来週の為替相場見通し:『ドル円は蚊帳の外。ユーロ主導の相場が継続か』(12/5朝)

ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます。

来週の為替相場見通し:『ドル円は蚊帳の外。ユーロ主導の相場が継続か』(12/5朝)

『ドル円は蚊帳の外。ユーロ主導の相場が継続か』

〇今週のドル円週央にかけ104.76までリスク選好ムードで上昇その後米指標不冴えで103.67まで下落
〇週末の米雇用統計はNFPは予想下回るも、失業率、平均時給が強く104円台に持ち直す
〇ユーロドル週初1.1924まで下落の後ワクチン早期実用化期待と米欧指標格差で一時1.2178まで急伸
〇ドル円テクニカル、ファンダメンタルズともに下落リスク警戒される
〇来週はリスク選好一服で11/6安値103.17を目指す展開か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):102.50ー105.00

今週のレビュー(11/30−12/4)

今週のドル円相場は、週初104.07で寄り付いた後、@米モデルナ社による「欧米で新型コロナワクチンの認可申請を行う方針」との一部報道(欧米での早期実用化期待)や、A月末ロンドンフィキシングに絡むドル買いフロー、B欧米株の堅調推移、C上記Bを背景としたグローバルなリスク選好ムード(クロス円上昇→ドル円連れ高)が支援材料となり、週央(12/2)にかけて、高値104.76まで上昇しました。しかし、11/24に記録した直近高値104.77をバックに伸び悩むと、D米11月ADP雇用統計(結果30.7万人、予想43.0万人)の冴えない結果や、E対欧州通貨でのドル売り圧力(ユーロドルが1.21台へ急伸。ドル指数は2018年4月以来の安値圏)、F米中対立激化懸念(トランプ米政権は中国共産党の党員及びその家族による米国への渡航を制限)、

G上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、H不冴な米11月ISM非製造業景況指数(結果55.9、予想56.0、前回56.6、※6ヵ月ぶり低水準)が重石となり、週後半にかけて、約2週間ぶり安値103.67まで下落しました。もっとも、11/18に記録した直近安値103.64をバックに下げ渋ると、I米11月失業率(結果6.7%、予想6.8%)及び、J米11月平均時給(結果0.3%、前回0.1%)の力強い結果や、K上記IJを背景とした米長期金利の急上昇が支えとなり、本稿執筆時点(12/5午前5時00分現在)では104.10近辺まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>

今週のユーロドル相場は、週初1.1957で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大や、AECBによる根強い追加緩和観測、B欧州当局者によるユーロ高牽制の思惑、C英国と欧州連合のFTA交渉の先行き不透明感、DラガルドECB総裁によるハト派的な発言(金利はかなりの期間にわたって低水準を維持する)、E月末ロンドンフィキシングに絡むドル買いフローが重石となり、早々(週明け海外時間)に安値1.1924まで下落しました。

しかし、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、F欧米株の上昇を背景としたリスク選好のドル売り圧力や、Gユーロ圏11月消費者物価指数(結果▲0.3%、予想▲0.2%)の予想比下振れ(物価下押し→実質金利上昇→ユーロ高)、H英国と欧州連合のFTA交渉を巡る楽観ムード(早期合意期待)、I短期筋のショートカバー(心理的節目1.2000をバックにショートを膨らませていた勢力によるロスカット)、J欧州圏における新型コロナワクチンの実用化期待(英政府は米ファイザー社の新型コロナワクチンの緊急使用を承認→英ポンド上昇→ユーロ連れ高)、K冴えない米経済指標を受けたドル売り圧力(ドル指数は2018年4月以来の安値圏)、Lユーロ圏10月小売売上高(結果4.3%、予想2.6%)の良好な結果が支援材料となり、週末にかけて、約2年7ヵ月ぶり高値1.2178(2018年4月26日以来の高値圏)まで急伸する場面も見られました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(12/5午前5時00分現在)では1.2135近辺で推移しております。

来週の見通し(12/7−12/11)

<ドル円相場>
ドル円は、11/11に記録した高値105.68をトップに反落に転じると、11/18にかけて一時103.64まで下落しました。この間、一目均衡表基準線及び転換線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的にみて、「地合いの弱さ」を印象付けるチャート形状となっております(今週も一時103.67まで下落するなど、上値の重さを再確認)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、12月FOMCで追加緩和が織り込まれつつある米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(今週発表された米11月シカゴ購買部協会景気指数、米10月住宅販売保留指数、米11月ISM製造業景況指数、米11月ADP雇用統計、米11月ISM非製造業景況指数、米11月非農業部門雇用者数は軒並み冴えない結果)、B米中対立激化懸念、C朝鮮半島や中東、香港や中央アジアを巡る地政学的リスク、

D新型コロナウイルスの感染拡大リスク(たとえ新型コロナワクチンの供給が開始されたとしても世界中に行き渡るまでには相当な時間を要するとの慎重な見方。米ファイザー社による新型コロナワクチンの今年の出荷量がサプライチェーンの問題を理由に当初計画の半分に留まるとの発表)、E日本経済の先行き不透明感(本邦における新型コロナ感染者数拡大→本邦の景気先行き不透明感→デフレ懸念→円の実質金利上昇→円高)、F実体経済と株価の乖離(過剰流動性相場の巻き戻しリスク)、G米追加景気対策の後ずれ観測(財政の崖リスク。米暫定予算の期限は12/11)、H米財政赤字の拡大懸念(米国債の格下げリスク)など、ドル円相場の下落を想起させる材料が引き続き沢山残っている状態です。

以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます。@欧米株及び米長期金利の動向や、A新型コロナウイルス及びワクチン開発に関するヘッドライン(出荷の遅延などネガティブな報道が出てくる恐れあり)、B米追加経済対策に係る続報(米暫定予算期限は12/11)、C米主要経済指標の結果(12/10の米11月消費者物価指数、米11月財政収支、12/11の米11月生産者物価指数、米12月ミシガン大消費者信頼感指数など)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落(リスク選好ムードの一服→クロス円下落→ドル円連れ安の波及経路。11/6に記録した約8ヵ月ぶり安値103.17を試す展開)をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):102.50ー105.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、11/4に記録した約3ヵ月半ぶり安値1.1603をボトムに反発に転じると、今週末(12/4)にかけて、約2年7ヵ月ぶり高値1.2178(2018年4月26日以来の高値圏)まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや一目均衡表雲上下限を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転やパーフェクトオーダー、強い上昇トレンド入りを示唆するバンドウォークも出現するなど、テクニカル的に見て、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております。

但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A世界的な貿易戦争再開リスク(欧米貿易摩擦懸念)、B欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大(ロックダウン再開に伴う欧州経済の下振れ懸念。新型コロナワクチン出荷の遅延リスク)、CECBによる追加緩和観測(12/10に開催されるECB理事会での追加緩和観測)、D英国・EU間の交渉難航リスク(EU当局者は12/4、「英国とのFTA交渉に係る問題点は悪い方向に向かう公算が大きい」と発言)、EECB当局者によるユーロ高牽制の思惑など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的な強さを残しつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。@欧米株及び欧米長期金利の動向(リスク選好のドル売りが続くか否か)や、A新型コロナウイルスの感染拡大状況及び新型コロナワクチンに係る続報、B欧州圏の主要経済指標(12/8のドイツ12月ZEW景況感調査など)の結果、C英国とEUの通商交渉(12/10−12/11に予定されているEU首脳会議前に合意できるか否か)、DECB理事会の結果(パンデミック緊急購入プログラムや貸出条件付き長期資金供給オペの拡大がメインシナリオ。足元のユーロ高を受けてマイナス金利の深堀が出てくればサプライズ)を睨みながらも、当方では、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(欧州当局者によるユーロ高牽制や、ECB理事会での追加緩和観測、英EU交渉の決裂リスクがユーロの重石)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1950−1.2250

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は蚊帳の外。ユーロ主導の相場が継続か』

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