米FOMCはドル円にとって強気サプライズ、3月31日高値超えを試す流れへ
〇ドル円、未明の米FOMCから急伸、17日早朝には110.70台に
〇FOMCはタカ派サプライズ、米長期債利回りが急上昇し為替市場はドル全面高
〇パウエル米連銀議長「量的金融緩和策の縮小について議論を始めた」
〇株式市場は下落反応でNYダウは前日比265.66ドル安と3日続落
〇米10年債利回りが上昇再開でドル円が上昇、3月末からの流れが揺れ返しに入ってきた印象
〇111円到達ではいったん利益確定売りも出やすいが勢い付くなら111.50前後へ向かう可能性も
〇110.40割れからは110.30前後への反落を想定、110.30以下は反騰警戒
【概況】
ドル円は6月17日未明の米連銀FOMCの声明発表及び議長会見からの急伸で110.50円を超え、17日早朝には110.70円台へ続伸している。
6月3日の米ADP民間雇用報告で110.33円を付けて4月23日安値107.46円以降の高値を更新したところから6月4日の米4月雇用統計がさえなかったことでいったん下落に転じて6月7日深夜に109.17円まで下げたが、その後は持ち直しに入り米FOMCが近づく中で米経済指標の強さが目立ち米連銀によるテーパリング(量的緩和縮小開始)議論が早まるのではないかとの見方から6月15日夕高値で110.16円まで戻していた。
6月16日夜はポジション調整的に109.79円まで小反落していたが、FOMCはタカ派サプライズとなり米長期債利回りが急上昇、為替市場はドル全面高となりドル円は15日夕高値を超える急伸で6月4日高値も上抜いた。
【FOMCは予想以上にタカ派】
米連邦準備制度理事会(米連銀・FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利のFFレート誘導基準を現行の0.00%〜0.25%に据え置いたが、市中銀行が米連銀に預けている超過準備預金の付利(IOER)を0.05%引き上げて0.15%とし、市場からの資金吸収手段である翌日物リバースレポ(RRP)の金利も従来の0.00%から0.05%へ引き上げた。
FOMC参加者18人の金利見通しでは、ゼロ金利政策を解除する時期の中央値は従来の2024年以降から2023年に前倒しとなった。2023年末までに利上げを予想したのは18人中13人で前回に同様の予想が示された3月会合での18人中7人から増加、2022年の利上げ想定も4人から7人へ増加した。
パウエル米連銀議長は会見において「金利予想は参加者個人による予想にすぎず利上げ議論は極めて時期尚早」と述べたものの、「量的金融緩和策の縮小について議論を始めた」として緩和縮小の準備に入る姿勢を示した。
FOMC参加18人の過半数が2023年には少なくとも0.25%の利上げを2回するという予想内容だったことは、2023年に1回の利上げを想定していた市場にとっては付利やリバースレポレートの引き上げとともにサプライズだった。
FOMC発表を受けて米10年債利回りは前日比0.09%上昇の1.58%、30年債利回りは0.02%上昇の2.21%となり、株式市場は下落反応でNYダウは前日比265.66ドル安と3日続落、ナスダック総合指数も同23.18ポイント安と続落した。為替市場ではドルが全面高となり、ユーロドルは1.210ドル台序盤の水準から1.20ドル割れへ急落、ポンドドルも1.40ドル割れへ急落して6月1日に付けた昨年3月底来最高値からの安値を更新、豪ドル米ドルも5月10日の戻り高値以降の安値を更新した。南アランドやメキシコペソ等の新興国通貨も全面安となった。
【3月末からのドル安基調は仕切り直し】
米10年債利回りは年初に1.0%を超えたところから上昇基調を加速して3月30日に1.77%を付けたが、その後はピークアウト感を背景に低下に転じて6月10日の米CPIが予想以上の上ブレとなったことでの一段安で6月11日には1.42%まで下げていたが、その後はやや持ち直しに入っていた。FOMC発表後に1.58%台へ急伸し、17日午前もさらに水準を切り上げてきている。
年初からの米長期債利回り上昇と3月末からの低下は、ユーロドルの1月6日天井から3月31日への下落とその後の反騰と逆相関であり、ドル円も1月6日底から3月31日高値へ上昇してから下落してきたのは米10年債利回りとの正相関であった。米10年債利回りが上昇再開に入ったことでユーロドルが下落に転じ、ドル円が上昇再開感を強める状況となっており、3月末からの流れが一巡で揺れ返しに入ってきた印象が強まった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月11日早朝安値からの上昇が15日夕高値でいったんピークを付けて16日夜にかけて下落していたが、FOMCからの急伸で一段高に入ったため、16日夜安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクルに入ったと思われる。高値形成期は18日夕から22日夕にかけての間と想定されるので、急騰幅の半値押しを超える急落とならないうちは上昇継続とみる。
60分足の一目均衡表では17日未明からの急伸で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。急騰後の反動安にも注意がいるので26本基準線を割り込む場合は下げ再開注意とするが、26本基準線を一時的に割り込んでも切り返すところからは上昇再開とみる。また急騰一服でやや下げる場合には遅行スパンが一時的に悪化することも考えられるが、その後に再び好転するところからは上昇再開に入って一段高へ進みやすいとみる。
60分足の相対力指数は17日未明からの急伸で80ポイントに到達した。60ポイントを上回るうちは一段高余地ありとみるが、買われ過ぎからの反動安にも注意し、小反落後に高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は急騰一服による調整安に入る可能性があると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.50円を下値支持線、111.00円を上値抵抗線とする。
(2)110.50円以上での推移中は上昇余地ありとみる。111円到達ではいったん利益確定売りも出やすいとみるが、勢い付く場合は111.50円前後へ向かう可能性もあるとみる。また110.40円以上での推移なら18日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)110.50円を割り込んでも切り返すうちは110.65円超えから上昇再開とするが、110.40円割れからは110.30円前後への反落を想定する。110.30円以下は反騰警戒とするが、110.40円を割り込んでの推移が続く場合は18日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/17(木)
日銀・金融政策決定会合 1日目
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 -3.06万人、予想 3.00万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 5.5%、予想 5.5%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 政策金利 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 2.7%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 18.3%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 2.0%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.00%、予想 19.00%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.6万件、予想 35.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 349.9万人、予想 343万人)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 31.5、予想 31.0)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 1.6%、予想 1.3%)
26:00 (米) 財務省3年債入札
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動5年債入札
6/18(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 前年同月比 (4月 -0.4%、予想 -0.2%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (4月 -0.1%、予想 0.0%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数・生鮮食品エネルギー除く 前年同月比 (4月 -0.2%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.8%、予想 0.7%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 9.2%、予想 1.6%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 42.4%、予想 29.0%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 9.0%、予想 1.4%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (4月 37.7%、予想 27.1%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調済 (3月 178億ユーロ)
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調前 (3月 310億ユーロ)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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