ドル円の方向を見極める週(週報2016年10月第二週)

ドル円は週初の101円台半ばから木曜には104円台と、株高と全般的な円売りの動きが強まったことに加え、

ドル円の方向を見極める週(週報2016年10月第二週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値    高値    安値    終値  

ドル円   101.53  104.16  101.21    102.92
ユーロ円  114.05  116.28  113.63   115.29
ユーロドル1.1233   1.1243  1.1105   1.1202
日経平均 16566.03 16971.28 16554.83 16860.09

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

10月3日(月)

週明けの為替市場は、週末に英国メイ首相が来年3月までにEUからの離脱交渉を開始すると党大会で発言したことを受け、ポンドがギャップダウンしてスタート。その後も戻りは弱く欧州市場序盤に大きく下げNY市場前場には安値1.2818レベルと7月6日に付けた安値目前まで水準を切り下げました。その後引けにかけては安値更新とならなかったことから買い戻しは出たものの、引き続きポンドの戻り売りは考える参加者が増えてきました。いっぽう、主要通貨は目立った動きは無く、ポンドの下げにもかかわらずユーロドルは若干下げた程度、ドル円もやや円安方向へと反応した程度の動きに留まりました。

10月4日(火)

週初から売りが強まっているポンドは7月安値を割り込み1985年6月以来の安値をつけることとなりました。この対ポンドでのドル買いの動きが他通貨にも波及し、ドル円は株高の動きも手伝って終日じり高の動き、NY市場では102.97レベルまで上昇したことでレジスタンスラインを上抜ける動きを見せています。ユーロドルも同様に1.1138レベルまで水準を下げていましたが、関係者筋からECBがテーパリング(QE縮小)を考えているとの話が飛び出したことで、100ポイントもの急反騰、その後1.12近辺へ押してのクローズとなりました。

10月5日(水)

東京市場ではドル円、クロス円が底堅い動きを示してはいたものの動きは出ず、ドル円は102円台後半でのもみあいを続けました。欧州市場に入り、ポンドが1.2686レベルまで水準を切り下げるも、そこからは買い戻しが優勢な動きでNY市場入りとなりました。ADP全国雇用者数は予想よりやや弱かったものの、その後のISM非製造業景況指数がかなり強い数字となったことをきっかけにドルが一段高。特にドル円はポンド円をはじめとするクロス円の買い戻しが強まったこともあり、103.67レベルと東京安値から更に1円も円安水準となり強い地合いのまま引けました。ユーロドルはいつもの1.12台前半、ポンドは1.27台半ばと前日NY市場の水準へと戻して引けました。

10月6日(木)

東京市場では動きが鈍かったものの、欧州市場序盤から再びポンド売りが強まり、ポンド売り・ドル買いの動きが他通貨にも波及した展開となりました。ポンドドルは安値を更新し、ドル円もNY市場で104.16レベルの高値をつけ、その後もドルが堅調な地合いで引けました。ユーロドルは前回の理事会議事要旨公表がありましたが、テーパリングには触れられていないことに加えコンスタンシオECB副総裁は報道内容を否定したことから、ユーロもポンドの流れについて直近安値を試す流れでのクローズとなりました。

10月7日(金)

雇用統計を前に大きな動きはしにくいと思っていたところ、東京市場8時過ぎにポンドが全ての通貨に対して大暴落を演じました。あまりにも急激な動きでFX業者によって安値はまちまちでしたが、1.18台を示現したことは間違いないようです。ポンド安に対する懸念はあったとはいえ特にニュースが出たわけでもなく、急落のきっかけは誤発注との見方が大勢でした。主要通貨はポンドクロスで大きく振れたものの、波乱収束後は対ドルでは雇用統計まで様子見。雇用統計は予想よりも弱かったことからドル売りの動きとなり、ドル円は102円台、ユーロドルも1.12台での引けとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

10月10日(月)
**:** 東京、香港、NY市場休場
**:** ユーロ圏財務相会合
26:30 フランス中銀総裁講演

10月11日(火)
08:50 本邦8月貿易収支
09:30 豪州9月NAB企業景況感
10:30 (シカゴ連銀総裁講演)
18:00 ドイツ10月ZEW景気期待指数
18:00 ユーロ圏10月ZEW景気期待指数
20:00 南ア8月製造業生産
23:00 米国9月労働市場情勢指数
24:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
25:00 メルシュECB理事講演

10月12日(水)
**:** クーレECB理事議会証言
21:00 NY連銀総裁講演
22:40 カンザスシティ連銀総裁講演
27:00 FOMC(9月20・21日)議事録公表
29:00 メルシュECB理事講演

10月13日(木)
06:30 NZ9月企業景況感
**:** 中国9月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国9月輸入物価指数
24:00 米国週間原油在庫
25:15 (フィラデルフィア連銀総裁講演)

10月14日(金)
09:30 豪中銀金融安定化報告公表
10:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
10:30 中国9月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏8月貿易収支
21:30 米国9月小売売上高
21:30 米国9月PPI
21:30 ボストン連銀総裁挨拶
23:00 米国10月ミシガン大消費者信頼感指数速報値
23:00 米国8月企業在庫
26:30 イエレンFRB議長講演

10月15日(土)
**:** 米国財務省為替報告書議会提出

今週の週間見通し

ドル円は週初の101円台半ばから木曜には104円台と、株高と全般的な円売りの動きが強まったことに加え、102円前後に位置していたレジスタンスラインを上回ってきたことからテクニカルな買いも目立っていました。しかし、金曜朝のポンド暴落によりポンド円の売りが出たことや、弱い雇用統計からドル売りの動きとなったこともあり、短期的には104円台で頭を打った格好となりました。

これまでにも何度か指摘してきましたが、米国雇用統計前後でドルは高値をつけるアノマリーがあり、今回もタイミング的に104円台はいったん高値となった動きです。また最近はあまり触れていませんでしたが、日柄的にも7日NY市場はドルが売られやすい日柄と重なっていました。この日柄については、今週初月曜NY市場(コロンバスデーで休場)から火曜NY市場までいったん底固めが入り、週末を挟んで14〜17日にドル売りの流れが再開しやすい状況を示しています。

依然としてポンドの動きは不穏なものがありますので、リスクオフの円買いが出て来る可能性や、米国の利上げに関する見通しが変わるほどのものでは無いにせよ、雇用統計に続いて弱めの経済指標が出てくるようだと素直にドル売りといった動きが出てくるため、今週以降はテクニカルにレジスタンスを上抜けたドル円の動きが、材料によって大きなダマシとなるのかどうかを見極める週となりそうです。

ここで日足チャートをご覧ください。

レジスタンスは明確に抜けている一方で、サポートは下値を結んだライン上にきれいに並んでいることから、中期的にはドル高・円安トレンドに転換したと考えることが妥当ですが、先週の高値(104.16)が9月高値(104.32)を抜けられなかったことから、現状は両高値を結んだ新たなレジスタンスラインが引けます。レジスタンスについてはこの線の位置(104円を若干上回る水準)にあると考えられます。いっぽう、サポートまではまだかなり距離がありますので、9月安値(100.10)と先週高値からフィボナッチ・リトレイスメントを計算することが妥当です。

リトレイスメントは、38.2%押し=102.61、半値押し=102.13、61.8%押し=101.65となっていて、ちょうど長期レジスタンスラインを抜けた水準と、半値押しの水準がほぼ一致することを考えると102円という水準が短期的な押しのターゲットとなってきて、ここで支えられればドル高方向への転換が支持され、割り込んでくると大きなダマシといった見方をすることが出来ます。

以上、ドル円相場を取り囲む環境、テクニカルな観点から今週のドル円は、102.00レベルをサポートに、104.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

なお、最後にポンドについて少しコメントしておきますが、きっかけが何であれ7月安値を下抜けた後の暴落は今後のポンドの動きに影響を与えます。ザラバのチャートを見るとわかりますが、1.22台前半(暴落後の押しでの安値)から、1.18台までの間はほとんど取引が無い状態での急速な下げと戻しを見ていますが、今後どこかの段階で今回見た1.18台という水準を再び丁寧に(通常の値動きで)再度試しに行くという展開があると考えられます。

相場というのは不思議なもので、素通りした水準(ザラバチャートでローソク1本のような値動き)は後から改めて値を埋めに行くという傾向があります。ブレグジットの協議はまだ始まってもいません。長期的なポンド安の動きにしてもまだ始まったばかりというのが冷静な見方ではないかと考えます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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