ドル円見通し 2016年末からの長期下降チャンネルで下限を再び目指すか(週報7月第3週)

17日は米国株式市場はまちまちだったもののユーロがコロナ対策の復興基金創設合意期待で上昇したためにドル安感が強まり、ドル円においても円高ドル安反応となった。

ドル円見通し 2016年末からの長期下降チャンネルで下限を再び目指すか(週報7月第3週)

ドル円見通し 2016年末からの長期下降チャンネルで下限を再び目指すか

〇ドル円は7/10、7/15に107.40台に上昇するも半ばに達せず失速107円割れで越週
〇ユーロがコロナ対策の復興基金創設合意期待で上昇、ドル円でもドル安感が強まる
〇株式市場は感染拡大不安が上値を抑えつつ、復興期待と金融緩和による資産インフレ期待が株高支える
〇ドル円一段下がった持ち合い ダブルトップ型、トリプルボトム型いずれに向かうか週前半の展開注視
〇ドル指数が安値更新に入るとドル円に対しても下落圧力が強まるか
〇107円以下での推移継続は下向き、106.62割れでダブルトップからの一段安入り下値目途105.82
〇107.20超えからは107.42試し 107.50を超えて続伸に入る場合は7/1高値108.16を目指すか

【概況】

ドル円は7月10日深夜安値から7月14日高値107.42円まで戻したものの15日深夜には106.64円まで反落した。7月10日深夜安値割れをぎりぎりで回避してから17日未明に107.40円まで戻したが、今度は14日高値にあと一歩及ばずに失速し、18日早朝には107円を割り込んで週を終えた。
7月16日は米国株安からリスク回避でドルが買い戻されてユーロ等が下落したためにドル円においてもドル高が勝っての上昇だったが、17日は米国株式市場はまちまちだったもののユーロがコロナ対策の復興基金創設合意期待で上昇したためにドル安感が強まり、ドル円においても円高ドル安反応となった。

欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は7月17日に「新型コロナウイルス危機からの経済再建のための復興基金について欧州連合(EU)首脳が7月末までに合意に達する」との見通しを示した。EUは7月17日に首脳会議を行い総額7500億ユーロの復興基金について協議している。反対論もあって簡単には合意できずにいるがドイツを中心に合意を目指していることがユーロを押し上げている。

7月17日のNYダウは前日比62.76ドル安、ハイテク株中心のナスダック総合指数は29.36ポイント高と強弱まちまちだった。米国および世界の感染拡大への不安が上値を抑えつつ、復興期待と金融緩和による資産インフレ期待が3月後半からの株高を支えている。
米商務省が発表した6月の住宅着工件数は年換算で118万6000戸となり前月比17.3%増、2か月連続のプラスで市場予想の116万9000戸を上回った。先行指標となる住宅着工許可件数は124万1000戸で前月から2.1%増加、市場予想の129万戸には届かなかったものの良好な水準だった。
米ミシガン大学が発表した7月の消費者信頼感指数は73.2となり6月の78.1から悪化して市場予想の79.0を下回った。また現況指数も前月の88.1から84.2へ低下した。

新型コロナウイルスの世界全体の感染者数は1417.9万人を超えた。米国は7月18日時点で377万人へ拡大したが連日7万人を超える規模の増加となっている。2位のブラジルは204.8万人、3位のインドは104万人となり両国とも前日から3万人以上の増加となった。
米国では最大感染地のNY州は感染者43.3万人で前日から902人増にとどまっているが、フロリダでは前日から1万人以上拡大した。カリフォルニアやテキサス、ジョージア等の感染拡大がつづいている。
NY市は20日から経済活動緩和の第4段階に入るとして屋外の美術・娯楽施設等の再開や無観客のプロスポーツイベント等を認めるが、屋内活動は懸念が続いているとして飲食店やショッピングモール等の屋内営業再開は見送った。

【一段下がった状態での持ち合い、結末はダブルトップ型か、トリプルボトム型か】

7月1日高値108.16円から7月2日へ反落した後、7月8日までの5日間は107.50円を挟んで高値がやや切り上がり気味で安値がやや切り下がるレンジ拡張型の持ち合いだった。7月10日にこの持ち合いから転落し、7月10日深夜と15日深夜の両安値をダブルボトム型として戻したものの、転落する前の持ち合いにおける中心値107.50円には届かずに失速した。つまり前週から一段下がった状況で107円を中心に前後凡そ40銭幅で往来している状況にある。
7月14日夜高値107.42円及び107.50円を超えれば7月1日からの下落一巡によりもう一度7月1日高値へ揺れ返して行く上昇へ進む可能性が出てくると思われる。7月22日以降に106.60円台を試してもその後の反騰で107円を超えて切り返しに入れば、逆三尊ないし三点底を形成して上昇基調へ転換する可能性が考えられる。しかし7月10日安値106.62円を割り込んで続落に入る場合は、7月14日深夜と17日未明の両高値をダブルトップとしての下落期入りとなるため、ダブルトップ間の値幅の倍返しとして105.80円前後へ向かう可能性が高まると思われる。

いずれへ向かうのか、週前半の展開で決まってゆくのだろうと思われるが、ドル円としては決め手に欠いた状況が続いているためにトレンドが定まらないということなのだろう。
7月14日深夜以降は新たな安値更新を回避しているものの高値は7月1日午前108.16円、7月7日夜107.79円、7月14日夜107.42円と切り下がっており、底固さというよりも上値の重い印象だ。

【ドル安感徐々に強まる】

2月後半に中国の感染爆発が発生し、欧州へ波及し始めた初期には、メジャー通貨の加重平均であるドル指数はいったん急落したが、欧米の感染拡大が深刻な事態だとの認識が強まると急激なドルの買い戻しが発生したために3月20日へドル指数は急騰した。金融市場全般が手仕舞い売りとドルへの換金を急いだためだが、G7の協調によるドル資金供給と世界的な利下げと大規模な量的緩和によりドル需給ひっ迫は解消され、金融緩和拡大による米長期債利回り低下傾向と共にドル指数は下落基調に入った。
ドル円とドル指数を比較すれば、6月序盤にかけては株高によるリスク選好でのユーロ買い等が背景となってドル指数が下落する一方でドル円は株高と同調した円安反応で6月5日まで上昇した。しかしこの間の一時的な逆相関が終わると、ドル指数とドル円の相関した動きが回復し、7月に入ってからはドル指数がジリ安推移する中でドル円も7月1日の戻り高値からジリ安傾向での推移となっている。
ドル指数は7月15日への下落では6月10日安値割れを回避したが、安値更新に入るとドル円に対しても下落圧力が強まってくると思われる。

【2017年末からの下降チャンネル下限からの戻り一巡への警戒】

ドル円の週足では、2016年12月15日高値118.65円の後、2018年10月4日高値114.54円、2020年2月20日高値112.21円がほぼ1直線でやや右肩下がりとなっている。また2018年3月26日安値104.63円と2020年3月9日安値を結ぶ下値支持線は上記の高値を結ぶラインとほぼ平行となっており、長期的で緩やかな下降チャンネルを形成している。このため今年3月9日の急落は下降チャンネルの下限に到達してからリバウンドしたということになる。

ドル円見通し 2016年末からの長期下降チャンネルで下限を再び目指すか

今年3月9日安値の後は新たな安値更新には至っていないが既に19週を経過した。6月1日の戻り高値までが13週となっているが、3月9日の週足における長い下ヒゲと同規模の週足下ヒゲから反発した2019年1月3日底からのリバウンドは2019年4月24日までの17週で終了した。また上記の下降チャンネルとは異なるが、同様の長い週足下ヒゲからのリバウンド事例としては、2015年8月24日安値週から同年11月18日までの13週で終了している。3月24日高値から6月5日高値へ高値を切り下げ、その後も5月6日と6月23日の両安値をダブルボトムとして下げ渋っているものの、時間経過により週足における下降チャンネル内におけるリバウンド期は終了して下降チャンネル下限を再び目指しても不思議ない時間帯に入ってきていると考えるところではないかと思う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、7月14日夜高値107.42円と17日未明高値107.40円のダブルトップからの下落期に入るのか、7月10日深夜安値106.62円と7月15日深夜安値106.64円に続く106.60円台への下落でトリプルボトム形成して切り返しに入るのか、見定めが続くと思われる。
(2)107円以下での推移が続く場合は下向きとし、7月10日深夜安値106.62円割れの場合はダブルトップからの一段安入りと仮定し、当初の下値目途を7月14日への戻り幅0.80円の倍返し105.82円前後と想定する。7月14日夜高値からの下落規模を7月1日高値から7月10日安値への下げ幅1.54円と同値幅とすれば下値計算値は105.88円となるので、105.80円台、106円弱の水準はいったん買い戻しも入りやすいとみるが、7月10日深夜安値106.62円以下での推移が続くうちは暫く安値試しが続きやすいと考える。

(3)107.20円超えからは7月14日夜高値107.42円試しとする。107.40円から107.50円前後にかけては戻り売りにつかまりやすいとみて、その後に107円を割り込む場合は下げ再開とし、もう一度106.60円台を目指す流れと考える。ただし107.50円を超えて続伸に入る場合は7月1日午前高値108.16円を目指す揺れ返しの上昇を想定する。(了)<7/19 20:35執筆>

【当面の主な予定】

7/20(月)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
08:50 (日) 6月 貿易統計・通関ベース・季調前 (5月 -8334億円、予想 -119億円)
08:50 (日) 6月 貿易統計・通関ベース・季調済 (5月 -6010億円、予想 -3311億円)
15:00 (独) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 -0.4%、予想 0.2%)
17:00 (欧) 5月 経常収支・季調済 (4月 144億ユーロ)
17:00 (欧) 5月 経常収支・季調前 (4月 102億ユーロ)

7/21(火)
08:30 (日) 6月 全国消費者物価指数 前年同月比 (5月 0.1%、予想 0.1%)
08:30 (日) 6月 全国消費者物価指数 生鮮食料品除く 前年同月比 (5月 -0.2%、予想 -0.1%)
08:30 (日) 6月 全国消費者物価指数 生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (5月 0.4%、予想 0.4%)
10:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
11:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演

7/22(水)
22:00 (米) 5月 住宅価格指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (5月 391万件、予想 480万件)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数 前月比 (5月 -9.7%、予想 22.8%)

7/23(木)
休場、日本
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 3.75%)
15:00 (独) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -9.6)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 8.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 130.0万件、予想 128.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1733.8万人、予想 1710.0万人)
23:00 (米) 6月 景気先行指数 前月比 (5月 2.8%、予想 2.1%)
23:00 (欧) 7月 消費者信頼感速報 (6月 -14.7、予想 -12.0)

7/24(金)
休場、日本
07:45 (NZ) 6月 貿易収支 (5月 12.53億NZドル、予想 4.50億NZドル)
08:01 (英) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 -30、予想 -24)
15:00 (英) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 10.2%、予想 7.5%)
15:00 (英) 6月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (5月 -9.8%、予想 -3.7%)
15:00 (英) 6月 小売売上高 前月比 (5月 12.0%、予想 8.0%)
15:00 (英) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 -13.1%、予想 -6.0%)
16:15 (仏) 7月 製造業PMI速報値 (6月 52.3、予想 53.0)
16:15 (仏) 7月 サービス業PMI速報値 (6月 50.7、予想 52.3)
16:30 (独) 7月 製造業PMI速報値 (6月 45.2、予想 48.0)
16:30 (独) 7月 サービス業PMI速報値 (6月 47.3、予想 50.3)

17:00 (欧) 7月 製造業PMI速報値 (6月 47.4、予想 50.0)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI速報値 (6月 48.3、予想 51.0)
17:30 (英) 7月 製造業PMI (6月 50.1、予想 52.0)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI (6月 47.1、予想 51.5)
22:45 (米) 7月 製造業PMI速報値 (6月 49.8、予想 51.9)
22:45 (米) 7月 サービス業PMI速報値 (6月 47.9、予想 51.0)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (5月 67.6万件、予想 70.0万件)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数 前月比 (5月 16.6%、予想 3.6%)

注:ポイント要約は編集部

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