ドル円 短期調整局面入り(週報8月第3週)

先週のドル円は週初から米金利の上昇と本邦当局からの牽制発言は見られたもののトーンはそれほど強く無いとの見方からドル高・円安の動きが続きました。

ドル円 短期調整局面入り(週報8月第3週)

短期調整局面入り

〇先週のドル円、金利差拡大の思惑もあり円安が進むが、イベントを控え上値が重くなりやすい地合いに
〇中国人民銀行、本日政策金利(1年物)0.1%利下げに踏み切る、住宅ローン基準の5年超物は現状維持
〇人民元買い・ドル売り介入と中国の景気後退懸念という材料が出て短期的にはドル円も調整局面入りか
〇8/25(金)23:05、ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演の注目度高まる
〇今週は144.10レベルをサポートに146.00レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円は週初から米金利の上昇と本邦当局からの牽制発言は見られたもののトーンはそれほど強く無いとの見方からドル高・円安の動きが続きました。水曜NY後場に公表されたFOMC議事録ではインフレ警戒感が示されタカ派的と捉えられたことから米金利が上昇、翌木曜の東京朝方には、昨年11月以来の146.56レベルの高値をつけました。しかし、中国がドル売り・人民元買いを強化するとのニュースや、エバーグランデ(恒大集団)が米国で破産法適用を申請するなど中国発の景気後退懸念も重なり、株安とともに円買い戻しも出ての週末クローズとなりました。

FOMC議事録公表直後までは日米金利差拡大の思惑もあり円安が進みましたが、火曜の神田財務官による牽制発言から1円ほど円安となり介入警戒感もあるところに、中国の介入のニュースが円買い戻しのきっかけとなりました。さらにエバーグランデが米国で破産法を申請したことから中国での景気後退が前週のマイナスCPIに続いて懸念される状況となってきました。

中国人民銀行は本日政策金利(1年物)の0.1%の利下げに踏み切りましたが、住宅ローンの基準となる5年超物は現状維持とし、どの程度の効果があるのかはわかりません。

先週までは円安一辺倒の動きでしたが、中国から人民元買い・ドル売り介入と景気後退懸念という思わぬ材料が出てきたことで短期的にはドル円も調整局面入りとなりそうです。

今週は大きな材料としてはジャクソンホールがあります。例年8月下旬に開催されパウエルFRB議長の講演は25日(金)日本時間23:05から始まります。例年FOMCが開催されない8月はジャクソンホールのFRB議長講演で9月FOMC以降の流れが決まる発言も多く、今年も注目度は高まります。直前のFOMC議事録がタカ派的と取られた動きに対して、インフレ警戒感を強調し踏襲するのか、あるいは警戒感は残るものの利上げはいったん停止するといった発言をするのか、前者よりも後者のハト派的な発言が出た場合の方が現時点ではインパクトが大きそうです。

いずれにしても、先週木曜の東京前場までは円売りで動き、まだポジション的には円売りに傾いていることを考えるとイベントを控えて上値が重くなりやすい地合いが続きやすくなると見ていたほうがよさそうです。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

思いの外円安のペースが速かったあとの調整ということで、8月安値と高値からの押しを考えると38.2%押しが144.62、半値押しが144.03となっていて、弱い調整だと前者で止まる可能性はありますが、パウエル議長の発言も含め中国関連のニュースや、更なる株価下落といったリスクオフの動きが強まると後者の水準に押す可能性もあるでしょう。

8月初めの高値が143.88レベルと144円に近かったことを考えると144円台前半は押し目買いもまた出やすい水準となりそうです。いっぽうでレジスタンスは何も無ければ自然とドル買い・円売りが出てくる流れですが、いったん146円台は売りと見て良いでしょう。

今週は144.10レベルをサポートに146.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

短期調整局面入り

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月21日(月)
07:45 NZ7月貿易収支
15:00 ドイツ7月PPI ☆

8月22日(火)
20:30 (リッチモンド連銀総裁講演)
23:00 米国7月中古住宅販売件数 ☆
23:00 米国8月リッチモンド連銀製造業景況指数 ☆
27:30 シカゴ連銀総裁講演 ☆
**:** BRICSサミット(〜24日)

8月23日(水)
07:45 NZ小売売上高
16:15 フランス8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 南ア7月CPI
17:30 英国8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
22:45 米国8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 米国7月新築住宅販売 ☆
23:00 ユーロ圏消費者信頼感速報値
23:30 週間原油在庫統計

8月24日(木)
15:45 フランス8月企業景況感
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国7月耐久財受注
25:00 フィラデルフィア連銀総裁講演 ☆
**:** ジャクソンホール(〜26日)

8月25日(金)
08:30 本邦8月東京区部CPI ☆
15:00 ドイツ4〜6月期GDP改定値
17:00 ドイツ8月ifo企業景況感
23:00 米国8月ミシガン大消費者信頼感
23:05 パウエルFRB議長講演 ☆
28:00 ラガルドECB総裁講演 ☆

短期調整局面入り 2枚目の画像

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月14日(月)
東京市場では朝方に145.22レベルの高値をつけたもののすぐに反落、欧州市場までは145円割れの狭い値幅での取引が続きました、海外市場に移ってからは米金利が上昇する動きとともに改めてドル買いの動きとなり、NY朝方に10年債利回りは4.215%へと昨年11月以来の水準に上昇、ドル円も145.58レベルの高値をつけ、底堅い地合いのまま引けました。

8月15日(火)
東京市場は小動き、後場には神田財務官の円安牽制発言はあったものの反応薄で欧州市場入りとなりましたが、ドル円、ユーロ円での円売りが進みドル円は一時145.87レベルと昨年初回介入時の高値目前の水準まで円安が進みました。しかし財務官発言直後ということもありすぐに元の水準へと押し、NY市場では米金利上昇によるドル買いが先行したものの、弱い住宅指数をきっかけに米金利低下、調整のドル売りが進み145.10レベルへと下押ししました。引けにかけては改めてドル買いの動きとなって145円第半ばで引けました。

8月16日(水)
東京市場のドル円は小動き、欧州市場に入りユーロドルが下げる動きとともにドル買いの動きとなりましたが、145円台後半という警戒水準に入ってきていることもあり積極的なドル買いの動きにはなりませんでした。NY市場に入り米金利が上昇、FOMC議事録で思った以上にインフレ警戒感が示されていたことから金利上昇ドル買いの動きが強まり、ドル円は146.41レベルまで上昇後そのまま高値圏での引けとなりました。

8月17日(木)
前日のドル高の流れを受け東京朝方に146.56レベルまで買われたものの、介入警戒感もありその後は高値圏でもみあい後に自律反発でドルがじり安の流れとなりました。中国がドル売り人民元買いを拡大するとのニュースもドル売りに作用し、NY朝方には145.62レベルの安値をつけました。その後後場にかけては米金利上昇によるドル買い戻し、引けにかけてはダウが大幅安となり円買いの動きとなり安値圏での引けとなりました。

8月18日(金)
ドル円は東京市場では実需のドル売りが先行、その後は米金利低下と人民元高を材料に週末前の円買い戻しが続きました。欧州市場ではユーロ安の動きからドル買い戻しも見られ、NY朝方には米金利上昇もあって東京朝方の水準へと買い戻されました。その後は全般的なドル売りの動きが目立ちNY昼過ぎには144.93レベルの安値をつけましたが、引けにかけては145円台前半に戻しました。

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