【今回のポイント】
〇 現状の金融政策は据え置き
〇 「金融政策の正常化」に向けた検討や時期は明言せず
〇 植田日銀総裁の記者会見で「地ならし発言」が出ても出なくてもドル売り円買いに
【市場コンセンサスは何?】
2024年の主要中央銀行による最初の会合は、1月22日−23日に開催される日本銀行金融政策決定会合だ。
1月18日22時時点の日銀会合のコンセンサスは下記の通りである。
・現状の金融政策は据え置き
・「金融政策の正常化」に向けた検討や時期は明言せず
1月1日に発生した能登半島地震を受けて、昨年末には今会合にて、早期の「金融政策の正常化」に向けた動きを示すといった観測は後退した。
また、今会合で発表される「経済・物価情勢の展望」にて、2024年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)と23年度の経済成長率の見通しは下方修正となる公算が大きい、と既に報じられていることから、「金融政策の正常化」に踏み出す余地は無いだろう。
日銀関係者の話によると、24年度の物価見通しの引き下げは、原油価格の価格推移などを反映させるためで、従来の2.8%から2.5%前後に引き下げることが見込まれるとのことだ。
日銀がターゲットとする「2%物価目標の持続的・安定的な実現」の最大のポイントである今年の春の賃上げ(春闘)の動きはほぼ想定通りだが、25年度の物価見通し(従来は1.7%上昇)に大きな変化はなく、目標の2%には達しないとの見方だ。
そして、昨年7−9月期マイナス成長を踏まえて、23年度の実質国内総生産(GDP)見通しは、従来の前年度比2.0%増から下方修正となる可能性が大きくなっている。
【何がサプライズになる?】
サプライズは、前回の12月会合同様、「金融政策の正常化」に向けた、植田和男日銀総裁の「地ならし発言」となる。昨年複数あった「イールドカーブコントロール(YCC)(長短金利操作)」の修正は、足元0.6%程度で推移している10年債利回りの動向を考慮すると、修正の必要無いだろう。よって、今回のサプライズは、「地ならし発言」のみと考える。
【では、円はどう動く?】
コンセンサス通りだった場合とサプライズだった場合の2通りのシナリオを考えておきたい。
コンセンサス通りだった場合
発表後は動きがなくても、数日後辺りから徐々にドル売り円買いが入ると考える。
足元のドル・円は、148円水準で推移している。昨年11月13日の高値151円95銭から、同年12月28日の安値140円25銭の下落幅(11.7円)の3分の2戻りの水準が148円05銭であることから、3分の2戻しを達成している。
足元の米10年債利回りは4.1%ほどで、日本10年債利回りは0.6%台で推移している。つまり10年物の日米金利差は3.5%水準だ。昨年10月、米10年債利回りが5.0%台に乗せたとき、日本10年債利回りは0.85%だったことから金利差は4.15%。ドルが昨年来高値をつけた11月13日は、米10年債利回りが4.68%で日本10年債利回りは0.8%なので、金利差は3.88%だった。
「2024年、欧米は利下げ、日本は金融政策の正常化」がコンセンサスとなっている以上、円キャリートレードが活発化する雰囲気は無く、日米金利差の拡大を想定する市場関係者はほぼいないだろう。こうした状況を考慮すると、コンセンサス通りだったとしても、現在の148円台から上を狙うような積極的なドル買いは難しいだろう。
1月会合が無風だったとしても、春闘の結果を精査した後、「経済・物価情勢の展望」を発表する4月会合にて「金融政策の正常化」を行うとの見通しが徐々に強まるだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利引き下げのタイミングを探る必要はあるが、4月会合に向けて、昨年12月安値140円25銭を意識した緩やかなドル売り円買いが進行するだろう。
サプライズだった場合
足元のドル・円は、ドルに対する行き過ぎた利下げ観測の是正がドル上昇の要因で、日銀会合への警戒はほとんど織り込んでいない。そのため、瞬間的には1−2円のドル売り円買いが入る可能性はある。
瞬間的な売買の後も、ドル売り円買いの流れは続くだろう。つまり、昨年12月安値140円25銭を意識したドル売り円買いの流れは、サプライズの有無にかかわらず同じと考える。違いは、3月会合への思惑が高まるか、4月会合への思惑が高まるかの違いだけか。日銀が「金融政策の正常化」に踏みだすタイミングは徐々に近づいているため、基本的には「2024年はドル売り円買い」というスタンスを意識しておきたい。
【最近の日銀会合関係者の発言は?】
ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。
植田日銀総裁(1月11日)
「地域の金融機能の安定維持に努めつつ、地域経済への影響について、今後よくみていきたい」
岸田首相(1月5日)
「30年ぶりの賃上げ、投資、株価の流れを後戻りさせない。経済界に賃上げ協力要請」
神田財務官(12月21日)
「為替市場、米利下げ期待の高まりなどで今はドル安基調」
【2023年の日銀会合終了時間一覧】
日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行といえる。
そして、結果発表が遅くなると「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。
以下は、2023年の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから5−7分ほど経過してからだ。
【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%を1.0%メドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持する見通し
3月18日−19日
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日
3月19日−20日
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日
3月 7日
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
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