ドル円見通し 米パウエル議長講演から乱高下したが米長期債利回り上昇で円安ドル高に(20/8/28)

ドル円も上昇に転じ、8月25日深夜高値106.57円を超えて28日未明には106.70円まで一段高となった。

ドル円見通し 米パウエル議長講演から乱高下したが米長期債利回り上昇で円安ドル高に(20/8/28)

ドル円見通し 米パウエル議長講演から乱高下したが米長期債利回り上昇で円安ドル高に

〇ドル円、パウエル米連銀議長講演の後105.59まで下落するも切り返し、8/28未明106.70まで一段高
〇米国新規失業保険申請件数・失業手当継続的受給者ともに減少するも、市場反応は限定的
〇パウエル議長講演、全般サプライズ無く米長期債利回り上昇、結果ドル高へ
〇106.50を割り込んでも切り返すうちは上昇余地あり107円試し、107円以上は反落警戒
〇106.25割れからはいったん弱気サイクル入りと仮定、106.00から105.75にかけてのゾーン試しとみる

【概況】

8月27日夜のパウエル米FRB議長ジャクソンホール講演を控えてドル円は8月25日深夜高値106.57円の後はポジション調整的な下げに入り、米長期債利回りが緩む中でドル全般の下落感が再燃していたこともあって106円をいったん割り込んでいた。22時10分からの議長講演開始早々には米FRBとしてインフレ率が目標の2%を一時的に上回ることを許容する新たな政策方針を決定したと議長が述べたことから、金融緩和政策の長期化及び拡大への期待感が強まったと市場は受け止めてドル全面安の反応となり、ドル円は105.59円まで一段安となったが、講演が進んでもさらにドル安を加速させるようなサプライズとなる内容は見られないとして米長期債利回りが上昇に転じ、ドル買いが活発化したためにドル円も上昇に転じ、8月25日深夜高値106.57円を超えて28日未明には106.70円まで一段高となった。28日午前にはさらに高値を切り上げ始めている。

パウエル議長講演に市場の関心が集中していたため、27日の米経済指標に対する市場反応は限定的だった。米労働省が発表した新規失業保険申請件数は8月22日までの1週間で100万6000件となり前週から9万8000件減少した。失業手当の継続的受給者は8月15日までの1週間で1453万5000人となり前週から22万3000人減少した。
米商務省が発表した2020年4-6月期の実質GDP改定値は年率換算で前期比31.7%減となり速報値の32.9%減から上方修正された。下げ幅は1947年以降最大でマイナス成長は2期連続だが、7-9月期は改善が予想されている。

【パウエル議長講演、サプライズ無しでかえって米長期債利回りは上昇】

パウエル米FRB議長は27日の講演で、2012年から導入してきた物価の2%目標を修正し、当面は2%を小幅に超えることを目指した政策が適切だとし、インフレ率が長期的に平均2%となるように政策運営を行う政策姿勢を示した。また世界的に金利とインフレ率が低下して景気後退時に利下げ余地がない状況を克服するのは難しいとの懸念を示した。
米連銀は新型コロナウイルスの感染拡大による不況対策として臨時のFOMCを開催してゼロ金利へ利下げを行い量的緩和策も導入してきたが、マイナス金利政策に対しては否定的なスタンスを示してきており、今後の利下げ余地がないためにゼロ金利を長期間にわたって継続させる姿勢を示すことでの金融緩和効果を強化したい意向のようだ。

物価が目標の2%に到達しても即座に金融緩和を終了しないとしたことは市場にとっては金融緩和の継続期待として安心感を持たせるものだが、長期金利を抑制するような具体策には触れなかった。8月20日未明に公開された前回FOMCの議事録においてもYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)への消極姿勢が示されていたが、長期金利の上昇を抑え込もうという積極姿勢にかけるとして議事録公開後はドル高反応が発生していた。今回も同様に長期債利回りは上昇となりドル高を招くこととなった。
米10年債利回りは前日比0.07%上昇の0.76%となり、今年6月上旬以来の高水準となった。30年債利回りも0.10%上昇の1.51%となり、議長講演がかえって長期債利回り上昇とドル高を招くこととなった。米長期債利回り上昇基調が続けば日米金利差面からのドル買い円売りへ進みやすく、株高債券安・長期債利回り上昇の組み合わせで推移すれば株高によるリスク選好感からクロス円も円安へ傾斜しやすくなると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月25日夜の上昇で8月20日午前高値を上抜いたために8月26日朝時点では8月24日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、トップ形成期を25日午前から27日午前にかけての間と想定したが、8月26日深夜の下落で弱気転換目安とした106円を割り込んだため、8月27日朝時点では8月25日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は27日夜から31日夜にかけての間と想定されるので、パウエル米連銀議長講演から反騰の場合は強気サイクル入りする可能性があるとした。
8月27日夜にいったん急落してから反騰に入って戻り高値を更新したため、8月27日夜安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクルに入ったと思われる。今度の高値形成期は28日夜から9月1日深夜にかけての間と想定される。乱高下でもあるため戻りを短命として反落に転じる可能性もあると注意するが、106.25円前後までを下値支持線として高値試しを続けやすいとみる。弱気転換は106円割れからとする。

60分足の一目均衡表では8月27日深夜の反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き返している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、急反発後の反落も警戒されるので遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月27日午前安値から27日夜への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて反騰入りした。50ポイント台を下値支持線として80ポイント超えへの上昇余地ありとみるが、50ポイント割れからは弱気転換とみて30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.25円を下値支持線、107.00円を上値抵抗線とする。
(2)106.50円を割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとして107円を試すとみる。107円以上は反落警戒とみるが、106.25円以上での推移か、直近の高値から0.50円以内の下げにとどまる場合は週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)106.50円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、106.25円割れからはいったん弱気サイクル入りと仮定して106.00円から105.75円にかけてのゾーンを試すとみる。106円以下は押し目買いも入りやすいとみるが、米長期債利回りが急低下したりドル安が再燃する場合は27日夜の反騰とは真逆の展開にもなりえると注意する。

【当面の主な予定】

8/28(金)
15:00 (独) 9月 GFK消費者信頼感 (8月 -0.3、予想 1.0)
15:45 (仏) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 -13.8%、予想 -13.8%)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 82.3、予想 85.0)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感確定値 (速報 -14.7)

21:30 (加) 4-6月期 GDP 前期比年率 (1−3月 -8.2%、予想 -39.6%)
21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 -1.1%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 7月 個人消費支出 前月比 (6月 5.6%、予想 1.5%)
21:30 (米) 7月 PCEデフレーター 前年同月比 (6月 0.8%、予想 1.0%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前月比 (6月 0.2%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (6月 0.9%、予想 1.2%)
22:05 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、ジャクソンホール講演、オンライン)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 51.9、予想 52.0)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 72.8、予想 72.8)



注:ポイント要約は編集部

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