トルコリラ円見通し 12円台後半中心の持ち合い続く
〇トルコ円12.90で越週、7/19以降安値を切り上げややジリ高の推移、ドル円での円安に押し上げられ気味
〇ドル高優勢の展開で新興国通貨が総じて軟調推移の中、ドル/トルコリラは横ばい程度で確り
〇トルコの長期債利回りは高水準、米欧等の主要国との長期債利回り格差がリラを支える要因か
〇トルコ金融政策への不信感解消されず、新たなリラ売り材料発生すれば史上最安値更新試す流れとなるか
〇12.80以上での推移中は上向きとみるが、13.00前後は戻り売りにつかまりやすいとみる
〇12.80割れから続落の場合は、7/19夜安値12.67前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の7月23日の週は12.90円で終了、前週末の12.89リラからは若干の上昇。取引レンジは12.96円から12.67円で7月16日に付けた高値12.97円を超えられなかったものの7月19日以降は安値を切り上げるややジリ高の推移となった。
為替市場全般はドル高優勢の展開で新興国通貨が総じて軟調推移だったもののドル/トルコリラは横ばい程度で確りし、ドル円が7月19日夜に109.05円まで下落したところから反騰に転じて23日夜には110.58円を付けて7月14日高値110.69円に迫るところまで戻したことでトルコリラ円はやや押し上げられ気味の推移だった。
6月1日のエルドアン大統領による利下げ言及報道から12.44円へ急落後に6月11日高値13.21円までいったん買い戻され、再び売られたところでも6月21日安値12.48円で底割れを回避し、その後は安値を若干切り上げつつ戻り高値も7月1日の12.90円から7月16日の12.97円へと切り上げている。しかし6月2日と6月11日の高安レンジ内であり、12.50円前後を下値支持線としつつ12円台後半での持ち合いの様相となっている。
【ドル高・新興国通貨安】
ドル/トルコリラの7月23日の週は8.54リラで終了、前週末の8.51リラからは若干の下落で取引レンジは8.60リラから8.47リラ。
6月25日に8.799リラまで史上最安値を更新したところから反騰に転じて7月9日から16日まで6日連続の日足陽線で上昇したものの、7月16日夕高値8.46リラで戻り一巡となり、8.60リラ前後を下値支持線、8.49リラ前後を上値抵抗線とした持ち合いとなっている。
為替市場では全般的なドル高基調での推移であり、ユーロドルが5月25日高値以降の下落基調を継続、ポンドドルも週後半にかけてやや戻したものの6月1日からの下落基調の範囲にあり、豪ドル米ドルも7月21日に2月25日以降の安値を更新している。新興国通貨でも暴動が発生している南アランドが6月7日からの下落基調を継続、ブラジルレアルも6月25日まで戻した後は失速、アジア通貨も変異株の感染急増等を反映してタイバーツが大幅下落するなど総じて弱い。
米連銀が前回のFOMCで量的緩和の縮小開始を議論するとしたが、すでにカナダ中銀や豪中銀等が縮小に入っており、世界的な金融緩和基調の先が見えて来たことで投機通貨への手仕舞い、新興国への投資意欲の後退が徐々に見られる。中国の人民元も5月31日以降はドル高元安での推移が続いている。パンデミック直後の不況から回復してきた流れでNYダウがアフターコロナ復興期待相場の先頭に立って史上最高値を繰り返し更新してリスクオン心理を先導してきたが、米国の景気回復は力強いものの地域間における景気回復の温度差も目立ち始めており、市場心理も米国株高へ関心を集中させる一方で為替市場の投機ポジションについてはやや委縮し始めている印象がある。
【ドル高基調に逆行してトルコリラは確り、長期債利回り高水準が支え】
米長期債利回りが低下傾向を示している中で主要国の長期債利回りも総じて低下しているため、米長期債利回りが低下してもドル高が続いている状況にある。しかし、他の新興国と比較しても異常な物価高騰状態にあるトルコの長期債利回りは高水準のままだ。トルコ10年債利回りは3月末のアーバル前総裁解任騒動でそれまでの13%前後だった水準から20%へ急伸、その後はやや低下しているとはいえ7月23日時点でも16.74%にとどまっている。2年債利回りも18.6%近辺と高水準にある。南ア10年債利回りが9%近辺、メキシコ10年債利回りが7%近辺であることと比較すれば相当に高い水準といえる。その上でリラが暴落的に下げていれば利回りが高水準でも意味がなくなるがリラが確りなら妙味のあるところだ。
物価上昇が収まらない限りはエルドアン大統領と中銀が利下げしたくてもできない状況にあるために、暫くは利下げ無しとしてトルコリラが対ドル等で確りする中において10年債利回りが高水準なら、米欧等の主要国との長期債利回り格差でリラが買われて確りしても不思議はない。ただし、あくまでも史上最安値更新が一服しているから長期債利回り格差が目先材料として注目されるのであり、トルコ金融政策への市場の不信感が解消されたわけではないため、新たなリラ売り材料が発生すればリラの弱さが再認識されて史上最安値更新を試す流れへと切り替わっても不思議ではない。
【中勢のポイント】
6月2日安値12.44円から6月11日高値13.21円へ上昇した後は、この高安レンジ内での推移が続いている。
6月11日高値から7月1日高値へと高値ラインが切り下がっていたところではレンジ縮小型の三角持ち合いの様相だったが、この三角持ち合いの抵抗線は上抜いており、6月21日以降は安値が切り上がり気味で戻り高値も切り上がる流れとなっている。
6月11日高値を上抜く上昇へ発展する場合、6月2日安値と6月21日安値をダブル底とするか、ないしは終値ベースの最安値である6月21日安値を中心とした鍋底型形成からの上昇期に入る可能性があるが、6月11日高値を超えないうちは中勢レベルとしては下げ渋りに過ぎない。
概ね40週前後の底打ちサイクルでみれば、昨年11月6日底から31週目となる6月2日底ないしは34週目となる6月21日安値ではやや底打ちとしての日柄が浅く週足レベルではほぼ横ばいだ。このために6月11日高値を超える場合はやや短い日柄でサイクルボトムを付けて数週規模の反騰入りとなる可能性を優先するが、6月11日高値を超えないうちは横ばいからの下放れに入って8月から9月にかけてもう一段安してからこのサイクルのボトムを付ける可能性があると警戒する。
以上を踏まえて中勢及び当面のポイントを示す。
(1)中勢としては、13.21円を上値抵抗線、12.50円前後を下値支持線とする。
(2)短期的には13.00円を上値抵抗線、12.80円を下値支持線とする。
(3)12.80円以上での推移中は上向きとみるが、13.00円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。13.00円を超えて続伸の場合は6月11日高値13.21円試しへ向かう可能性も浮上するが、新たなリラ買い材料に押し上げられない限りは13.10円以上は反落警戒圏とみる。
(4)12.80円割れから続落の場合は7月19日夜安値12.67円前後への下落を想定する。12.70円以下は買われやすいとみるが、12.67円を割り込むようだと安値切り上げ基調も崩れ始めるとみて12.60円台序盤、さらに12.50円台へ目指す流れへ進みやすくなるとみる。特に新たなリラ売り材料から売られる場合は下げ足も早まると注意する。
【当面の主な予定】
7月26日
16:00 7月 製造業景況指数 (6月 113)
16:00 7月 設備稼働率 (6月 76.6%)
23:30 6月 中央政府債務残高 (5月 200.1億リラ)
7月28日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨
7月29日
16:00 7月 経済信頼感指数 (6月 97.8)
20:30 外貨準備高 7/16時点 (7/9時点 625.8億ドル)
7月30日
16:00 6月 貿易収支 (5月 -41.3億ドル)
17:00 6月 観光客数 前年同月比 (5月 3038.38%)
20:30 外貨準備高 7/23時点
8月02日
16:00 7月 イスタンブール製造業PMI (6月 51.3)
8月03日
16:00 7月 消費者物価上昇率 前月比 (6月 1.94%)
16:00 7月 消費者物価上昇率 前年同月比 (6月 17.53%)
16:00 7月 生産者物価上昇率 前月比 (6月 4.01%)
16:00 7月 生産者物価上昇率 前年同月比 (6月 42.89%)
※ポイント要約は編集部
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