ドル円見通し 104円挟む揉み合い、英国とEUのFTA協議土壇場でポンドとユーロが不安定(20/12/8)

ドル円は12月7日夜のドル高局面で104.31円まで上昇したがその後は失速して深夜には104円を割り込み、その後は104円を挟んだ揉み合いとなっている。

ドル円見通し 104円挟む揉み合い、英国とEUのFTA協議土壇場でポンドとユーロが不安定(20/12/8)

104円挟む揉み合い、英国とEUのFTA協議土壇場でポンドとユーロが不安定

〇ドル円、12/7夜104.31まで上昇したが失速、深夜に104円を割り込みその後104円を挟んだ揉み合い
〇ポンド/ドル、FTA交渉への懸念から乱調な展開、ユーロドルも影響される
〇NYダウ、5日ぶりに下落したが終値では3万ドル台を維持
〇ナスダック、取引時間中及び終値ベースでの史上最高値を更新
〇英国とEUのFTA協議、両首脳による電話会談があったものの難航、時間切れへの懸念も
〇104.31以下での推移中は一段安余地あり、103.67割れからは103円台序盤を目指すとみる
〇104.31超えからは104.60前後を目指す上昇を想定、104.60以上は反落警戒

【概況】

ドル円は12月7日夜のドル高局面で104.31円まで上昇したがその後は失速して深夜には104円を割り込み、その後は104円を挟んだ揉み合いとなっている。
11月18日深夜安値103.65円以降は104円台中盤までの持ち合いを続けており、11月24日深夜高値104.75円に対して12月2日夜高値で同値まで迫ったものの高値更新へ進めずに反落し、12月3日深夜には103.67円迄下げたものの11月18日深夜安値割れはギリギリで回避し、先週末は104円台序盤へやや持ち直して週を終えていた。
週明けは夕刻にポンド/ドルが急落、ユーロドルも週末高値から失速となるドル高局面でドル円は104.31円まで戻したものの、その後にポンド/ドルやユーロドルが戻してドル安がぶり返すと104円を割り込んで103.91円まで下げた。

12月7日は米国の主要経済指標の発表もなく、米国由来の手掛かりにはやや欠けたが、英国とEUの離脱移行期間終了が迫る中でのFTA交渉の行き詰まり、時間切れへの懸念からポンド/ドルが乱調な展開となりユーロドルもその動きに影響される中で、ドル円もポンド/ドルを見ながらの展開を強いられたが、両者の協議はまだ継続中であり、土壇場の協議合意か決裂かを見極めたいところにある。

【米国株式市場は堅調で米長期債利回りはやや緩む】

NYダウは先週末まで4連騰で史上最高値を更新していたが、週明けは利益確定売りに押されて前日比148.47ドル安と5日ぶりに下落したが、終値では3万ドル台を維持した。ナスダック総合株価指数は55.71ポイント高と上昇して取引時間中及び終値ベースでの史上最高値を更新した。SP500が小幅安だったことで株式市場全般としては11月以降の上昇基調を維持しつつまちまちだったが、米長期債利回りは先週までの上昇一服で低下した。米10年債利回りは前週末比0.05%低下の0.92%、米30年債利回りも0.06%低下の1.68%となりやや落ち着いた。NYダウの下落による債券買い、米国内の感染拡大と西部カリフォルニア州の外出禁止令、NY州の病床ひっ迫による経済活動規制への動き等から安全資産として債券が買われたという印象もある。

新型コロナウイルス感染者は世界全体の累計で6789万人を超えた。米国では1534万人を超えて死者累計も29万人をこえている。1日の感染者増加数も17万人を超える水準となっている。ワクチンの年内承認と早期普及への期待がある一方で足元の感染拡大深刻化、医療体制の困窮、外出や飲食の規制強化の動き等も無視できなくなってきている。それでも先行きの景気回復への楽観、米連銀による追加緩和期待、バイデン政権発足からの経済対策期待が株高基調を継続させている。
ドル円にとっては株高継続はプラス要因だが、米長期債利回りが低下すれば株高=為替市場でのリスク選好感によるドル安=クロス円での円安よりもドル安が優先されてのドル円の下落という相関へ進みやすくなる。現状はまだこれらの力関係に決め手を欠いているために103円台中盤から104円台中盤までのレンジ内にとどまっているといえる。

【英国とEUのFTA協議難航、時間切れへの懸念】

英国のEU離脱移行期間は年内で終了するが、その先の自由貿易協定=FTA交渉がまとまっていない。英国は当初交渉期限を10月15日、EU側も11月上旬までという設定で協議を繰り返してきたが、お互い譲らずにチキンレースの状況に入ってきた。年内も残すところあとわずかな状況で先週の交渉は決裂、7日にEUのフォンデアライエン欧州委員長と英国のジョンソン首相が電話会談したものの、両者には「大きな違い」が残り、「合意をまとめられる状況にない」との認識で一致した。両首脳は数日中にブリュッセルで対面での直接協議を行うとした。

EUは12月10-11日に首脳会議を開くが、そこで合意案に賛成できるかどうかが最終決着期間と思われる。FTAを発効できずに年明けすれば関税や金融取引等で大混乱に陥ることも懸念されている。英国はEUとカナダとのFTAと同等の関係を目指しているが、まとまらなければオーストラリア方式を選択すると見られるが、EUとオーストラリアにはFTAのフレームワークでの合意は形成されているものの正式なFTAは発行しておらず、オーストラリア方式を採用するということはWTOルールでのハード・ブレクジットに入ることを意味する。
ポンド/ドルはユーロドルと共に11月以降の上昇を12月4日夜まで継続してきた。途中では交渉報道で乱高下を入れてきたものの高値更新を続けてきたのだが、昨晩はいったん急落してから反騰するなど乱調な動きとなっており、ユーロドルも同調しており全体のドルの強弱感にも影響を与えているため、ドル円としてもポンドとユーロからの逃避先として円が買われる可能性もある局面として注目したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月30日朝安値から3日半の12月3日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて戻しに入った。高値形成期は2日夜高値を基準として7日夜から9日夜にかけての間と想定されたが、7日夜高値から104円割れまで反落したために7日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして8日夜から10日夜にかけての間への下落を想定する。強気転換は7日夜高値超え殻とするが、その際は10日夜から14日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では7日夜高値からの反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので、遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。強気転換は7日夜高値超えからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は4日深夜高値から7日夜高値への高値切り上げに際して指数のピークがほぼフラットな弱気逆行となりその後に50ポイント割れへ下降しているので一段安余地ありとみる。強気転換には60ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移でしっかりする必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月3日深夜安値103.67円を下値支持線、7日夜高値104.310円を上値抵抗線とする。
(2)104.31円以下での推移中は一段安余地ありとし、103.67円割れからは103円台序盤(103.35円から103.00円)を目指すとみる。103円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、104円以下での推移が続く場合は9日午前にかけても安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)104.31円超えからは104.60円前後を目指す上昇を想定する。この場合は103円台中盤から104円台中盤までの持ち合い相場の継続とし、104.60円以上は反落警戒としてその後の104.25円割れからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

12/8(火)
09:30 (豪) 11月 NAB企業景況感指数 (10月 1)
09:30 (豪) 7-9月期 住宅価格指数 前期比 (4-6月 -1.8%)
09:30 (豪) 7-9月期 住宅価格指数 前年同期比 (4-6月 6.2%)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI (10月 54.5)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー調査-先行判断DI (10月 49.1)
18:30 (南) 7-9月期 GDP 前期比年率 (4-6月 -51.0%)
18:30 (南) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 -17.1%)
19:00 (独) 12月 ZEW景況感・期待指数 (11月 39.0)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP確定値 前期比 (改定値 12.6%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 -4.4%)
22:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報値 4.9%、予想 5.0%)

12/9(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 製造業売上高 前期比 (4-6月 -11.9%)
08:30 (豪) 12月 ウエストパック消費者信頼感指数 (11月 107.7)
08:50 (日) 11月 マネーストックM2 前年同月比 (10月 9.0%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前月比 (9月 -4.4%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前年同月比 (9月 -11.5%)
10:30 (中) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 0.5%、予想 0.0%)
10:30 (中) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 -2.1%、予想 -1.8%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 208億ユーロ)
16:00 (独) 10月 経常収支 (9月 263億ユーロ)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
24:00 (米) 10月 卸売在庫 前月比 (9月 0.4%、予想 0.9%)


注:ポイント要約は編集部

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