トルコリラ円見通し ドル円の失速でトルコリラ円も7月末からの上昇一巡感
〇トルコ円、ドル円を追いかける展開、8/21午前5.37まで戻すもドル円の反落に合わせ5.35近辺へ失速
〇今週はトルコ中銀追加利上げの有無と、その後のFRB議長講演内容へのドル円の反応に影響されるか
〇対ドル、8/18は概ね27.19から26.84の取引レンジ、最安値近辺での推移続く
〇トルコ中銀、リラ保護預金制度を縮小、非伝統的な経済運営からの正常化を試しているところ
〇5.38を下回るうちは下向きとし、5.34割れからは5.32前後への下落を想定する
〇5.38超えからは、5.39、5.40を順次試す上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の8月18日は概ね5.38円から5.34円の取引レンジ、19日早朝の終値は5.36円で前日終値の5.37円からは0.01円の円高リラ安だった。週間では8月11日終値5.39円から0.03円の円高リラ安となった。
トルコリラ円はドル/トルコリラの暴落商状がやや落ち着いているもののリラ安基調が継続していることを気にしつつ、目先はドル円の騰落を追いかけている。
ドル円は8月17日午前に146.54円を付けて年初来高値を更新したが、昨年9月22日の市場介入時高値145.89円を超えたことで高値警戒感を招き、8月18日は前日まで連騰していた米10年債利回りが低下したことで19日未明には144.93円へ下落し、その後に145円台を回復して週を終え、週明けの21日午前はやや軟調な推移ながら145円台序盤にとどまっている。6月30日高値を超えたことで1月16日安値からの上昇は三段上げ型に発展しているところであり、昨年9月の市場介入時も当日5円を超える一時的な急落後に反騰入りして10月21日高値151.94円へ一段高した経緯もあるので、目先は調整を入れつつも上昇再開の機会を伺うところと思われる。今週は8月25日のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演に注目が集まる。
トルコリラ円は7月18日に5.08円まで史上最安値を更新した後はドル円の騰落に合わせて持ち直し、7月28日の日銀金融政策決定会合直後の乱高下で5.12円まで反落したところから上昇再開に入り、8月12日には5.41円まで高値を伸ばしてきた。しかしドル円が年初来高値を更新した8月17日は5.41円までの上昇にとどまって高値切り上げヘ進めず、その後はドル円の反落に合わせて5.34円へ失速してきた。8月21日午前も5.37円まで戻してから5.35円近辺へ失速しており、8月17日高値以降の安値更新を試している。
今週は8月24日のトルコ中銀による追加利上げの有無と市場反応に左右され、その後のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演内容に対するドル円の反応に大きく影響されそうだ。
【対ドルでは最安値近辺での推移、中銀の追加利上げを見定めたい】
ドル/トルコリラの8月18日は概ね27.19リラから26.84リラの取引レンジ、19日早朝の終値は27.03リラで前日終値と変わらず。週間では8月18日終値26.86リラから0.17リラのドル高リラ安だった。
エルドアン大統領再選とその後のトルコ中銀の利上げ幅への不満によるリラ暴落商状はやや落ち着いており、手元のデータにおける取引時間中の史上最安値は8月4日安値27.34リラ以降は更新されていないものの、終値ベースでは徐々に水準の切り下がりが続いており、8月14日に27リラ台に到達し、15日終値27.04リラで最安値を更新してからもその近辺にとどまっている。
一時的な安値成立により日々の取引ではイレギュラーな安値が繰り返し示現しているが、それを除いても徐々に取引時間中の中心値とコアレンジおよび終値はジリ安の状況が続いている。
【中銀調査による年末予想はインフレ率59.46%、1ドル29.822リラ】
8月18日にトルコ中銀が発表した国内企業家等に対する月次調査では、2023年末のCPI(消費者物価指数)上昇率は年率59.46%となり7月調査の43.82%から上昇、1年先についても42.01%とされて前月の33.21%から上昇した。
2023年末の為替レート予想については1ドル29.822リラとされ6月の28.456リラから上昇、政策金利は3か月後で25.0%(6月は24.79%)、1年先は23.25%(6月は21.48%)と予想された。
大統領再選前の今年5月調査委時における年末為替レート予想は1ドル23.086リラ、CPI上昇率は37.17%、政策金利予想は3か月後8.5%、1年後11.11%だったが、その後のリラ暴落と新総裁体制での利上げにより企業家予想はインフレ率見通しを上方修正して利上げの継続も予想している。1年後には1ドル30リラに迫るところまでリラ安は進行するとの見方であり、しばらくは経済政策の正常化を見ながらもリラ安は継続すると認識されているようだ。
当面は8月24日のトルコ中銀による追加利上げが市場の納得する水準へ大胆に引き上げられるのかどうか、会合毎に2.5%ずつの利上げが継続される見通しが強まるのか注目されるが、市場の期待を裏切る小幅な利上げに留まる場合は失望を招いてリラ暴落が再開しかねないと注意したい。
【トルコ中銀 リラ保護預金制度を縮小】
トルコ中銀は8月20日にリラ預金の為替差損を補填する制度の縮小を行った。これまでは銀行に対して預金の一定水準をリラ保護預金制度へ転換させることを目標付けていたが、この目標を撤廃し、新たに保護預金制度から通常のリラ口座へ移行する目標を設定するように指導した。また銀行に対しては外貨預金に対する預金準備率を引き上げて通常のリラへ誘導する圧力をかけることとした。
KKM(リラ預金保護制度)は2021年末に導入されて口座残高は凡そ1170億ドル(3兆1000億リラ)で銀行預金総額に対して凡そ4分の1となっており、今年5月末からのリラ暴落により6月と7月には凡そ110億ドル(3000億リラ)を補填し、8月はさらに3,500億リラ(凡そ130億ドル)へ拡大する見通しという。
エルドアン大統領再選後にウォール街銀行家だったエルカン氏を中銀総裁とし、副首相や財務相経験者として市場の評価が高かったシムシェク氏を新財務相に起用してから中銀はインフレ抑制のための利上げ、外貨準備高を削っての市場介入の取りやめ、財務相は財政再建のための増税を行っている。
かつてのエルドアン大統領による「インフレを抑制するためには低金利が必要」として利下げを強行させてきた非伝統的な経済運営からの正常化を試しているところだが、問題はエルドアン大統領がどこまで忍耐できるのかということになろうか。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、8月11日午前安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして16日朝から18日朝にかけての間への上昇を想定していたが、8月17日午前へ続伸してからの反落により18日午前時点では17日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして21日午後から23日午前にかけての間への下落を想定した。
8月19日未明へ続落した後の戻りも鈍いためまだ一段安余地ありとみるが、5.38円超えからは強気転換注意として5.40円試しとする。
60分足の一目均衡表では8月18日午前への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンから転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月17日午前に75ポイントまで上昇してから30ポイント台へ反落し、その後も50ポイント以下での推移が続いているので一段安により20ポイント台へ低下する可能性があるとみる。強気転換には55ポイントを超えてその後も50ポイント以上の水準で指数の高値を切り上げるような上昇が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.34円を下値支持線、5.38円を上値抵抗線とする。
(2)5.38円を下回るうちは下向きとし、5.34円割れからは5.32円前後への下落を想定する。5.32円以下は反騰注意とするが、5.36円以下での推移が続く場合は22日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.38円超えからは5.39円、5.40円を順次試す上昇を想定する。5.40円手前では戻り売りにつかまりやすいとみるが、5.38円以上での推移なら22日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
8月23日
16:00 8月 消費者信頼感指数 (7月 80.1)
8月24日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 17.5%)
20:00 週次 外貨準備高 8月18日時点 グロス (8月11日時点 751.0億ドル)
20:00 週次 外貨準備高 8月18日時点 ネット (8月11日時点 157.5億ドル)
8月25日
16:00 8月 製造業信頼感指数 (7月 106.8)
16:00 8月 設備稼働率 (7月 77.1%)
17:00 7月 海外観光客数 前年同月比 (6月 11.35%)
注:ポイント要約は編集部
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