ドル円見通し 106円台を維持できずに失速気味、ドル安のぶり返しか(20/8/21)

米連銀による長期的な金融緩和政策の継続姿勢は変わらないため、ドルの反発も一時的な印象だ。

ドル円見通し 106円台を維持できずに失速気味、ドル安のぶり返しか(20/8/21)

ドル円見通し 106円台を維持できずに失速気味、ドル安のぶり返しか

〇ドル円106円台を維持しきれず、FOMC議事録公開後のドル高一巡、徐々に安値切り下げ
〇米連銀の長期的な金融緩和政策の継続姿勢不変、ドルの反発も一時的な印象
〇新規失業保険申請件数は3週ぶりの悪化、失業給付上乗せ失効が原因か
〇失業手当の継続的受給者、減少傾向にあるとはいえ依然として戦後最悪の状況に変わりはなし
〇105.50割れからは105.08円試しへ向かうとみる、105円前後では買い戻しも入りやすいと想定
〇106.21を超える反騰の場合は新たな強気サイクル入り、106円台後半を目指す流れ

【概況】

ドル円は米長期債の大量入札による債券需給緩和感による米長期債利回り上昇を背景として8月14日未明高値107.05円まで上昇した後、大量入札週通過により米長期債利回り上昇が一巡したとしてドル安感が再燃したために8月19日午前安値105.08円まで下落した。19日は夜の米20年債250億ドルの入札や20日未明のFOMC議事録公開を控えて105円割れを回避して買い戻しの動きとなっていたが、米20年債の入札不調をきっかけに米長期債利回りが上昇したために19日深夜に105円台後半へ上昇、FOMC議事録ではYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)への消極姿勢が示されたことで106円台を回復、20日午前には106.21円まで戻り高値を切り上げた。
しかし、さらにドル高を助長する手掛かりには欠けるとして106円台を維持しきれず、20日夜はFOMC議事録公開後のドル高が一巡して米長期債利回りも低下、米労働省の週間新規失業保険申請件数が3週ぶりに増加し、米フィラデルフィア連銀が発表した8月の製造業景況指数も市場予想より悪かったこと等から徐々に安値を切り下げている。

【FOMC議事録公開後のドル高一巡、米長期債利回り低下で再びドル安基調へ向かうか】

米連銀FRBが公表した7月28―29日開催のFOMC議事要旨では、コロナ不況対策として金融緩和を拡大する余地がある姿勢を示したが、YCCについては「この選択肢について議論した参加者の大半は利回りに上限や目標を設けても現在の環境では利点は小さいものにとどまる可能性が高いと判断した」として消極姿勢だった。
米国債の大量入札が続く中で需給が緩んで米長期債利回りが上昇してきたことが8月6日深夜から8月14日未明にかけてのドル高円安の背景であり、それが一巡して8月19日午前までドル安円高が再開していた。FOMCのYCCに対する消極姿勢は一時的なドル高要因ではあったが、米連銀による長期的な金融緩和政策の継続姿勢は変わらないため、ドルの反発も一時的な印象だ。

8月20日の米10年債利回りは前日から0.03%低下の0.65%となった。30年債利回りも0.05%低下の1.38%となり長期債利回りの低下傾向が再開している印象だ。米国債の大量入札も峠を越えたこと、20日夜の米経済指標もさえない内容だったことでドル買い意欲も後退し始めた印象だ。
米労働省が発表した新規失業保険申請件数は8月15日までの1週間で110万6000件となり前週から13万5000件増加した。3週ぶりの悪化で100万件を再び超えて市場予想の92万5000件を上回った。3月下旬のピーク時に687万件に達してからは大幅に低下してきたが、新型コロナウイルス経済対策の失業給付上乗せが7月末に失効したために再び100万人台を回復するところへ増加したようだ。

失業手当の継続的受給者は8月8日までの1週間で1484万4000人となり前週から63万6000人減少、市場予想の1500万人を下回ったが、減少傾向にあるとはいえ依然として戦後最悪の状況に変わりはない。
米フィラデルフィア連銀が発表した8月の製造業景況指数は17.2となり前月の24.1から低下、3か月連続のプラスではあったが市場予想の21.0を下回った。
米民間有力調査会社コンファレンス・ボードが発表した7月の景気先行指数は104.4となり前月比1.4%上昇、市場予想の1.1%上昇を上回った。6月は当初の2.0%上昇から3.0%上昇へ大幅上方修正された。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、814日未明高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしてきたが、19日午前安値から1円を超える反騰となったため、20日朝時点では19日午前安値を直近のサイクルボトムと見込む強気サイクル入りとした。また高値形成期は14日未明高値を基準として19日未明から21日未明にかけての間と想定されるので既に反落警戒期にあるとし、105.50円を上回るうちは上昇余地ありとするが、105.50円割れないしは19日午前安値からの戻り幅の半値を削るところからは新たな弱気サイクル入りとした。
105.50円割れには至っていないが、前回サイクルトップの14日未明高値から4日半を経過したので20日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は24日午前から26日午前にかけての間と想定する。ただし20日午前高値を上抜く場合はサイクルボトム形成を短縮して強気サイクル入りしたと判断して25日午前から27日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では8月20日早朝への上昇で先行スパンを突破したが、その後のジリ安で転落しやすくなっている。遅行スパンも悪化し始めているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと注意する。強気転換は20日午前高値超えからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は20日午前の上昇で70ポイントを超えたがその後の失速で50ポイントを割り込んでいる。60ポイント手前を抵抗とし、50ポイント以下での推移中は30ポイント以下への一段安へ進みやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.50円を下値支持線、106.21円を上値抵抗線とする。
(2)106円を割り込んでの推移中は下向きとし、105.50円割れからは19日午前安値105.08円試しへ向かうとみる。105円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、105.08円を割り込む場合は先安感がかなり強まるとみて大衆は104円台中盤を目指すのではないかと考える。
(3)106円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、20日午前高値を超える反騰の場合は新たな強気サイクル入りにより106円台後半を目指す流れと考える。ただし、20日午前高値を一時的に超えても106円台を維持できずに105.50円を割り込む場合は下げ再開から一段安へ向かいやすくなると考える。

【当面の主な予定】

8/21(金)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 13.9%、予想 2.0%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -1.6%、予想 0.1%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 13.5%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 1.7%、予想 1.5%)
16:15 (仏) 8月 製造業PMI速報値 (7月 52.4、予想 53.0)
16:15 (仏) 8月 サービス業PMI速報値 (7月 57.3、予想 56.0)
16:30 (独) 8月 製造業PMI速報値 (7月 51.0、予想 52.3)
16:30 (独) 8月 サービス業PMI速報値 (7月 55.6、予想 55.1)

17:00 (欧) 8月 製造業PMI速報値 (7月 51.8、予想 52.7)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI速報値 (7月 54.7、予想 54.6)
17:30 (英) 8月 製造業PMI速報値 (7月 53.3、予想 54.0)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI速報値 (7月 56.5、予想 57.0)
22:45 (米) 8月 製造業PMI速報値 (7月 50.9、予想 52.0)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI速報値 (7月 50.0、予想 50.8)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (6月 472万件、予想 540万件)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数 前月比 (6月 20.7%、予想 14.4%)
23:00 (欧) 8月 消費者信頼感速報値 (7月 -15.0、予想 -15.0)


注:ポイント要約は編集部

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