トルコリラ円見通し トルコ中銀の利上げ幅は予想を大幅に下回り失望売りに
〇トルコリラ円、6/22は5.74まで下落、6/13早朝安値5.83を割り込み史上最安値を大幅に更新
〇トルコ中銀、15.00%へ政策金利を引き上げるも、予想中央値21%を大幅に下回ったことで市場は失望
〇対ドルでリラ暴落再開、トルコリラ円も急落商状に見舞われる
〇対ドル、6/22は概ね24.90から23.32の取引レンジ、1ドル24リラを超えたところから売りの連鎖が加速
〇6/23午前序盤は24.93から24.56の推移で史上最安値をさらに更新し、1ドル25リラ台が目前に迫る
(本日午前中に25.31レベルに到達済:編集部)
〇5.80以下での推移中は一段安警戒、5.70割れから5.60台前半へと安値試しを続けやすいと警戒する
〇5.80超えから続伸の場合は、5.83前後試しとその後の反落を想定する
【概況】
トルコリラ円の6月22日は概ね6.05円から5.74円の取引レンジ、23日早朝の終値は5.75円で前日終値の6.01円からは0.26円の円高リラ安だった。
トルコ中銀は6月22日の金融政策員会で政策金利の週間レポレートを現行の8.50%から15.00%へ大幅に引き上げたが、事前予想の中央値が21%への引き上げだったことから利上げ幅への失望が広がり対ドルで1ドル24リラ台後半へ急落して史上最安値を更新、トルコリラ円も6月13日早朝につけた5.83円を割り込んで史上最安値を大幅に更新した。
ドル円は22日の英中銀とノルウェー中銀が市場予想を上回る0.50%利上げを決定してさらに追加利上げ姿勢を示したことと、パウエルFRB議長前日の下院証言に続いて上院証言においても年内あと2回の利上げが適切として2024年の利下げについてもデータ次第として利上げ状態の長期化見通しが強まったことで米長期債利回りの上昇とともに143円台到達へ年初来高値を伸ばした。
トルコリラ円は5月28日の大統領選挙におけるエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落がやや落ち着く中でここ数日はドル円の騰落を追いかける展開を続けていたが、トルコ中銀の利上げが予想を下回ったことによる失望でリラ暴落が再開したためにドル円の騰落に左右されずに急落商状に見舞われている。
当面はドル円の上昇による下支えがあるものの、新たな暴落商状が落ち着かないうちはドル高リラ安を見ながら安値追及へ向かう可能性が高まった印象だ。
【1ドル24リラ台後半へ突入】
ドル/トルコリラの6月22日は概ね24.90リラから23.32リラの取引レンジ、23日早朝の終値は24.89リラで前日終値の23.53リラからは0.36リラのドル高リラ安となった。
エルドアン大統領の再選をきっかけとして対ドルでリラは暴落商状に陥り、6月7日に1ドル23リラ台に到達した後も6月8日から13日まで連日の史上最安値更新により6月13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)へ安値を切り下げ、終値ベースでは15日終値23.66リラで史上最安値を更新したが、その後は新財務相とトルコ中銀の新総裁人事を見て金融・経済政策が転換するのではないかとの期待が膨らみ、6月22日にトルコ中銀が大幅利上げに踏み込むとの見方が優勢となったことで利上げの結果を見定めたいとの思惑で暴落商状が落ち着き1ドル23リラ台中盤を中心とした持ち合いで推移していた。
しかし、トルコ中銀は15%へ利上げしたものの市場予想中央値の21%を大幅に下回ったことで失望されてリラ暴落が再開し、1ドル24リラを超えたところから売りの連鎖が加速して23日未明には24.90リラへと暴落的な下落を続けた。23日午前序盤は24.93リラから24.56リラのレンジで推移して史上最安値をさらに更新しており、1ドル25リラ台が目前に迫っている。
【トルコ中銀、大幅利上げも実質マイナス金利状態の解消には程遠い】
トルコ中銀は6月22日の金融政策委員会で政策金利の週間レポレートを現行の8.5%から6.5%引き上げて15.00%とした。利上げは2021年3月以来2年3か月ぶりとなる。
主要政策金利では、翌日物貸出金利が10.00%から16.50%へ、翌日物借入金利が7.00%から13.50%へ、後期流動性貸出金利が13.00%から19.50%へそれぞれ引き上げられた。
トルコ中銀は、「できるだけ早期にディスインフレの軌道を確立しインフレ期待を安定させ、価格決定行動の悪化を制御するため」に利上げを決定したとし、「インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで適切なタイミングで緩やかに、金融引き締めが一段と強化される見通しだ」とした。
6月16日の段階でロイター通信社がエコノミストの予想として20.0%への大幅利上げとなる見通しだと報じ、6月21日には予想中央値を21%へ引き上げていたが、予想レンジは12.5%から30.0%まで幅広く、果たしてトルコ新総裁が「金利は悪」「低金利がインフレを抑制する」とするエルドアン大統領の基本姿勢が変わらない状況でどこまで利上げに踏み込めるのかについては見解が分かれていた。
トルコ中銀は2020年10月に10.25%だった政策金利を2021年3月に19.00%へ引き上げたが、利上げを断行してきた中銀総裁は解任されて2021年9月から12月にかけて14.00%まで利下げが繰り返されてトルコリラは2021年12月へ暴落している。今回も19%というのがエルドアン大統領が利上げを忍耐する限界と仮定すれば、今回の15%への利上げから数回の利上げで19%まで引き上げられる可能性が考えられるが、5月時点のトルコ消費者物価指数の前年比は39.59%であり、政策金利から消費者物価上昇率を差し引いた実質金利はマイナス24.59%となり、昨年末にマイナス75%を超えたところと比較すれば大幅な改善には違いないが、実質マイナス金利状態を解消するにはインフレ率が一段と低下した上で連続利上げによりインフレ率を超える必要があり、まだしばらくは追加利上げの催促としてのリラ売りが続きやすいのではないかと思われる。
なお、6月22日に発表された週次の外貨準備高は6月16日時点のグロスで607.8億ドルとなり6月9日時点の577.9億ドルから増加し、ネット(純外貨準備高)は4.7億ドルとなり6月9日時点のマイナス31.7億ドルから改善してプラス圏を回復した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月20日午前高値をサイクルトップとして高値更新からは新たな強気サイクル入りとしていたが、22日未明への上昇で6月20日午前高値と同値まで戻したため、22日午前時点では20日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は23日午前から27日午前にかけての間とし、ダブルトップ形成に終わる可能性もあるので20日夕安値割れからは弱気サイクル入りとして23日午後から27日夕にかけての間への下落を想定するとした。
6月22日の暴落により現状はダブルトップ形成から弱気サイクル入りしたところと思われる。暴落後の反動高にも注意がいるところだがさらに暴落商状が加速する可能性もあるところと注意する。
60分足の一目均衡表では6月22日夜の急落で遅行スパンが悪化し、先行スパンからも大きく転落している。下げ渋りに入れば遅行スパンが一時的に好転する可能性もあるが、先行スパンからの転落が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は6月22日夜の急落で10ポイント台へ低下してからも30ポイント以下での推移が続いているのでまだ一段安余地ありとみる。強気転換には40ポイントを超えて50ポイントに迫る上昇が必要であり、40ポイント以下での推移中は安値試しが続きやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.70円を下値支持線、5.80円を上値抵抗線とする。
(2)5.80円以下での推移中は一段安警戒とみる。5.70円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、暴落商状が落ち着かないうちは5.70円割れから5.60円台前半へと安値試しを続けやすいと警戒する。
(3)5.80円前後は戻り売りされやすいとみる。5.80円超えから続伸の場合は5.83円前後試しとその後の反落を想定する。
【当面の主な予定】
6月23日
16:00 5月 貿易収支 (4月 -87.4億ドル)
17:00 5月 海外観光客数 前年比 (4月 29.03%)
7月03日
16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 51.5)
16:00 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.04%)
16:00 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 39.59%)
16:00 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.65%)
16:00 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 40.76%)
注:ポイント要約は編集部
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