ドル円見通し 7月2日安値を割り込む、上値の重い展開
〇ドル円6日深夜に107.23まで下げ、2日安値を割り込む
〇リスク選好の株高にもドル円は上値が重く、米長期国債、ゴールド価格も上昇
〇107.50を下回る状況、一時的に超えても維持できないうちは一段安余地あり
〇107.50超えから続伸の場合は107.77試しを想定、107.77越えからは新たな強気サイクル入り
【概況】
ドル円は6月23日深夜に106.06円まで下げて5月6日安値105.98円に迫ったものの底割れを回避し、両安値をダブルボトム型として7月1日午前には108.16円まで上昇したが、その後は108円台を維持できずに失速している。7月1日夜のADP米民間部門雇用報告やISM製造業景況指数が予想を超える良好な数字となったもののドル円の反応は鈍く、2日夜の米雇用統計も予想を大幅に上回る改善となったが、ドル円は発表前安値107.30円から発表後高値107.72円まで0.42円の上昇にとどまった。
7月3日は米国市場が独立記念日の振替祝日で休場だったために107.50円を中心としたわずかなレンジでほぼ横ばいの推移にとどまっていた。
週明けの7月6日は日経平均が上昇、その後に上海総合株価指数が大幅上昇となる中でリスク選好感が強まって午前高値で107.77円を付けて7月2日夜の戻り高値107.72円をわずかに上抜いたが、その後の上海株高や株高を意識した為替市場全般のリスク選好的な動きにもかかわらずドル円はジリ安に落ち込み、夜も欧米株が全面高となり、ユーロやポンド及び豪ドル等が深夜にかけて上昇したものの株高と同調した円安には反応できず、逆にユーロ等の上昇によるドル全面安が円高ドル安を招き、6日深夜には107.23円まで下げて7月2日安値を割り込んだ。
【株高基調続いてもドル円は上値が重い】
7月2日に発表された6月の米雇用統計で失業率が前月の13.3%から11.1%へ低下し、非農業部門就業者数が前月から480万人増加して5月の269.9万人増及び市場予想の300万人増を上回る改善となったことでリスク選好感が強まってNYダウは前日比92.39ドル高と上昇、ナスダック総合株価指数は53.00ポイント高となり2日連続で終値ベースでの史上最高値を更新した。
7月6日は上海総合株価指数が景気回復期待に前日比5.71%高と大幅上昇し、感染者が急増したフィリピン市場以外のアジア株式市場が軒並み上昇して日経平均も407.96円高と上昇した。欧米市場時間でも株高が進んで英FT株価指数が前日比2.09%高、独DAXも1.64%高となるなどほぼ全面高となり、米国市場でもNYダウが前日比459.67ドル高(1.78%高)と大幅上昇、ナスダック総合株価指数は226.02ポイント高(2.21%高)と大幅続伸して3日連続で終値ベースの史上最高値を更新した。
米国では南部、西部を中心に感染拡大は続いており、7月6日時点では前日から5万人強の増加で感染者累計は302万人を超えた。経済活動再開を急いだ地域での感染増加が再び活動停止に追い込まれ始める等、コロナ不況からの脱出は簡単に進んでいない。しかしそれ以上にアフターコロナの復興期待による株式市場の先高感は根強い。コロナ対策での実質ゼロ金利及び大規模な量的金融緩和はリーマンショック後の異次元金融緩和時を上回る規模となっており、ドル資金供給は過剰流動性を生み、金余りが投資マネーへ変貌して株式市場に流入し、アフターコロナを見据えた新たな成長期待を反映してナスダック市場が特に買われている。
7月6日夜に発表された6月の米ISM非製造業景況指数は57.1となり市場予想の50.1及び5月の45.4を上回った。6月の米サービス業PMIも速報の46.7から47.9へ上方修正された、これらも株高に貢献した。
【株高の一方で安全資産も強い】
株高ではあるものの米長期国債はしっかりしており、米10年債利回りは前日比0.01%上昇の0.68%にとどまった。株高ならリスク回避感後退で米長期国債が売られて利回りは上昇するものだが、米10年債利回りは6月5日に0.959%まで上昇した後は下落に転じており、6月30日の0.618%まで低下した後は7月2日に0.724%まで一時的に戻したがその後は0.68%を挟んだ小動きにとどまっている。
安全資産とされるゴールドも上昇しており、NYゴールド先物は7月3日に10.1ドル高、6日も3.5ドル高と上昇しており、7月1日のADP改善などで20.6ドル安と下げたところから持ち直している、すでに7月1日への上昇で3月16日以降の高値及び2018年8月以降の高値を更新して2011年9月天井1920.80ドルに迫る水準に到達してきている。
株高の一方で安全資産も買われる傾向はリーマンショック後の大規模金融緩和期にも見られた。株式市場は復興期待で買い急がれているものの、その一方で感染爆発が収束してゆかない先行きへの不安が安全資産買いを助長し、株高に対するリスクヘッジ買いを招いているといえる。
株高の一方で米長期国債がしっかりし、安全資産のゴールドが買われていることを反映して、通常なら株高と同調して円安へ走ってもよいところにあるドル円も上値が重い状況にとどまっているといえる。金融緩和継続による米長期債利回り低下傾向がより鮮明になれば日米金利差面からの円高圧力もかかる。また株高と同調してユーロ等が投機買いされればドルストレートでのドル安感が強まり、上値の重いドル円にとってはドル安円高へ進みやすいともいえる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・形成サイクルでは、7月1日午前高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしたが、6月26日夜安値から4日目となる7月2日安値で直近のサイクルボトムを付けていったん戻しに入った。しかし6日午前高値からの反落で7日未明には2日安値を割り込んだため、現状は底割れにより新たな弱気サイクルに入っている。今回のボトム形成期は7日の日中から9日夜にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとみる。107.50円超えから続伸の場合は強気転換注意とするが、新たな強気サイクル入りは6日午前高値超えからとし、その際は9日午前から13日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では7月6日夜の下落で遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落した。このため先行スパンを上抜き返せないうちは一段安余地ありとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパン突破からは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は、7月6日午前高値時に70ポイントを超えたがその後の反落で7日未明には30ポイントまで下げた。7日朝は安値圏にとどまっているのでまだ一段安余地が残るため、50ポイント台回復から続伸へ進めないうちは一段安余地ありとして20ポイント台への低下を想定する。ただし相場が一段安した後に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られる場合は反騰しやすくなると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月7日未明安値107.23円を下値支持線、107.50円を上値抵抗線とする。
(2)107.50円を下回る状況、一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、7日未明安値割れからは106円台後半への下落を想定する。106.70円台では買い戻しも入りやすいとみるが、107.23円以下での推移が続く場合は8日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)107.50円超えから続伸の場合は6日午前高値試しを想定する。高値更新へ進めないうちは107.50円割れから下げ再開とするが、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして7月1日午前高値108.16円試しを想定する。108円台序盤はダブルトップ形成からの反落警戒とするが、107.50円以上での推移なら8日午前も高値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/7(火)
13:30 (豪) 豪準備銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数CI・速報 (4月 77.7、予想 79.3)
14:00 (日) 5月 景気一致指数CI・速報 (4月 80.1、予想 74.6)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -17.9%、予想 11.1%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -25.3%、予想 -16.9%)
22:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウエブ・セミナー
27:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、オンライン討論会
7/8(水)
米・メキシコ首脳会談(ワシントン)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調前 (4月 2627億円、予想 1兆0882億円)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調済 (4月 2524億円、予想 7168億円)
08:50 (日) 5月 貿易収支・国際収支ベース (4月 -9665億円、予想 -6390億円)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー現状判断 (5月 15.5、予想 24.6)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー先行判断 (5月 36.5、予想 39.3)
25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウエブ・セミナー
28:00 (米) 5月 消費者信用残高 前月比 (4月 -687.7億ドル、予想 -150.0億ドル)
オーダー/ポジション状況
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