ユーロ ECB緩和縮小思惑でユーロ高継続(週報9月第1週)

先週のユーロは、前週からのドル安トレンドを継続し週初からユーロ買いの動きが続きました。

ユーロ ECB緩和縮小思惑でユーロ高継続(週報9月第1週)

ECB緩和縮小思惑でユーロ高継続

〇先週のユーロドル、ECB理事会を前に緩和縮小思惑が一段と高まりユーロ買いの動き
〇ECB内でタカ派の中銀総裁が理事会を前に次々と緩和縮小を協議する方向を示す
〇ECBがPEPP縮小に動けば9月FOMCでもテーパリング決定という見方が出てくるか
〇今回の理事会でPEPP縮小見送りなら、急速にユーロ売りに動く可能性も
〇今週は1.1820レベルをサポートに1.1950レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、前週からのドル安トレンドを継続し週初からユーロ買いの動きが続きました。背景にあるのは米国の緩和縮小は年内に始まっても利上げはすぐには始まらないという見通しが為替市場ではドル安材料となっていたということです。そして更に先週のユーロドルは、ECB理事会を前にして緩和縮小思惑が一段と高まったことでユーロ買いの動きとして反応しました。

7月9日に公表された6月のECB理事会議事録においても、経済回復が加速する中で金融緩和策を縮小することを協議、しかし現時点では緩和的な政策を維持することで大筋合意となっていました。そしてその後、タカ派のECB関係者からは緩和縮小を支持する発言も出ていましたが、先週は8月30日にフランス中銀総裁、31日にオランダ中銀総裁とオーストリア中銀総裁が今週のECB理事会においてPEPP(緊急購入プログラム)の購入金額の縮小を議論することを示唆する発言を行いました。

さらに1日にはドイツ連銀総裁が現在のインフレ率上昇が一時的なものでは無い可能性を指摘し、ECB内でタカ派と見られる中銀総裁が理事会を前に次々と緩和縮小を協議する方向を示したと言えます。ただECB内にはハト派の中銀総裁もいることを考えると、結果としてどうなるかはわかりませんが、PEPP自体が来年3月までの時限措置であったことを考えると、徐々にPEPPの金額をゼロにしていくことが今週の理事会で決定される可能性が高まったと言えます。

おそらく現在のコンセンサスは6:4で今週の理事会におけるPEPP縮小が決定され、米国のテーパリング開始は9月FOMCではなく11月FOMCという線です。以前の米国よりも先に緩和縮小には動かないという見方からすると随分と変化してきましたが、ECBがPEPP縮小に動くと9月FOMCでのテーパリング決定もという見方が出てくる可能性はあるでしょう。

つまり、もし今週のECB理事会でPEPP縮小が決定されれば一時的にはユーロ買いに動くでしょうが、その後はここ2週間の思惑で積みあがってきた短期筋の利食いに押される動きとなりそうですし、逆に今回の理事会でPEPP縮小見送りとなった場合は、急速にユーロ売りに動くという可能性もあるでしょう。今回のECB理事会は最近の理事会の中では最も注目を集める会合となります。

テクニカルには次の日足チャートをご覧ください。

ECB緩和縮小思惑でユーロ高継続

先週執筆時点では先週ここまでタカ派発言が続くとは考えず反落する流れを考えていましたが7月以降の下降チャンネル(青)を上抜け、現在はやや急角度ではあるものの上昇チャンネル(ピンク)の中での動きになっています。今後もう少し値幅を拡大して、値幅が広いチャンネルへと変化していくでしょうが、先週高値は上ヒゲとはいえ7月高値を上抜け、8月の年初来安値更新が大底となった可能性を示してきました。

5月高値と8月安値の38.2%戻しは既に達成し、いったんは落ち着きどころとなりやすいのですが、今後の展開次第では半値戻しの1.1964レベルをターゲットに一段高となってきそうなイメージです。

今週はECB理事会までは少なくとも底堅い動きを続けそうですから、1.1820レベルをサポートに、1.1950レベルをレジスタンスとする流れを見ておこうと思います。

今週のコラム

最近、毎週ユーロ円のチャートを見ていますが、今週もユーロ円の日足チャートです。

ECB緩和縮小思惑でユーロ高継続 2枚目の画像

先週時点では130円の大台を上抜けない限りは下降トレンドが継続しているという見方を続けたいと書きましたが、あっさりと130円の大台に乗せてきました。

ユーロ円は自民党執行部交代を好感した株式市場の動きを見てのリスクオンの円売りの動きも重なってユーロドル以上に上値を狙いやすいという見方が増えてきました。現状は130円台前半でいったん止まっていますが、6月高値と8月安値の半値戻しにあたる131.02が今後の上値のターゲットとされやすいと言えます。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月6日(月)
**:** NY市場休場
15:00 ドイツ7月製造業新規受注
17:30 英国8月建設業PMI

9月7日(火)
08:01 英国8月小売売上高
15:00 ドイツ7月鉱工業生産
18:00 ドイツ9月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏9月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP確報値 ☆

9月8日(水)
15:45 フランス7月貿易収支
24:00 英中銀総裁講演 ☆
27:00 ベージュブック ☆

9月9日(木)
08:01 英国8月住宅価格
15:00 ドイツ7月貿易収支
20:45 ECB理事会 ☆
21:30 ラガルドECB総裁会見 ☆

9月10日(金)
15:00 ドイツ8月CPI ☆
15:45 フランス7月鉱工業生産
18:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
**:** ユーロ圏財務相会合 ☆

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月30日(月)
ロンドン市場が休場ということもあって終日静かな1日となり、値幅も狭くレンジは27pipsに収まっていました。

8月31日(火)
ユーロドルはNZドルから始まった米ドル売りの流れが先行しましたが、ユーロ買いの動きも目立ち、ユーロ円でもユーロが上昇しました。欧州市場昼頃にユーロドルが1.1845レベル、ユーロ円は130.18レベルの高値をつけましたが、NY市場ではロンドンフィキシングの実需のユーロ売りの動きからユーロは1.1797レベル、ユーロ円は129.59レベルと東京朝方の安値圏まで押し、引けにかけて若干戻しました。

9月1日(水)
ユーロドルは東京市場ではユーロ円の買いも見られたことから若干上値が重たい程度でしたが、欧州市場序盤のドル円の買いとともにユーロ円も前日高値を上抜けたことからユーロドルも上昇する動きとなりました。その後、NY市場では予想よりも弱いADPを受けユーロドルは一段高、1.1857レベルの高値をつけたあとにやや押しての引けとなりました。

9月2日(木)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場に入ってから欧州通貨の買いが目立ち、前日高値を超えたあたりからは仕掛けっぽい買いが見受けられました。ユーロドルは1.1876レベル、ユーロ円も130.59レベルまで水準を切り上げ、それぞれ高値圏での引けとなりました。

9月3日(金)
ユーロドルは東京市場前場の菅首相辞任報道でユーロ円上昇に引っ張られてやや底堅い動きとなりましたが、その後はNY市場までやや上値が重いもみあいを続けました。雇用統計直後は想定外のNFPを見てドル売りの動きから1.1909レベルの高値をつけましたが、NYダウの下げがドル円だけでなくユーロ円の下げにも波及し、すぐに元の水準へと押しました。引けにかけてはドル売りの影響からじり高となった後に若干押しての週末クローズとなりました。

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