ドル円見通し ECB追加金融緩和好感でユーロが上昇、ドル安再燃で12月3日深夜からの上昇一巡(20/12/11)

ドル安感が強まったために反落に転じ11日早朝には104.10円台まで下げている。

ドル円見通し ECB追加金融緩和好感でユーロが上昇、ドル安再燃で12月3日深夜からの上昇一巡(20/12/11)

ECB追加金融緩和好感でユーロが上昇、ドル安再燃で12月3日深夜からの上昇一巡

〇ドル円、12/10夕刻に104.57まで上昇するも、その後ドル安感強まり12/11早朝104.10台まで下げる
〇昨日発表の米新規失業保険申請件数が悪化、ドル売り円買いに影響か
〇ECB、量的緩和拡大を発表、好感されユーロ高、3月コロナショック以降の最高値に迫る
〇英・EUのFTA交渉難航、交渉決裂に備える動きも、ボンド/ドルは下落
〇豪ドル・NZドル・カナダドルは対ドルで上昇、ポンドを除きメジャー通貨ではドル安再燃の印象
〇104.57を上抜き返せないうちは一段安余地あり、104円割れからは103.67試しへ向かう流れとみる
〇104.40円超えからは104.57試しとし、高値更新からは104.75試しへ向かうとみる

【概況】

ドル円は12月10日夕刻に104.57円まで上昇して12月3日深夜安値103.67円以降の戻り高値を切り上げたが、その後は新たな高値更新へ進めず、10日夜にECBが量的金融緩和規模を拡大したことを好感してユーロドルが上昇、豪ドルやNZドルが大幅上昇するなどドル安感が強まったために反落に転じ11日早朝には104.10円台まで下げている。
ECBによる量的金融緩和拡大はユーロ安要因とはならずコロナ対策への前向き対応としてユーロ高要因となった。一方では英国とEUのFTA交渉がまとまらずに協議決裂の可能性が高まる中でポンド/ドルが下落、それでも株高基調を背景に為替市場全般のリスク選好感は継続としてポンド安を避けて豪ドルやNZドルが買われる展開となっている。
ドル円は米週間失業保険統計が悪化したことでのドル売り円買いも働いたために失速した印象だ。

NYダウは前日比69.55ドル安と小幅下落したがナスダック総合指数は同66.86ポイント高と上昇した。
米労働省が発表した12月5日までの週間の新規失業保険申請は前週比13万7000件増の85万3000件となり2週間ぶりに悪化して市場予想の72万5000件を大幅に上回った。2か月ぶりの高水準であり感染拡大の影響が出ている。失業保険受給者総数は11月28日までの週間で23万人増の575万7000人となり市場予想の533万5000人を上回り3か月振りの悪化となった。雇用悪化を嫌気してNYダウは前日比69.55ドル安となったがナスダック総合指数は66.86ポイント高と上昇しており、株式市場は硬軟入り混じりつつも堅調地合いを維持している。
米労働省が発表した11月の消費者物価指数は前月比0.2%上昇して市場予想の0.1%上昇を上回った。コア指数も0.2%上昇で市場予想の0.1%上昇を上回った。前年同月比は全体が1.2%上昇で市場予想の1.1%を上回り、コア指数は1.6%上昇で市場予想と一致した。

【ECBの量的緩和拡大好感でユーロ高、FTA協議決裂懸念でポンド安、間をついて豪ドル高】

欧州中央銀行(ECB)は12月10日の理事会で政策金利を据え置いたものの、新型コロナウイルス対策として導入した資産購入策の規模を5000億ユーロ増額して1兆8500億ユーロへ拡大した。2021年6月までとしていた購入期限も2022年3月まで延長した。
相次ぐワクチン開発報道や英国でのワクチン接種開始等、コロナ不況からの脱却への期待もあるものの、現状の感染拡大による欧州各国での外出制限や経済活動規制による景気への悪影響も深刻であり、ECBとしては国債や社債の購入枠を拡大して企業の資金繰りを積極的に支援してゆく姿勢を示す必要があった。市場の期待に応える緩和規模の拡大によりユーロドルは買われて12月4日に付けた3月コロナショック以降の最高値に迫る勢いとなっている。

一方でポンド/ドルは下落した。英国とEUのFTA交渉はもつれにもつれて英国のEU離脱移行期間終了の年末まであとわずかな日数となる中で合意できずにいる。
ジョンソン英首相とEUのフォンデアライエン欧州委員長は12月9日に首脳会談を行ったが、依然として両者には大きな溝が残っていることを確認し、交渉期限を12月13日までとした。12月10-11日にはEU首脳会議もあり、そこでの妥協と英国の歩み寄りによる合意形成への期待も持たれたが、欧州委員会は12月10日に英国と妥結に至らない場合を想定しての対応策を発表し、ジョンソン英首相も交渉がまとまらない可能性が高いと述べ、交渉決裂の場合に備えることを閣議で指示したと報じられた。
豪ドル米ドルが12月10日の上昇で3月暴落以降の最高値を更新したが、NZドルと共に先行き不透明なポンドからオセアニア通貨へのシフトという印象を抱くような上昇ぶりとなっている。カナダドルも対ドルで3月以降の高値を更新しており、ポンドを除けばメジャー通貨ではドル安再燃という印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月3日深夜安値でサイクルボトムを付けて戻しに入ってきたが、7日深夜に103.91円までいったん反落してからジリ高を再開して10日未明には7日夜高値を上抜いたため、10日朝時点では7日深夜を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は10日夜から14日夜にかけての間とした。10日夕刻へ続伸したものの11日早朝へ反落して7日夜高値から3日を経過したため、10日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は10日深夜から14日深夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、10日夕高値を超えないうちは一段安余地ありとし、10日夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとして15日夕から17日夕にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では10日夜の反落で遅行スパンが悪化し、先行スパンから転落しやすい位置まで下げている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げ足が早まる可能性があると注意する。遅行スパン好転からは上昇再開の可能性ありとし、10日夕高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10日夕刻に70ポイントを超えていたがその後の反落で50ポイントを割り込んでいる。50ポイントを下回るか一時的に超えても維持できないうちは30ポイント前後を目指す下落を想定し、60ポイントを超えてその後も50ポイント台を維持するところからは上昇再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、104.00円を下値支持線、12月10日夕高値104.57円を上値抵抗線とする。
(2)10日夕高値を上抜き返せないうちは一段安余地ありとし、104円割れからは12月3日深夜安値103.67円試しへ向かう流れとみる。103.80円以下は反騰注意とするが104.40円以下での推移が続くうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)104.40円超えからは10日夕高値試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして12月2日夜高値104.75円試しへ向かうとみる。104.70円台は反落警戒とするが、104.75円を超えて続伸の場合は105円試しへ上値目途を引き上げる、また10日夕高値を超えた後も104.40円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

12/11(金)
EU首脳会議最終日
16:00 (ト) 10月 経常収支 (9月 -23.6億ドル、予想 -1.0億ドル)
22:30 (米) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 0.7%、予想 0.8%)
22:30 (米) 11月 生産者物価コア指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 生産者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.5%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (11月 76.9、予想 76.5)
26:40 クォ―ルズFRB議長、バーチャルイベントで質疑応答


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