トルコリラ円見通し フラッシュクラッシュは落ち着くも軟調推移(20/7/7)

トルコリラ円もドル円の下落と同調して7日未明には15.60円まで下落した。

トルコリラ円見通し フラッシュクラッシュは落ち着くも軟調推移(20/7/7)

トルコリラ円見通し フラッシュクラッシュは落ち着くも軟調推移

〇トルコリラ円7日未明に15.60まで下落、リスク選好のドル安によるドル円の下落につれ安の形
〇対ドルでは6日は6.85リラを挟んだ狭いレンジ内取引
〇7/3の一時的トルコリラ暴落は5月の史上最安値更新や2018年8月の通貨危機を思い起こさせ要注意
〇経済活動再開や入国規制緩和に伴う新規感染者の増加注視
〇15.69以下での推移中は一段安警戒、15.65超えからは強気転換注意

【概況】

トルコリラ円は6月23日夜安値15.47円からの反騰で7月1日午前に15.77円まで高値を切り上げたが、その後は15.60円台での横ばいが続き、15.70円には届かずに安値を若干切り下げていた。
7月3日16時にトルコ6月消費者物価指数の発表があり、市場予想を上回る前年比の上昇率となったことで政策金利とのマイナスギャップが拡大したことをきっかけとしてトルコリラへの売り圧力が強まり始め、7月3日夜には対ドルでトルコリラが急落し、トルコリラ円もベンダーによっては15.56円前後や15.40円前後、さらに15.14円前後を提示するところまで急落した。この急落は一時的なもので、薄商いの中での短時間の連鎖的暴落とその後の急激な巻き戻しというフラッシュクラッシュ的なものだったと思われる。いったん急落前水準へ戻した後に3日深夜には15.58円まで再び下落して先週を終えた。

週明けは株高を好感してドル円が6日昼にかけて戻した流れに合わせて15.69円の高値をつけたが、上海総合株価指数の5%を超える大幅高や、夜に入っての米ナスダック総合株価指数の終値ベースにおける3日連続での史上最高値更新でもドル円はなびかず、リスク選好に伴うユーロ高等によるドルストレートでのドル安を反映してドル安円高となり、トルコリラ円もドル円の下落と同調して7日未明には15.60円まで下落した。

【トルコの外貨準備への脆弱性懸念】

対ドルでのトルコリラは金融当局による取引規制の動きを反映して6月18日以降は6.85リラを挟んで高安レンジの狭いほぼ横ばいの推移が続いてきたが、7月3日に発表された6月のトルコ消費者物価指数が前年比12.62%上昇となったことで、政策金利が実質マイナス金利状態に陥ったとして一時的に6.98リラまで急落した。6月25日にトルコ中銀は政策金利を8.25%に据え置いていたが、物価上昇率が2か月連続で2桁を超えたことで金利の下げ過ぎ感が強まったことを反映した。しかし一時的なフラッシュクラッシュの発生から早々に元の水準へ回帰し、7月6日は6.85リラを挟んだ狭いレンジ内での動きで落ち着いている。

国際通貨基金IMFによる最近の報告書では、外貨準備と短期負債の比率が100%を下回る脆弱な国として南ア、チリ、エジプト、ポーランド、マレーシアと共にトルコも挙げられている。特にトルコは外貨準備においてかなりの比率を通貨スワップに依存していること、1年以内に満期となる負債が1646億ドルある一方で経常赤字が続いていることを指摘している。トルコの5月時点の公式の外貨準備は909億ドルとされる。また通貨スワップ協定については米連銀がトルコ中銀の申し出を拒否しており、トルコ中銀は現状ではカタールと中国との協定に依存している。

5月7日にトルコ金融当局が大手海外金融機関に対してトルコリラ取引規制をかけ、国内銀行での為替取引規模についても規制を強化した。海外金融機関に対する規制は一時的だったものの、その後の対ドルでのトルコリラの推移が膠着的な横ばい相場となったのは規制強化の後遺症ともいえる。コロナショックによる新興国通貨売りが一服した状況にあるために落ち着いた動きだったとも思われるが、7月3日の一時的なトルコリラ暴落は今年5月への史上最安値更新や2018年8月の通貨危機を思い起こさせるものとなっている。トルコリラ円は引き続き対ドルでのトルコリラの動きが膠着的な中でドル円と同調した動きが続くと思われるが、今後は一時的ではないトルコリラへの売り圧力の拡大傾向についても注意してゆく必要がありそうだ。

【トルコの感染増加数 千人超えが続くも抑制された状況を維持】

トルコの新型コロナウイルス感染者数は7月6日時点で20万6844人で前日から1086人増、死者5241人で前日から16人増えた。6月初旬は日々の感染増加数が千人を切っていたが6月1日からの経済活動再開により6月12日以降は千人を超える状況が続いている。6月15日に1562人増となって以降はそれ以下の水準で抑えられており、千人を超えているものの抑制の効いた状況にある。しかし6月1日からの経済活動再開に加えて7月1日からは海外からの入国規制も緩んできたために、6月15日の増加数を超える状況が発生する場合は第二波への懸念が強まることに注意したい。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は続いている。7月7日朝時点の集計では、世界の感染者数は1170万人を超えて死者も53.9万人に達した。米国は7月6日時点で1日の増加数が4万0928人で累計302.3万人に拡大した。世界2位のブラジルは162.3万人、ロシア(68.7万人)を抜いてインドが72万人を超えて第三位となった。南米、中東、南アでの増加が目立つ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月3日夜のフラッシュクラッシュを一時的なものとして除き、7月2日深夜安値を直近のサイクルボトムとする。すでに7月6日昼高値でサイクルトップを付けた可能性があり、7月3日深夜安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとして8日夜から10日深夜にかけての間への下落を想定する。強気サイクル入りには6日昼高値を上抜く必要がある。

60分足の一目均衡表では7月3日夜のフラッシュクラッシュにより先行スパンの水準が大きく下がっているが、60分足終値ベースの遅行スパンは悪化しているので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、大きく切り下がった先行スパン下限の15.55円前後を目指しやすいとみる。さらに先行スパンから転落の場合はフラッシュクラッシュでつけた安値を試しに向かうとみる。

60分足の相対力指数は7月3日夜に20ポイント台へ急降下してから6日昼には60ポイント台中盤へ戻したが、その後は再び下落基調にある。50ポイント以下での推移中はさらに一段安余地ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月3日深夜安値15.58円を下値支持線、7月6日昼高値15.69円を上値抵抗線とする。
(2)15.69円以下での推移中は一段安警戒とし、3日夕安値割れからは15.50円前後への下落を想定する。15.50円以下は反発注意とするが、15.60円以下での推移が続くうちは8日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)15.65円超えからは強気転換注意とするが、15.69円手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

7月10日
16:00 4月失業率 (3月 13.2%、予想 14.6%) 
7月13日
16:00 5月経常収支 (4月 −50.6億ドル、予想 −27.0億ドル)
16:00 5月鉱工業生産 前年比 (4月 -31.4%、予想 -16.4%)
16;00 5月小売売上高 前年比 (4月 -19.3%、予想 -28.6%)
16:00 5月小売売上高 前月比 (4月 -21.0%、予想 0.0%)

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