ドルに続落懸念、ただ口先介入にも要注意
〇ドル円続落、週末にかけ7月安値104.19円に肉薄する局面も
〇今週はTikTokとウィーチャットをめぐる動きパウエル議長とムニューシン財務長官による議会証言注視
〇テクニカルにはレンジを下放れたといって間違いなさそう
〇今週のドル円予想レンジ103.50-106.00
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドルが弱含み。週末にかけて下げ幅を拡大させると、104円前半まで下落し、7月安値104.19円に肉薄する局面も。
前週末には、動画投稿アプリTikTokに関するいくつかの報道が観測され、それぞれ話題になったほか、安倍首相の後任最有力候補とされる菅官房長官が一部メディアに発した発言も、市場関係者のあいだなどで思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況を受け、取引が開始した週明けのドル/円は、一週間を通しておおむね「寄り付き高・大引け安」の動き。106.05-10円でオープンしたのち、示現した106.17円が週間を通したドルの高値となり、以降は緩やかな右肩下がりをたどっている。8月以降のレンジ下限であった105円を割り込むと、ストップロスを巻き込み、週間安値の104.29円へ。7月安値を意識したものの、取り敢えずは踏みとどまった。週末NYは、小戻した104円半ばで取引を終え、越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「日本の政局」と「米FOMC」について。
前者は、週明け14日に自民党総裁選が実施され、予想通り菅官房長官が新総裁に選出されたことに続き、16日には第99代の首相に正式就任となった。そんな菅新首相による新内閣の組閣人事は、官房長官として加藤厚労相が新たに就任したものの、全体としては再任あるいは横滑りが多い印象。実際、麻生財務相や茂木外相、西村経済再生相は再任、防衛相だった河野氏は当初総務相への配置換えとされたものの、結局行革担当相で決着を見ている。ただ、その一方で一部メディアの世論調査で、菅新政権の支持率が非常に高いこともあり、「早期解散」説を唱える向きは依然として多く、10月末あるいは11月初の総選挙実施がまことしやかに取り沙汰されていたようだ、
対して後者は、先週最大の注目材料と目された米FOMC後、「米経済の回復支援」することを目的とし、「2023年までゼロ金利が続く」との見通しが示されたうえ、その後の会見でパウエルFRB議長は「追加金融緩和の可能性」にも言及していた。そんな状況を受けて、NYダウは一時360ドルほどと大幅高をたどったものの徐々に失速。また、米株は持ち直すこともなく、週間を通してもやや冴えない値動きのまま一週間の取引を終えている。
<< 今週の見通し >>
先々週のドル/円相場は、週間を通してわずか59銭の変動。これは今年2月にあった「週間変動58銭」に次ぐ、今年2番目の週間小変動だった。もちろん、これは由々しき事態なのだが、前述した今年2月の小変動のケースでは、翌週に反動もあってか約2.5円もの大変動を記録。その経験則から一縷の期待をかけていたら、先週の変動は約1.9円とかなり大きな変動を記録している。今回も経験則が的中したと言えるかもしれない。ともかく、7月安値104.19円を抜けてはいないが、8月以降のレンジを下放れた感もあり、今週もさらなるドル安の進行には要注意だ。
材料的に見た場合、「米中の対立」やそれだけにとどまらない「中国情勢」、「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルスとワクチン開発」、「米大統領選」、「菅新首相誕生と日本の政局」、「ベラルーシ情勢」、「毒殺未遂事件を中心としたロシア情勢」など注目要因は依然として目白押し。そんななか、今週とくに注視したいものが2点。まずは、事前に様々な報道や噂などが飛び交うなか、最終的にはトランプ米大統領が提携を承認したTikTokと、ウィーチャットをめぐる動き。前者は急転直下の大逆転だが、後者も米連邦地裁「取引を禁じた米大統領令を暫定的に差し止める命令を下して」いる。落としどころがいまひとつ不明で、まだまだ予断は許さない。そしてもうひとつは、23日と24日に予定されている「パウエルFRB議長とムニューシン財務長官による議会証言」にも要注意。パウエル氏の発言は2週連続で、どこまで新味があるのか不明だが、場合によっては波乱要因になりかねないとの指摘も聞かれていた。
テクニカルに見た場合、ドル/円は8月以降形成していた105-107円という2円レンジの下限を割り込み、週末には104.29円まで値を下げている。昨年から今年にかけては、いわゆるダマシの展開が多くみられるものの、今回ばかりは「レンジを下放れた」といって間違いなさそうだ。ドルの続落に注意を払いたい。そんなドルの次の下値メドは7月安値の104.19円で、それを下回ると103.65-70円がターゲットに。
ただ、レベル的には本邦当局者からの「口先介入」などがそろそろ気に掛かる。
一方、材料的に見た場合、9月のリッチモンド連銀製造業指数や8月の耐久財受注といった米経済指標が発表される予定で、まずはそれらに要注意。先週発表された指標は全般的に小動きだったが、それに続く内容となるのか注目だ。
また、先で「パウエルFRB議長とムニューシン財務長官による議会証言」を取り上げたが、今週はそれ以外にも米地区連銀総裁による講演など発言機会が目白押しとなっている。
そんな今週のドル/円予想レンジは、103.50-106.00円。ドル高・円安については、これまでサポートとして寄与してきた105円あるいは105.10円をめぐる攻防にまずは注目。回復するなら、早い段階で上回らないと、ドルの上値は段々と重くなる可能性がある。
対するドル安・円高方向は、先週安値の104.29円ならびに7月安値の104.19円がサポート。ただ、割り込めば103円台突入、長期のフィボナッチポイントにあたる103.65-70円がターゲットに。(了)
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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