であれば、日米金利差縮小に伴うドル売り円買いというシナリオだが、そのような当たり前の話を想定している市場関係者は少数派か。金利動向で判断すると−0.1%が0.0%に代わるだけなので、正直誤差の範囲内だ。
むしろ、日本の「脱デフレ」を象徴する意味合いの方が大きく、総合的な日本買いという流れが強まるのではないかと考えている。株式市場はシンプルな日本株買いを想定しているが、為替の円買いが強まる、という地合いはどうなのだろうか。日本株買いが強まる場合、外国人投資家はリスクヘッジのためドル買い円売りに走るのはセオリーだ。
もしかすると、日本株買い、円買いに伴うドル安、そして、長短金利上昇、国債安という、これまであまり経験したことが無い地合いが見られる可能性がある。
【最近の日銀会合関係者の発言は?】
ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。
早川元日銀理事(3月14日)
「4月にマイナス金利解除が自然、おそらく意図的なビハインドザカーブをやっている」
植田日銀総裁(3月13日)
「政策修正は、賃金・物価の好循環を確認する必要」
「金融政策は、春闘回答など総合的に点検し、適切に判断」
岸田首相(3月13日)
「金融政策、構造的賃上げも踏まえ日銀が総合判断と認識」
植田日銀総裁(3月13日)
「春闘は大きなポイント、2%物価目標の実現で」
「2%目標の実現が見通せれば、マイナス金利、YCC枠組みの修正を検討」
植田日銀総裁(3月12日)
「2%物価目標の持続的達成を見通せるか、賃金と物価の好循環を点検」
「個人消費は価格上昇幅が大きかった食料品など非耐久財への消費に弱めの動きがうかがわれる」
植田日銀総裁(3月7日)
「物価目標実現見通せれば、大規模緩和の修正を検討」
「財務への配慮から必要な政策妨げられることない」
「物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっている」
「政策対応の内容・順序は経済・物価・金融情勢で異なる」
中川日銀委員(3月7日)
「予断持たず情報収集を続けたうえで判断したい。2%目標実現なら非伝統的な手段の修正要否を判断」
日銀関係者(3月6日)
「日銀、3月の政策決定会合で一部の出席者が「マイナス金利解除が妥当」と発言する可能性高い」
林官房長官(3月4日)
「デフレ脱却、物価の基調や背景を考慮し慎重判断必要、現時点で至っていない」
高田日銀審議委員(2月29日)
「どんどん利上げをするということではない」
「金融政策のギア、非常に強い金融緩和から一段下げてもいいのではないか」
【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】
日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行といえる。
そして、結果発表が遅くなると「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。
以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。
【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%を1.0%メドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持
【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・FOMC声明及びパウエルFRB議長は「3月利下げの可能性は低い」とけん制
3月19日−20日
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
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